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第16奉仕 戦闘試合に参加することになりました

「こちら、つまらない物ですが、受け取ってください」


 中程度の袋を薄桃色の獣人に差し出す。


「はぁ!? つまらない物なら渡さないでよ!!」


「あ、いえ、そう言う事ではなく……」


「じゃあどういう事よ!!」


「手土産をお持ちしました。受け取ってください」


「…………つまらない物なのかしら?」


「つまる物です」


「じゃあ受け取っておくわ!! どれどれ……」

「これ……お菓子?」


「はい。グロービと言う揚げたチーズ団子に蜂蜜を塗った物でございます」


「ふ〜ん……美味しそうじゃない!ありがたく受け取っておくわ!!」


「あの〜……自己紹介は?」


「ん? あ〜……そう言えばまだだったわね! あたしはミノ・ライン。見ての通り、人間とはまた別の種族よ」


 ライン……? 何処かで聞いた事があるような……

 俺のは公式か親からしか通知が来なかったからなぁ……じゃなくて。


 確か……7歳くらいの時に聞いた気がする。

 リノルが訓練に座学も取り入れた頃だっけな。


「良い?メイドには三つの名家があるの。その一つはうち、クラリス家。」

「あと2つはなにか分かるかしら?」


「わかりません」


「うん、そうよね。一つはライン家よ。この家は特別な血筋で、個人差があるけど、猫の特徴を併せ持つの。その結果、人間ではなく『ライン』と言う独自の生物に進化したわ」


 あー、あのライン家か。

 リノルから見せてもらったラインの絵はもっと猫だった、と言うか猫が人間になったような姿だったが、ミノは人間の要素が強いんだな。


「…………何よ、これ以上何かあるのかしら?」


「あっいえ、失礼します」


「あっそ」


 バタン!!


 用事が済んだ途端に、ミノは勢いよく戸を閉めて、少し複雑な気持ちの俺が戸の前で残される。


 もう少し優しくしてくれても良いんじゃないだろうか。

 オジサンの心は傷つきました。


「さて……次は164号室か……」


 コンコンコンっと、三回ノックする。

 しかし、反応は何もない。


 そこで、少しだけ戸が開いている事に気がつく。


 もしや、この夢の狭間の先を抜ければ、男子だけが理解できる花畑があるんじゃないか!?


 そっと覗くのは悪いことでしょーか。


 否!!


 閉めない方が悪いのだ!!ゲヘヘへ!!


