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第14奉仕 旦那様と街へ行きました

「本屋……本屋……あれとかじゃないですか?」


 沢山の植物が置かれているパッと見は普通の店を指差す。


「おお! 見てみるとするか!」


 入ってみれば、やけに薄暗く、足元くらいしか見えない。

 その時、パッとスポットライトが点き、目の前に居た紫色のローブを着て、フードを被った老婆へと当たる。


「ようこそ……占いの館へ。今日はな──」


「すみません、間違えました。失礼します」


 老婆の口が開いた瞬間に、この店は本屋などではないと知り、退店する。


「盛大に違ったな!! はは!!」


「あれが占いの館だとは思いませんよ……明らかに普通の店だったのに……」


「お!! あれとか、本屋という物じゃないのか!?」


 クオンの目線の先にはオシャレな木造の建築物があった。

 これも本屋では無さそうだ。だが、クオンが入りたいと言っているのだから、従うとしよう。


「まぁ、そう思うのなら入ってみましょう」


 扉を開ければ、カランカランと音が鳴り、シャカシャカと容器を振っているバーテンダーの様な男性が出迎える。


「らっしゃい!! 初見さんだね!! オススメは『ローズバトラーの生血』だ!!」


「ハッハッハ!! ならばその、『ローズバトラーの生血』とやらを──」


「すみません、間違えました。失礼します」


 注文しようとするクオンを引っ張り、俺たちは退店する。


「おいおい……ちょっとぐらい呑んでも良いじゃないか」


「ダメです。この調子で行ったら明日になってしまいますよ」

「それに、どうせ長くなるんでしょう?」


「ふむ……それもそうだな!!」


「旦那様、あのお店はどうでしょうか」


 またもや、普通の本屋にありそうな外装の店を、俺は指差す。


「おっ、入ってみるか!」


 カランカランと鈴を鳴らして、俺たちを迎い入れたのは刃物を持った男性だった。

 その男性は客と思わしき人物の髪を美しく整えながら、接客へと移る。


「いらっしゃいませ。今日はどの様な髪型にいたしますか?」


「ふむ……ダンディーな感じで──」


「すみません、間違えました。失礼します」


 駄目だ。埒が明かねえ。

 困ったな……本屋に見える物全てが別の物だ。

 何か案は無いか……? 考えろ、俺。


「…………あっ」


「どうかしたか? ルニナ」


「ルミナです。思ったんですが、最初の占いの館で本屋の場所を示してもらえば良くないですか?」


「……その通りだな!! ハッハッハ!!」


「バカバカしい……こんな事もっと早く思いつけば良かった」

「それでは、早速行きましょう」


「おうよ!!」


 俺たちは最初の外装だけが普通な店の扉を開けて、入る。

 やはり俺たちが入った数秒後に、スポットライトが老婆を照らす。


「ようこそ……占いの館へ……って、さっきのお二方……入る場所を間違えたじゃないのかい?」


「今度はちゃんとした目的です。本屋の場所を教えてください」


「……それだけかい?」


「……他に占って欲しいことがあっても、まずはそれを占ってください」


「…………本屋はここから右方向の道を真っ直ぐ進み、そこから角で左に、そのまま直進した後は二つ目の角で右に曲がるとあるよ」


「ありがとうございます。それでは、これで──」


「いいや、待て。おばちゃん、俺とミウ……妻は仲直りができるか示してくれ!」


「ふむ、いいよ」

「ふむ……諦めない事が仲直りの鍵ですじゃ」


「そうなのか! ありがとう!!」


 この老婆、汎用的な事言ってないか?

 まぁ、道案内は流石に真実だろう……


「これ、利用料金です。受け取ってください」


 俺は二枚の銀貨を老婆に手渡す。


「またのご来店をお待ちしているよ……」


「ルキナ、お前金持ってたんだな」


「ルミナです。旦那様のポケットからスリました」


「そうか!!」


「それでは、本屋に向かいましょう」


「勿論よ!!」


 俺らが老婆に案内された通りに向かうと、そこには看板代わりにデカいドラゴンのような骨が置いてある店へと辿り着いた。


 本当にここが本屋なのか?


「いらっしゃいませー」


 中は普通の本屋の様だ。

 きちんと、本が整理整頓されており、種類別に仕分けられている。


「おい! ルミナ!! これは料理の本か!?」


「旦那様、本屋では大きな声を出さないでください」

「…………旦那様、こちらは刃物の本ですね」


「なるほど!! 道理でナイフとかレイピアが出てくるわけだ!!」


「料理系……料理系……」


 俺は料理系の本を見つけ、中を見る。

 料理系は料理系なのだが、男が作るような料理のレシピばっかりだ。

 この近くにもっとお菓子とかかわいいのがある筈だ。探してみよう。


「ルキナ!! これは!!」


「ルミナです。大きな声は出さないでください」

「……まぁ料理の本みたいですが、少し男らし過ぎますね」

「もっとお菓子とかの可愛い物がいいかと」


「……なるほど」


 ピンク色の表紙、いかにも女子が好きそうな料理本を手に取る。

 中を開いてみれば、出迎えたのは飲み物のレシピであった。

 パラパラっと流し見していると、次第にお菓子のレシピも流れてきたので、これをクオンに見せる。


「旦那様、こちらはどうでしょうか」


「見せてみろ……!」

「ふむ……確かに、お菓子がある……! 良くやった、ルミナ……!」


「はい。それでは、これを会計してもらいましょう」


「これを頼む!」


「はい、代金三黄銅貨です」


 この世界の通貨は価値が低い順から、アス青銅貨、セステルティウス黄銅貨、デナリウス銀貨、アウレウス金貨と言う順だ。

 まあ、この世界の人は全部略して『黄銅貨』や『青銅貨』と呼ぶようだが。


「これで頼む」


「ぴったりですね〜ありがとうございました〜」


「これで買えたな!! 戻ろう、ルミナ」


「はい、旦那様。馬車の所まで戻りましょう」


 良かった。そもそも本屋がこの世界には無いんじゃないかとも考えていたが、無事料理本を買えることができた。

 これなら、ミウとクオンの仲直りもすぐそこだろう。

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