第1奉仕 転生したらメイドだった
親戚が母親の葬式で泣いている中、俺は独りで冷や汗をかいていた。
今までババアの脛をかじって毎時間毎分毎秒、ゲームに浸っていた俺だが、ババアが死ぬなんて完全に予想外だった。
だが、まぁ、暫くは遺産で暮らすことができる。
ゆくゆくは何か職に就いて過ごそう、そんな俺なりに完璧な計画を立てる。
俺は赤信号を前に、歩く足を止めて思い出を振り返る。
保育園児時代、一緒に公園へ行って三輪車をしたこと、家族で遠足をしたこと……
幼少期以外に俺とババアの思い出は何もなかったのだ。
にしても、働いた事ない歴=年齢の俺がいきなり働くのは難易度が高いのだろうか?
いや、無理だな。
青信号になったので、俺は歩を進める。
……帰ったら、ネット掲示板の奴らに相談でもしてみるか。
「おい! 危ねえ!!」
「え──」
ん……んん〜……?
なんで俺眠ってんだっけ……?
確か……ババアの葬式帰りで、何かにぶつかって……
何かいい匂いがする。
良い花の様な……女子の部屋と言えば、こんな匂いなのかと妄想を膨らませる。
……寝起きだからか、上手く思考が回らない。
俺は何があって、ここに辿り着いたのか、何もわからない。
寝起きでボーッとしていると、徐々に記憶が明確になってくる。
あ〜……事故ったんだったか。
なんだここ? 病院とは思えない様なオシャレなベッドしてやがる。
ピンク色の部屋模様に、少し裕福そうな女子のベッド…
その他には特に何もない普通の部屋だ。
「ふぁ〜〜……眠……」
……ん?
「あれ?」
え?
「ん?」
声が…高い!?!?!?
え、え??
そう言えば腹も、顔も軽い。肉が全て削ぎ落とされている様だ。
俺は恐る恐る、頬に触れてみる。
それは……まるで、弾力を持ったプリンの様だったのだ。
おお……凄い伸ばせる。柔らけえ……
し◯ちゃんもこんぐらい伸ばせてたよな……
更に明確になる意識と共に、俺は地獄のどんな拷問でも遭えない、とんでもない事実に気が付いてしまった。
股にあった……俺の偉大な息子が……
「…………死んでる……」
俺がまだ寝ぼけていて気づいていないだけかもしれないという一縷の希望に掛けて、確かめる為にそこを触ってみるのだ。
「…………」
ない!!! 何処にも!!! 無い!!!! 俺の息子が!!!
寝ている間に取られたか……? いや、だからといってこんな脂肪が消えたり声が高くなるか……?
加えてこの部屋……やけに王宮感が漂っている。
つまり、つまりだ。
今まで俺が暇な時に読んでいたあ〜んなラノベやこ〜んなラノベの世界観に俺は来たって事じゃないか……?
最強スキルで美女に囲まれてウハウハライフって事じゃないか!!
うっひょ〜〜。異世界スローライフを送れそうだぜテンション上がるな〜〜。
早速、その最強スキルを見せて貰おっかなぁ〜〜っと。
「ステータスオープン!」
……出ない。やり方が違うのか……?
俺は思考を巡らせる。
この世界でのステータス表示方法、閲覧方法。そこで、俺は一つの答えに辿り着いた。
そう、この世界のステータス表示はスキルツリーなのだと!!
…………だからって、どうやって出せば良いんだ?
更に俺は思考を巡らせて、思考を深める。
そんな時に、急な頭痛が俺を襲い、唐突に情報が雪崩のように流れ込んで来る。
……なんで?
あ、わかった。この体の持ち主の記憶だ。
そっか、小学生低学年くらいの体だもんな。乗っ取りみたいな感じになってんのか。
そして、肝心なステータス閲覧方法が……
「目を瞑り、木を想像する……?」
正直、何を言ってるのかよくわからない。
木を想像する木を想像する木を想像する木を想像する……
「お……できたっぽいな」
周囲が黒く、スポットライトがその木と思われる物に当たっていた。
その木は、赤い謎の実のような物から生えており、捻れて、緑々しい。
木を覗いても、何も見えない。木の葉には『料理』や『洗濯』の様な言葉が浮かんでいる。
「なんだ……これ」
そして、俺は重要そうな赤く巨大な木の実を覗いた。
「おお! これが肝心なスキルか!!」
「さて、恒例の台詞……言っちゃいますか!」
俺は軽く息を吸い込み、ある言葉を叫ぶ。
「ステータスオープン!!」




