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第17奉仕 ミノと戦う事になりました

 翌日、俺はこの青い空の下でちょっとした準備運動をしていた。


「ルミナ、分かっているだろうな?」


 後ろからレオンの声がしたので、俺は準備運動を続けながら返事をする。


「はい。お任せください、完勝してきます」


「信じてるからな……」


「ちょっと! 聞き捨てならないわ!!」


 この棘のある声は……

 ミノ!


「私がただの人間なんかに負けるわけないじゃない!」

「それに、クラリス家って武器を使ってこそのクラリス家でしょ?」

「武器無しのクラリス家に負ける要素が見つからないわ!」


「…………」


「僕も同感かな……ふぁ〜……ミノちゃんには負けるかもしれないけど、ただの人間には負けないよ」


 こいつら……俺が今までリノルにどれだけ扱かれて来たか知りもしないで……!


「…………私だって今まで沢山の特訓を重ねてきました」

「あなた方の様な人を見下す者に負ける気はしません」


「なんですって!?」


「こら、ミノ。またケチつけて……ごめんなさいね」


 ミウが間に入るように現れ、謝りながらミノの首裏辺りのメイド服を掴んで去っていく。


「ミウ様! 離してください!」


「……ルミナ、気にするなよ」


「分かっております」

「……ところで、ニコルさんはどうして未だここに……?」


「ニコルでいいよ。僕、ご主人様から距離置かれてるんだよね」


 ニコルはのんびりとした雰囲気を漂わせて、大きな欠伸をする。


「それはまた……どうして?」


「それが分かってたら苦労してないヨ〜」


「そうですか……」


「話してる所悪いがルミナ、試合の時間になったぞ」


 レオンに呼びかけられ、レオンから対戦相手を伝えてもらう。


「承知致しました、お坊ちゃま。私の相手は何方ですか?」


「ミノだ」


 ミノかよ! くっそ……どうしよう、さっき煽っちまったぞ……?

 顔面とか八つ裂きにされるんじゃないか……?


「……左様でございますか」


「ルミナ、僕は今お前に大きな期待を抱いている」

「あっさり負けるなよ」


 その眼差しは、まっすぐに俺を見つめ、キラリと輝く。


 少し間を置いて、俺は返事をする。


「承知致しました」


「一試合目を開始する!! ミノ・ライン、ルミナ・クラリス! 戦闘フィールドに着け!!」


 ちゃんとしているクオンだ。ちゃんとしているクオンは初めて見るかも。


「ルールの再確認を行う!! 武器の使用は禁止、殺しも禁止!! 戦闘後はスキルで両者を回復させる!! 戦闘不能になるか、どっちかが降参をするまで試合は終わらない!!」

「それでは! 試合開始を宣言する! 三、二、一、スタート!!」


 クオンの掛け声と共に行動したのは、ミノであった。

 三十メートル程あった距離が、既に詰め切られてしまっていた。


「あんたなんか一瞬でぐちゃぐちゃにしてあげる!!」


 飛び出したミノは右手のひらを俺の頬へ勢いよく突き出される。


「殺しはNGでございますよ。ミノ」


 獣人なだけあって……くっ……素早い……!

 回避を……!!


 ミノの掌底が左頬を掠める。


「ッ……足元がお留守ですよ!」


 【糸】を使いミノの足元を振り払う。

 だが、ミノはすぐにジャンプで後退し、その攻撃を避ける。


「わぁお! 危ない危ない……」

「……てか、武器は使用不可でしょ? なんで使ってんのよ!!」


「これはスキルでございます。もう少し考えてみては?」


「っはぁ!? 言ってくれるじゃない!!」


「いえ、煽りではなく事実を……」


「良いわよ!! そこまで煽るなら、私だって頭良い戦法にしてやるわよ!!」


「……え?殴る蹴るしか無いんじゃないんですか?」


「ふん! あんたの攻撃を利用するのよ!!」


「……そうですか!!」


 そう簡単に利用されてたまるかクソガキ!!

【糸】で拘束してから、そのまま斬ってやる!!


「っ!! 視界外から拘束しようなんてバレバレなんだよ!!」


「えっ!?」


 恐るべし、人獣の感覚。

 研ぎ澄まされた感覚は視界外の攻撃にも対処可能……と言うことか。


 ミノは【糸】を爪で切り刻む。


「ふんっ!!」


「ぐっ……!」


 速い! もう目の前まで!?


ーーーレオンーーー


「……お母様、あいつ中々やりますね」


「ミノ? そうでしょ? いつも私を護ってくれる、可愛いメイドなのよ」


「そうですか」


 僕はちょっとだけ間を置いてから、再び口を開く。


「でも、勝つのはルミナですよ」


ーーールミナーーー


 くっ……こいつにゃ、攻撃力じゃ勝てねぇ……ならば、手数で攻める!!


「……【蜘蛛の糸】!!」


 鉄格子の様に複雑に絡み合った糸が、ミノへと襲いかかる。


 オリジナルだが……通用するか……?