 ……やっぱり辞めておこう、こんな所見られたら即クビだ。


「……すみませーん」


 俺は再び、扉を三回叩く。


「ふぁあ〜……なぁに……?僕に用でもあるの〜……?」


 すると、中から呑気に欠伸をしながら戸を開いた、俺よりも身長が高い少女が現れた。

 黒髪ロングヘアで黒い瞳。左目の下にほくろがあり、右耳たぶにピアスを空けている。

 メイド服は普通のようだが、エプロンのようではなくドレスの様で、二本のベルトが腹を締めていた。


 その高い身長とは対照的に、胸は断崖絶壁だ。無だ。


 驚くべきは、欠伸をしている口から見える犬歯の鋭さだ。まるで人間ではないほど、犬歯が発達しているのだ。


「こんにちは。私は今日からこの館で働くレオン様の専属メイドのルミナ・クラリスでございます」


「ルミナ・クラリスぅ……?……う〜ん……そっかぁ」

「僕はニコル・アムリウスだよぉ……眠いから寝て良い?」


 ニコル・アムリウスと言う目の前の僕っ娘少女は、ほとんど目を開けずに喋っている。相当眠たいのだろう。


「まぁまぁ……お待ちください。手土産をご用意しました」


「え……?土産……親切にありがとネ……」

「…………寝て良い……?」


 俺はミノに渡した物と同じ、グロービを手渡した。


「あ、はい。もう用事はありません」


「そっかぁ……じゃ〜ねぇ……よろしく……」


 キィ〜〜……と音を立てて、ゆっくりと扉は閉まっていった。


 なんか……ほんわかしてのんびりとした子だったな。

 良いFlowerの匂いがした。


「ふぅ……無事終わった……自室に戻るか」


 俺はゆったりとした速度で廊下を歩き、自室に戻り、戸を閉める。

 すると、猛ダッシュをして、ベッドへと飛び込む。


 あ〜、この時ほど気持ちいい瞬間はないぜェ……

 はぁ……もう本当に体力の限界だ……眠ってしまおう。


 俺は目を瞑り、意識が浮かんでいく感覚を楽しむ。


ーーー安藤 悟ーーー


「おかえりなさい、悟。何か仕事は見つかった?」


「いいや…………何も見つからなかったよ、母さん」


「そう……まぁ、いつかは必ず報われるわよ! 継続は力なり!」


「…………そうだよね」

「……母さん、俺、少し寝るわ」


 母親にそう伝えると、俺は自室のベッドに疲れた足で戻り、布団に包まる。


 もう嫌だ。死にたい。

 この世に居る全ての人間が俺を拒んでいる。

 皆が皆、俺に希望なんて見出していない。

 皆が俺を「社会に適応できない」って言ってる。

 怖い、人が怖い、外が怖い。

 もう嫌だ。何回ハロワに行っても仕事が見つからない。


 あの職員も『うわ、また来たよw』って顔をしてた。


 胸が苦しい、息ができない。


 ……ここは……?

 俺の部屋は何処に行ったんだ!?

 真っ暗だ……真っ暗闇しかない……

 ……何かが闇の中からでてきている……?あれは……お母さん?


「消えてしまえ。お前なんてゴミは」


 うわああああああああああああああ!!!!


 母親が俺の首を掴み、徐々に顔の皮膚が割れ落ちていく。


「死ねよ。いつ死ぬんだよ」


 白い骨がっ剥き出しになってるっ!

 辞めろ!俺に近づいてくるな!!

 くっ喰われる!!

 わああああああ!! うわああああああああ「ああああああああああああ!!!」

「はぁ……はぁ……」


 クソッ……最近見るこの夢は何なんだ……? なんでいきなり生前の俺のトラウマがナイフでほじるように刺激されてんだ……?


「お、おい。大丈夫か?ルミナ」


「はぁ……はぁ……お坊ちゃま……?」


 ドア越しにレオンの声が聞こえる。


「いや、なんか叫んでたから……どうした?何かあったか?」


「いえ……なんでもありません。気にしないでください」


「そ、そう……? あ、ルミナ。これからの予定を伝える」

「部屋の中に入れてくれ」


「……わかりました」


 俺は戸を開け、レオンを自室へと入れる。

 レオンは机に向かっている椅子をベッドの方に向かせて座る。


「ふぅ……ありがとう、ルミナ」


「いえいえ」


「それで……ルミナは何をしたい?」


「え? 何がですか?」


「歓迎会でもやろうと思ってな。オウロと話してたんだ」


「あ〜、おまかせでお願いします」

 パーティなんて言ったら流石にがめついだろうからな……!


「分かった」

「あ〜、明日専属メイド同士で戦う事になってるから。実力を測り合うらしい」


「そうなんですか? ルールは?」


「素の実力を測りたいから武器なし、殺人なし、首や股間などの急所を狙うのも無し」


「なるほど……まぁ、大体のルールはわかりました」


「それで、だ……」

「お前、武器無しでまともに戦えるのか?」


「…………スキルがあります」

「スキルの選択も【糸】なので余裕かと」


「ふ〜ん…余裕、ねぇ。まぁいいや、ご主人様を失望させないでくれよ」


 …………今日はダラダラしてても良い日なのか……?


「ルミナ、ついてこい」


「わかりました」


「戦場の下見をさせてやる。庭に出るぞ」


「ありがとうございます」


 戦場の下見ねぇ……一体どんなフィールドなんだか。

 校庭みたいな?


「お待ちしておりました、レオン様」


「待たせて済まない、早速戦場を作ってくれ」


「承知致しました」


 そのメイドのスキルによって作り上げられたそのフィールドは黒に少し青が混じったような壁で、ドーム状で作り上げられている。

 直径100mくらいの空間だ。


「ありがとうございます、お坊ちゃま。もう充分でございます」


「そうか。戻していいぞ」


「了解致しました」


「すぐに下見を終えた……と言うことは絶対に勝たないと許さないからな?ルミナ」


「はい、重々承知しております」


「そうか、期待してるぞ」


「はい、お任せください」

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