第3章 さあ本格的な冒険の始まりだ!
翌日、出社すると3人はテストプレイルームに集合した。
ログインした後、矢向が言った。
「いくつかプランを考えようとしたのですが、情報が足りません。もう少し情報収集をしましょう。そのためによくあるパターンですが冒険者登録をしましょうか。冒険者になれば町の移動や情報収集が楽になります。また、資金も稼ぐこともできます。私は前回の時に冒険者登録をしているのでお二人で冒険者ギルドに行ってください。」
「その間に私は魔王討伐隊の情報を得るため、駐屯軍の詰め所に行ってきます。」
佳織と中原は矢向と別れ、冒険者ギルドに向かった。これぞゲームの冒険者ギルドという定番の建物の作りで、迷わず受付に進み冒険者登録をすると、早速ミッション依頼を確認した。
ギルドの依頼コーナーに新しい依頼がきているようだった。
「緊急:巨大スライムの討伐」
今朝、町の北部の農場に巨大なスライムが現れ、作物を荒らしています。相手は一匹ですが剣や槍が通用しません。
二人は顔を見合わせた。
「これ私たちが誕生させた魔物ですよね。」
「ああ、たぶんね。」
ギルドの外の広場で佳織と中原は矢向と合流し、状況を説明した。
矢向が少し考えて言った。
「戦闘訓練を兼ねて倒していきましょう。佳織さんたちにとって良い練習になると思います。」
佳織は尋ねた。
「昨日は倒せなかったのですが、どうやって倒すのですか。」
「スライムはコアを破壊すれば倒せます。外殻や周りの身にダメージを与えてもコアはノーダメージで傷はすぐに回復します。小さなスライムであれば剣が少しでも触れるとコアにダメージが入り、倒すことができますが、あの大きさのスライムは、コアがどこにあるかさがすのが大変ですね。」
「コアを探すのはどうやってですか。」
「武術のスキルが上がれば「スキル:見切り」が使えるようになります。そうすれば相手の攻撃が自分に当たるかどうかわかるようになりますが、自分の攻撃も相手の有効範囲に届くか見えるようになります。」
「そろそろオリビアさんたちも習得できているのではないでしょうか」
佳織はステータスを確認した。現在のレベルは31で確かに習得スキルに「見切り」があった。同じように中原もステータスを確認して、早速使ってみた。
「オリビア君、私を剣で攻撃してみてくれないか」。
佳織は少し強めに剣を振った。中原がさっと後ろに飛び去った。
「おっと。ちょっと手加減してくれよ。危険度レッドが表示されたぞ。もしかして昨日仕事を残業で押し付けたことを怒っているのかな。」
「では問題ないようですので依頼を受領して討伐に向かいましょう。」
3人は北の森に向かった。
「ユーリさん。どうやってあのスライムを探しましょうか。」
矢向は答えた。
「おそらく魔素を持つ存在を取り込むことで寿命をのばしているんだと思います。なので付近の魔素の濃いエリアを探しましょう。スキルの「魔素感知」を使うと魔素の多いエリアが赤っぽく見えるようになります。」
佳織は魔素感知を使ってみた。
視界全体が赤っぽくなり視力が低下したようにぼやけていった。中原や矢向のいる位置も少し赤くなっていた。魔素感知をうまくON/OFFしないと移動しながら使えないようだった。
しばらく森の中を進んでいると中原が言った。
「右奥の大きな木のあたり、少し赤色が濃くないかい。」
近づいて魔素感知を使うと地面に濃い赤を放つ石が多く転がっていた。
「魔素石の採掘抗の跡地ですね。このあたりの特産品です。リープクリフト王国では珍しい鉱石です。魔素石を精錬すると魔石になります。魔素を多く含んでいますが、ここに転がっているのはあまり良い品質の鉱石ではありませんね。」
「おっと、この石はかなり魔素が多いですね。」
矢向はいくつかの魔素石を拾い上げると懐にしまった。
「ではこの付近にあの大スライムがいる可能性がありますね。」
佳織は付近を探索していると直径5メートルほどの小さな池を見つけた。スキル「魔素感知」で見ると池の水が真っ赤になっていた。
「あの辺、ちょっと怪しくないですか?」
佳織が指摘したちょうどその時、池で水を飲もうとして近づいた小鳥が水しぶきに覆われた。小鳥は池の中に落ち、そのまま出てこない。
「まさか。」
「そうだね。あれは池でなく、窪地に潜んだ奴だね。昨日より大きくなってやがる。」
「オリビア君、ちょっと近づいてみてくれ。相手の攻撃はスキル「見切り」で何とかなるだろう。」
佳織が池に近づくと水が触手のようにやってきた。佳織は避けるとともに剣で切り落とした。次の攻撃も避けたところで、池全体が盛り上がって、襲ってきた。佳織が攻撃をしようとしたが、スキル「見切り」で攻撃が当たる反応がない。
「私の剣ではコアまで届かないわ。タッカーさんの槍ではどうですか。」
中原が横から飛び出し、スライムに槍を突き刺す。中原の槍がスライムのコアをとらえた。スライムの動きが止まり体が崩れかけた。佳織と中原は飛びのこうとしたが間に合わなかった。ドロドロの液体が体にまとわりつく。結構リアルで、少し生臭いにおいがしたように錯覚するほどだ。
矢向は飛びのいてきた佳織とぶつかりそうになりながら必死に避けた。
「あっぶねー」
「ユーリさん。こうなることを知ってましたね。」
「・・・・」
中原が矢向の背後にまわり、体を押さえた。
「道連れじゃー。」
佳織は体についたスライムのかけらを手に取り、矢向になすり付けた。
ドロドロになりながら矢向は言った。
「スライムのかけらはしばらくすると消えます。汚れは単なる視覚効果なのでそのうち落ちていきますよ。」
それでも3人は泉に向かい、汚れを落としながら佳織は矢向に聞いた。
「そういえば魔王討伐軍のほうはどうなっていたんですか。」
矢向は魔王討伐隊について調べたことを話し始めた。
「今募集しているのは第3次討伐隊です。ちなみに第1次討伐隊は勇者クリストファー、つまり会長が起こし、魔王討伐に成功しました。第2次討伐隊は裏切って魔王となった会長を討伐するために国王の呼びかけで結成され、私たちは討伐隊に参加し、会長と対峙しました。結果は知っての通りです。」
「それより過去には魔王討伐隊はなかったのですか。」
「王国が軍として攻め込むことは少なかったと思います。川を超えての移動が困難で、土地を占領しても利用価値はないので。向こうが攻めてこなければOKというのが王国の方針です。」
今までの討伐隊は数百人~千人規模でしたが、今度の第三次攻撃隊はさらに大規模なものになるかもしれません。というのは魔王クリストファーが大魔王となり人類種側に攻め込むのではないかと危惧しているようです。」
「ユーリさん、この世界の魔王討伐隊を味方につけるのは可能でしょうか。」
矢向は答えた。
「第2次討伐隊に参加していたので、国王軍につてがあります。うまくいけば討伐軍に参加できるかもしれません。」
「では王国の戦士たちが魔王を倒してくれれば私たちが直接手を下さなくてもミッションクリアですよね。」
中原が中原らしい提案をした。
「では明日からはその方針で行動していこうよ。できれば楽していきたいかな。」
矢向はちょっとあきれて話をまとめに入った。
「本日は、ミッションの完了をギルドに報告したらログアウトしましょう。」
「ちなみに土日は出勤できますか。」
どうやら休日出勤が決まったようだった。




