第12奉仕 夫婦の仲直りを手伝う事になりました
ベッドから立ち上がったクオンは、まっすぐとそのままこっちへと向かってくる。
まっ……まずい、近づいてくる……!
姿勢を正すか……いやせめて服着て来い!!
堂々としたクオンに、俺は一応姿勢を正しておく。
「こんにちは、レオン様の専属メイドになったルミナ・クラリスです。何卒よろしくお願いします」
クオンは恐らく180cmほどの巨体で、筋肉ムキムキ。腕に黄金のリングや黒いリングを巻いていて、レオン同様金髪で赤い目。髪形はオールバックだった。
「…………お〜、クラリス家の」
「ルイナちゃん……だっけ? おっぱいでけーな!! どう? 混ざらない?」
目の前の筋肉バカは、ただの低脳であった。
「ルミナです。ご遠慮させていただきます」
「まぁまぁ、そう照れずに」
「ご遠慮させていただきます」
「いいからいいから」
クオンに手を掴まれ、強引に部屋へと引き込まれる。
俺は男だ!! やめてくれ!!
絶対に男とヤりたくなんかない。その為、脅しを掛けてみる。
「手を離してください。レオン様に酷いことをされた、と報告しますよ?」
「ガハハハ!! やってみろォ! 幾ら力があれど、あいつはまだ子供だ」
「俺を裁く権力はねぇよ」
「そうですか、手を離してください」
「おいおい……ノリが悪いな。お嬢ちゃんよ。こういう時は──」
「言い方を変えます。その薄汚い手を今すぐ離してください。あなたみたいな祖チンに興味ありません」
「そっ……祖チンだと!?」
「ほら、お相手方満足できそうだったんでしょう? それが完全にシナシナになる前に再開させてあげては如何でしょうか」
「くっ…………それもそうだ!! メイド、後で迎えに来るからな!! 名前は!」
「…………ルミナ・クラリスです。迎えに来なくても大丈夫ですよ」
クオンは部屋へと戻っていき、俺は扉を完全に閉める。すぐに中に居たメイドのうめき声が微かに聞こえる。防音は完璧なようだ。
あ〜〜……キモキモ。
この体で一人慰める事はあっても、男と、それもおっさんとヤるなんて御免だね。
「さて……次はミウ様へご挨拶しに行きましょう」
恐らく、クオンの妻ミウ・レムス……だが、クオンとヤっていた人はメイドだ。
良いなぁ〜羨ましい……じゃなくて。
なぜ、奥さんからお咎めも何もないんだろうか? もう呆れられている感じなんだろうな。
ミウの部屋は、クオンの部屋から向かって右にある。すぐ近くだ。と言うか真隣だ。
あいつ、奥さんの部屋の隣でやってるのか……凄い精神力だな。
ミウの部屋はクオンの部屋とは真反対に、とっても静かで、どんな音も鳴っていない。
旦那とは違って随分と静かなもんだ。
ドアを三回軽く叩き、ドアノブを捻り、回す。
「失礼します」
白髪に水色のメッシュ、ツリ目で青い瞳、クロスレースで肩を出す白いドレスを着ていて、とても華奢だ。
旦那はいかにもなバカだったが、こっちは机に向かって本を開いている。
見るからに生真面目だ。
「……あなたは?」
ミウは本にしおりを挟んで、パタン、と本を閉じ、顔をこっちに向ける。
「私はレオン様の専属メイドのルミナ・クラリスです。何卒、よろしくお願いします」
「……あ〜、そう言えば言ってたっけ……」
「私はミウ・レムス、好きな物は料理作りよ。よろしく」
「はい、よろしくお願いします」
奥さんは癖がなく、いたって普通なようだ。
苦労人なんだろうな。可哀想に。
「おい! ルキナ!!」
「ルミナでございます。旦那様」
「俺と勝負しろ!! 負けたら俺とセックスだ!!」
「はぁ……奥様が見てますよ?」
「別にいい!! いつも見過ごしてるし、何も思ってないんだろう? ミウ」
なんだ? もう了承済みだったのか。
なら何言っても通用しないか……しょうがない、勝負して俺の強さをわからせて──
パチン!!
「最ッッ低!!」
椅子から立ち上がったミウはクオンの眼の前まで無言、無表情で歩み、クオンを右手でビンタをした。
………………ええ……?
「『追撃』!!」
挙句の果てには、固有スキルも使い、ビンタの後に更に強力な打撃がクオンの頬に加えられた。
カンッカンに怒ったミウは、そのまま部屋を去っていった。




