表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑草令嬢が王子らの溺愛を全力スルーした結果~王太子からの求婚はいらん、青春をくれ!~  作者: ゆいレギナ
5章 銃声で踊れ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/39

36話 勇気の音

 バルクロウや黒服たちの背中に隠れながら、私は屋敷の階段をあがる。


 たしか、ここはヴェルガント家の別宅……ってリリィさんが言ってたっけ。

 道中もあまり活気づいた道を通らなかったし、屋敷内も少し埃っぽさが残っている。普段は使われていない建物だったのだろう。


 アネモネちゃん……こんなところに連れ込まれていったい何を……。


「奥の部屋、だったよね……」


 二階には誰もいなかった。そういや、一階の使用人の数もあまり多くなかったな。しかも黒服に怯えるばかりで、対抗しよう、屋敷を守ろうする人はいなかった。


 普段は使われていない屋敷なのだろう。そこに、急遽最低限の人だけを集めたのかも。


 そんなことを予想しながら通路を進んでいると、すすり泣く声が聞こえた。

 私は慌てて、その少しだけ開いていた扉を開く。


「アネモネちゃん!」

「ナズ、ナ……?」


 アネモネちゃんが泣いていた。

 初めて見るアネモネちゃんの涙だ。

 アメジストの大きな瞳をまんまると見開きながら、ポロポロと。


 殺風景な部屋の中。

 傷だらけの姿で涙を零す姿は、まるで今にも枯れそうな花のようでもあって。


 それでも、私はずっと会いたかった彼女に思いっきり笑みを向けるんだ。


「助けにきたよ、アネモネちゃん!」

「なんで……どうして、あなたが……?」

「だって、私は雑草のナズナだよ?」


 そして、私は抱きしめる。

 大事な、大事な友達を、私は抱きしめる。


「ただ私が咲きたい場所に咲きに来ただけだもん」

「ナズナのくせに、生意気ですわ……」


 顔をくしゃくしゃにしたアネモネちゃんが、私の肩に腕を回してくる。

 私の肩口を、温かい何かが濡らしていた。


 私が抱きしめる手にもっと力を籠めると、さすがのアネモネちゃん。

 その声音はもう震えていなかった。


「この騒ぎ……あの借金取りに手伝ってもらったのね?」

「うん。多分、あとでルシアン殿下に怒られる気がしているんだ」


 すると、アネモネちゃんが鼻で笑う。


「存分に怒られるといいわ」

「え、アネモネちゃん庇ってくれないの!?」


 文句を言って、顔を見合わせて。


「あなた、けっこうひどい顔しているわよ」

「それ、お互い様じゃないかな?」


 お互いに笑いあおうとしたときだった。


「そういうことですか……ナズナ・フェルミエ」


 その声に、私は急いで立ち上がる。

 足が痛いなど、言ってられない。

 息を切らしたゼイン・ヴェルガントが扉を塞いでいた。


「かつての友人をここまで追いかけてくるとは……なんとも未練がましい!」


 私はアネモネちゃんを守るように、松葉杖を構える。

 箒で借金取りを追い払ったことはある。


 だけど、今ならわかる。

 あの黒服たちは、いつも私を害そうとはしていなかった。


 じゃれてくれていただけ。

 子どもと追いかけっこをするように、遊んでくれていただけ。


 目の前のゼインという男には、私たちを害そうとする、明確な意志がある。

 その冷たい視線に呑まれてなるものか!


「かつてじゃない。アネモネちゃんは今でも大切な友達だ!」

「雑草ごときが、ぼくの邪魔をするなっ!」


 下が異様に騒がしい。やっぱり兵士や傭兵でも用意していたのか。バルクロウは撒かれてしまったようだ。でも、ここまでしてくれただけで大感謝。


 アネモネちゃんは私が守る!


「やあっ!」


 迫ってくるゼインに、私は思いっきり松葉杖を振り下ろす。


「しょせん、ただの女だな」


 だけど、あっさりとそれは片腕で止められて。

 同時に、足に強い痛みが走った。ギブスの上から足を蹴られたようだ。


「うっ」

「他愛ない」


 堪らず片膝をついた私の横を、ゼインがスッと通り過ぎる。

 そして、アネモネちゃんの髪を掴み上げた。


「来いっ!」

「きゃっ」


 女にとって……令嬢にとって、髪の毛 は何よりも大切なもの。

 それを乱暴に引っ張りながら、アネモネちゃんを部屋の外に引きずりだそうとしていて。


 ――使うなら、今だ。


 私はジャケットの下からバルクロウから預かったものを取り出す。

 そして両手で構えて、教わったとおりレバーを引いた。


 バンッ!

 耳の奥まで響く強烈な破裂音の直後、私はとっさにアイテムを落としてしまう。


 だけど、ゼインさん手はアネモネちゃんの髪から離れていた。

 壁に小さな穴が開いている。

 はらはらと落ちている赤い糸は……アネモネちゃんの髪!?


 ゼインさんが叫ぶ。


「貴様如きが、どうして拳銃を!?」


 拳銃……言葉だけなら聞いたことがある。

 巨大迷路のオリエンテーションのとき、バルクロウも話題に出していたけれど……火薬が内蔵されていて、弾が飛び出す武器のことだよね? 他国で開発されていて、最近うちの国にも少しずつ流れてきているとかなんとか……。もちろん正式な許可のない人の利用は強く禁止されているはず。所持が見つかっただけで禁固何年だっけ? ……って、これが本物の拳銃!?


 おい、バルクロウ。どこがサーカスのびっくりアイテムだ?

 立派な武器じゃんっ!!

 これで私も犯罪者じゃん!?


「やっぱりバルクロウなんか大っ嫌いだあああああ!」


 私は喉の痛みを気にせず叫びながら、全力で走る。

 奮えるアネモネちゃんの手を引いて。


作者から、ここまで読んでくれた皆様へお願いです


「おもしろい!」「続きが楽しみ!」「ナズナ(色々と)がんばれ!」

などと、少しでも思っていただけましたなら、


【ブックマーク登録】、感想やレビュー、並びに、

ページ下の評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)から、応援いただけると嬉しいです。


皆様からの声や反応が何よりのやる気に繋がります。

ぜひご協力のほど、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