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雑草令嬢が王子らの溺愛を全力スルーした結果~王太子からの求婚はいらん、青春をくれ!~  作者: ゆいレギナ
3章 赤い花は迷わない

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21話 愉快な反省会

 もうどこにあるかもわからない。

 アネモネちゃんがそう言っていた栞が、宝箱の中に入っていた。


 もうすっかりボロボロだった。それでも丁寧にノリやテープで補強された痕もある。そんな十年分の修復の痕が、より私の胸を熱くさせた。


 うれしい。うれしいうれしいうれしい!

 口ではあんなこと言っていたけど、こんな大事にしてくれていたなんて。


 もしかしたら、本当の宝物である殿下からの花の代わりとして、入れただけかもしれない。それでも、アネモネちゃんがとっておいてくれただけでうれしい。かりそめだとしても『宝物』としてくれたことがうれしい。


 だから、私は大事に大事に持ち帰る。

 再び生垣の中からバルクロウに引っ張り出してもらって、私はボロボロなままアネモネちゃんに宝箱を差し出した。


「ありがとう、アネモネちゃん!」

「どうして、あなたにお礼を言われる筋合いが……」


 訝しそうにしながら、アネモネちゃんが宝箱を開ける。

 そして、目を見開いた。


「どうして、これが……?」


 手が震えている。冷や汗をかいているのか、青白い顔をして。


 あれ、どうしたんだろう?

 そんなアネモネちゃんが気になったのは、ルシアン殿下やバルクロウも同様のようだ。「どうしたんだ?」と二人して宝箱の中を覗き込むと、バルクロウが噴き出す。


「またガキの工作みたいなもんが出てきたな。これがナズナがあげたって言ってたやつ?」

「そーだよ! 上手にできてるでしょ?」

「まあ、ガキが作ったにしてはかわいいんじゃねーの? なんやかんや言って、それを『宝物』にしているアネモネちゃんもかわいいけど?」


 ニヤニヤと詰め寄られて、アネモネちゃんがパッと顔を背けた。


「……そうでしたわ。これなら失くしても構わないと、直前に代えたことを失念してましたの」


 そして、アネモネちゃんが我先にと歩き出す。

 いつもよりかなり大股で……恥ずかしいのかな? それとも、バルクロウに『アネモネちゃん』呼びされて嫌だったとか? どちらかと言えば後者かも!


 そんな私たちの様子を傍観していたルシアン殿下が「なるほどね」と漏らす。


「何がなるほどなんですか?」


 私の問いかけに、殿下が静かに視線を落とした。


「いや……彼女も大変だなと思っただけだよ」


 その他人事の言葉は、どこか同情的で。

 まるで自分と重ねているようにも聞こえて。


 思わず返す言葉に悩んでいると、私と殿下の肩をバルクロウがガバッと抱きしめてくる。


「まあまあ、暗い話はそこまでにして。とっととゴールいこーぜ! 今は楽しいオリエンテーション中なんだから!」

「……そうだね。おまえに言われるのは不服だけど」

「えぇ!? そりゃひどいっすよ~」


 そんな軽口をたたきながら、殿下たちも歩き出す。

 今、暗い話していたっけ?


 ふと視界が暗くなったので空を見上げれば、灰色の雲が頭上で広がっていた。

 もうすぐ、雨が降るのかな?


 私は足元でくるくる回っていたアイ君を抱きかかえた。


「ふふっ、アイ君のおかげで、雨が降る前にゴールできそうだね!」

「キャウン!」




 その後、私たちは無事に一番にゴールした。

 だけど、私たち四人は終了後の打ち上げ会に参加することなく、空き教室に向かうことになった。


 理由は簡単。

 アイ君を持ち込んだことで、反省文を書くことになってしまったからだ。


「あたくしが……反省文なんて……」

「あっはっは! 僕も初めてだ! わぁ、何を書こうかなぁ」


 真っ青な顔で愕然とするアネモネちゃん。

 無邪気な顔で大喜びするルシアン殿下。

 黙々とペンを走らせているバルクロウ。


 どうして、こんなことに……?


 ちなみにアイ君はバルクロウが『俺が無理やり連れてきました!』と証言してくれたおかげで、厳重注意だけで済まされた。今は罰としてオリエンテーションの後片付けを手伝っているらしい。 


 諸悪の根源であるバルクロウが、隣の席で勢いよくペンを置く。


「よし、終わった~……って、ナズナ全然ペンが進んでないじゃねーか。反省文の書き方教えてやろーか?」

「むしろ、バルクロウはどうしてそんなすぐ書けるの……?」

「家でよく親父から始末書書かされてるし」

「オヤジさんの苦労をお察しするよ……」


 バルクロウのお父さんとも何度かお会いしたことある。ものすごく強面ながら、会うたびにやっぱりお菓子をくれるいいおじさんだ。黒服な部下たちの話いわく、ちゃんとお金を返している人……特にその子どもには優しいらしい。家業が違えば、学校や孤児院の先生をするのが夢だったそうだ。今でもその夢は諦めていないと快活に語ってくれたこともある。最初に『お金を自分で稼げるようになりたい!』と相談したときに『王城書記官』を教えてくれたのもバルクロウのお父さんだった。


 そんなお父さんからよく怒られているだろうバルクロウの姿を想像しながら、私は再び原稿用紙に視線を向ける。そして、ため息をこぼした。


 どんなことを書くべきかはわかるんだけどさ……ペンが進まないんだよね。

 だって、確実に内申点が下がったんだもん。

 もしこのせいで、王城書記官の入職に差し障ったら……。


 そんな未来を想像しながら、私は諸悪の根源を睨みつけた。


「このせいで王城書記官になれなかったら、バルクロウを呪ってやるんだから」

「おう、そのときは責任取ってやるよ」

「あっさり言うな~!!」


 私が隣のバルクロウはポカポカ殴っていると、後ろから肩をつつかれる。

 ルシアン殿下だ。


「面接ではぜひ『王太子と一緒に反省文を書いた仲です』と言うといいよ。僕に確認がくるはずだから、そのときは手をまわしてあげる」

「ず……ズルで入職、ですか……?」

「物は言い方だね。コネ入職なんてよくある話だけど……あ、面談を直接僕が対応するようにすればいいのか。そのときは思い出話に花を咲かせようね」


 ニコリと美しい顔で微笑んでくる殿下に、私は視線を逸らさずを得ない。

 何が何でも書記官にはなりたいけど……ズルしてなりたいわけじゃないんだよぉ~。そこのところ、特にアネモネちゃんには勘違いしてもらいたいくない!


 だから、私はアネモネちゃんに「違うんだよ!?」と声をかけようとしたときだった。


「ど、どうしよう……このことが両親に……いえ、彼にバレたら……」


 私たちの会話をよそに、アネモネちゃんは前を向いたまま震えている。

 私たちは思わず息を呑むほど、極度に顔を青白くして。


 そのときだった。

 二回のノック音のあとに、現れたのはメガネの従者。

 アネモネちゃんの筆頭従者ゼインさんだった。


「アネモネお嬢様、お部屋に戻りましょう」


 そのとき、窓の外からポタポタと音がし始める。

 どうやら、雨が降り出したようだ。



作者から、ここまで読んでくれた皆様へお願いです


「おもしろい!」「続きが楽しみ!」「お嬢様も王太子でも反省文www」

などと、少しでも思っていただけましたなら、


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