「ただ糸を格子状に並べても無駄よ! 私の爪には勝てないわ!!」


「なっ……くっ……!」


 ミノのあの爪は鋼鉄の糸すら切り裂いてきた。

 やっぱりただの爪じゃない。

 何かを心得てるんだな……?

 もしや、そう言う固有スキルか……?

 疑ったらキリがないな。


「……【糸の矢】!」


「来なさい!! 切り刻んで上げる!!」


 狙いは……ミノではない! 移動だ!


「くっ……逃げるんじゃないわよ!!」


「距離を取っただけですよ……!」


 さぁ、こい!! 俺は沢山罠を仕掛けた!!

 その中にも目には見えない糸もあるぞ……!!フフフフフフ……!


「沢山、糸で罠を張ってるようね……無駄よ。風を切る音が聞こえるわ」


「えっ……?」


「おりゃあ!!」


 くそこいつ……また猪突猛進か!!

 でもな……能ある鷹は爪を隠すって言葉がこの世にはあんのよ!


「残念。惜しかったですね」


「なっ……私が糸に気づかなかった……? 何を使った!!」


 ミノはすぐに、俺が張った見えない糸の罠に引っかかり、四肢を羽交い締めされた様に拘束され、体が宙に浮かぶ。


「人聞きが悪い……ただあなたが単細胞なだけですよ」


「なっ……こんな糸、すぐにでも斬ってくれる……!!」


「あぁ、無駄ですよ。あなたが切り裂けないようにとっても柔らかくしましたから」


「くっぐぬぬぬぬぬ…………」


 どうだクソガキ!! 手も足も出ないだろ!!

 今まで良くも雑魚雑魚言いやがったな……お仕置きをしてやろう……


「ちょっ……ちょっと!! なんで後ろの方に回るのよ!!」


「お仕置きをする為です」


 ゲッへッへ!! くらえ!!

 俺も幼稚園の頃にやられた、トラウマお尻ペンペ──


「『打撃(イクトゥス)』!!」


 は?ピンク色の……肉球……?


「グハッ!」


 痛い! 腹が殴られた感じだ!

 クッソ……これが奴の固有スキルって事か……!

 衝撃を発生させる固有スキルって感じか……?

 いや、衝撃だけじゃない。この痛み……

 打撃を発生させる固有スキルか!


「【炸裂(エクスプローシオ)】」


 すぐさま、そのピンク色の大きな肉球は破裂して、四肢の捕縛を解いた。


「くっ……そう簡単に捕縛を解除するとは……!」


「ふん。その顔がぐちゃぐちゃになるのも、もうすぐそうね!!」


 さぁ、どう来る! 上か? 左か? 右か?

 俺は全てを対策しきって、お前が読めなかった未来の罠まで仕掛ける……!!


「行くわよ!!」


 ミノは糸の罠を掻い潜りながら単純に俺へと突っ込む。


「はぁ!! ふん!! たぁ!!」


 真正面から来るか!!

 だが、罠は勿論用意してある! お前のその目の前の罠、お前が斬る瞬間に硬度をMAXにしてやる!


「『打撃(イクトゥス)』!! 【炸裂(エクスプローシオ)】!!」


 ミノは再び、ピンク色の大きな肉球を生み出したかと思うと、その肉球はすぐさま肉球内部にあった糸ごと炸裂した。


「もらった!!」


 足元が……お留守!!


 【糸】での刃攻撃……その渾身の一撃すらも、ミノはなんとかジャンプして避ける。


「はぁ……はぁ……中々やるじゃない」


「おい! ルミナ!! お前、まだ何か隠しているだろ」


「それはお互い様でしょう?」


「……【空破(フラクティオ・アエリス)】!!」


 三発の肉球の弾が、俺へと飛んでくる。

 だが、こんな物は【糸の矢】で簡単に避けれる!!


「【回転する打撃(イクトゥス・ウォルウェン)】!!」


 ミノがその技名を言うと同時に、ただのピンク色の通常より一回り大きな肉球が飛び出す。


 ……ブラフか? ただの肉球を飛ばしただけではないか。

 そんなんは効きはしない。


「ブラフじゃない……わよ!!」


「ガハッ!」


 突然、俺の横腹を、ミノは右方向へと蹴り飛ばす。

 その衝撃は凄まじく、俺はドームの壁に激突してしまう。


 どう言う加速方法だ? あそこからここまでは充分距離があったはず……


「はぁ……はぁ……思ったよりもやるじゃないですか」


「あんたも、クラリス家にしては良く武器無しで耐えれてると思うわ」


 このままじゃ埒が明かない。それに消耗戦になって負けるのは俺だ。

 ……しょうがねぇ。使うか、アレ。


「……? なんか企んでるみたいだけど、無駄よ」

「あんたの攻撃、全部見切ってカウンターしてやるんだから」


「ふふ……では、私と一緒にダンスをしましょう?」


「……お前、何を言ってるんだ……?」


「【舞踏会】」

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