第11奉仕 調理を開始致しました
初めて入ったレムス家は、とても広く、廊下の長さなど、クラリス家の比ではなかった。
玄関前には階段があり、まるでマ◯クラの森の洋館のようだった。
「ルミナ様、こちらでございます。調理場はここから、左に曲がって行けば辿り着く事ができます」
「承知致しました」
「こんにちは、レオン様の新任専属メイドであるルミナ・クラリスです。診察お願いします」
診察室にいた、白髪のメイドはクラリスの名を聞いた途端に、目を見開き、驚愕の言葉を発する。
「クラリス!? クラリスって、あのクラリスですか!?」
「ええ……まあ」
「ええ〜〜〜!! すご〜〜い!!」
「ルミナさんですね、それでは、両手のひらをこっちへ向けてください」
俺は両手のひらを開いて、白髪のメイドに見せる。
「診察は終わりました。ありがとうございました」
「え?もう終わったんですか?」
「はい。診察は無事終了しました」
「そうですか……ありがとうございました」
多分、スキルか何かだろう。俺はすぐにオウロさんが居る調理場へと向かう。
「ただいま参りました、オウロさん」
「お待ちしておりました。ささ、手を洗ってください」
「了解致しました」
俺はポンプを押し、自分の手を水で洗う。
「洗いましたね? では、包丁を持ち食材を抑えてください」
「あ〜……こうですよね?」
俺は付け合わせであろう人参のような野菜を掴んで押さえ、包丁を立てる。
「抑える時は猫の手です!」
「は、はい!」
俺はすぐさま、野菜を猫の手で押さえ、包丁を押す様に力を掛ける。
「力だけで切るんじゃありません! 引くんです!」
「ひ、引く……?」
「こうです!こう!」
「おお……」
オウロさんのテキパキとした動作に見惚れて、思わず声を上げてしまった。
「はい。それでは、次に蛇の調理に入りましょう」
「オウロさん、今のは?」
「添え付ける為の野菜の調理です」
「了解です」
「蛇はまず、皮を剥きましょう」
「はい!」
予め蛇の皮に切り傷が付けられていて、初めて蛇を調理する俺でも簡単に剥くことができた。
「剥けました!」
「では次に、血抜きを……としたいんですが、あなたの攻撃でもう完全に抜かれてますね」
「それじゃあ、食べられる部位だけ削ぎ落としてしまいましょう」
蛇の食べれる部位が何処なのかが、よく分からない。そのため、蛇を両断した。
「どうでしょうか」
「良い訳ないです。雷みたいな音なってましたよ」
「それから肉だけ削ぎ落としてください」
「わかりました」
まぁこれくらいなら簡単だ。俺でもできる。
「毒抜きも良いでしょう。お坊ちゃまだし、それにルミナ様が毒袋貫いてしまいましたし」
「では、調理に入ります」
「焼いてください」
「あ、はい」
「焼いている間、私はソースを作ります」
きつね色位になってきたら引っくり返せば良いのだろう。肉料理はそんなもんだ。
………………今だ!!
自分でも上出来と思うタイミングでひっくり返すことができた。こんがりきつね色に焼けていて、とても美味しそうだ。
「オウロさん、焼き上がりました」
「私も丁度ソースを作り上げた所でございます」
「それでは、それを皿に盛り付けてソースと野菜で彩りましょう」
「了解です」
黒色に茶色が混じっていて、デミグラスソースみたいだ。
「それでは、こちらをお坊ちゃまの下へ持っていきましょう。いきますよ、ルミナ様」
「承知致しました」
レオンの居場所がどこかわからず、俺はふらふらと屋敷内を迷うも、オウロさんの案内で食事処に辿り着くことができた。
「ルミナさん、扉を開けてください」
「承知致しました」
「お坊ちゃま、沼の大蛇のソテーでございます。お召し上がりください」
「待ちわびたぞ」
「どれ……」
「こちらでございます」
「ふ〜ん……美味しそうな匂いだ」
「それでは、いただこう」
「はい、召し上がってください」
レオンは行儀よく、槍状の食器で蛇肉を食らう。
「むぐむぐ……ふむ……」
「トリみたいな味がする。ソースと絡んでて美味い」
「良くやった、ルミナ、オウロ」
「褒めてやる」
そのとても偉そうな子供の雰囲気は、最早魔王だ。
「美味かった。下げろ」
「ハッ」
食事処を出たのを確認し、オウロにちょっとした質問を投げかける。
「オウロさんっていつもこんな感じの仕事をしているのですか?」
「はい。そうです」
「なんというか……大変ですね」
「いいえ、そうでもないですよ?」
「そうなんですか?」
「はい、やはり頑張ったことを褒められるのはいい気分ですからねぇ」
「あ、そうそう、ルミナ様、クオン様とミウ様にご挨拶をしに訪れてみるのはどうですか?」
「そのクオン様とミウ様ってどう言う立ち位置の人でしょうか」
「レオン様のお父様とお母様です」
「なに、食器の片付けは私がしておきます」
「不審者扱いされる前に行ってきなさい」
「了解致しました」
「恐らく、二人とも自室に居ると思われます。クオン様の自室は中央階段を登り右に曲がった所に、ミウ様はその反対側にあります」
「承知致しました」
玄関から入ってすぐにある、あの階段の事を中央階段と言うらしい。
行ってみるか。まぁ、クオンの方からで良いだろう。
「……ん……ぅん……」
俺がドアノブに触れると、うクオンの部屋からうめき声の様な何かが聞こえる。
クオンが殺人趣味とかを持つ変な奴だったら大変どころの騒ぎではない。そこで、少しドアが開いているため、様子を見ることにした。
「あっあっ…、クオン様ぁ……私、もう……」
「ハッハッハ!! そうか! ならば、いつでも──」
そこにあった物は、俺が前世で一回すらする事も叶わなず、親が寝静まった後にコソコソと画面越しに見る行為であった。
予想外なそれに動揺してしまい、ドアがギイと音を立ててしまった。
「ん? おい! そこ!! 誰か居るのか?」




