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雑草令嬢が王子らの溺愛を全力スルーした結果~王太子からの求婚はいらん、青春をくれ!~  作者: ゆいレギナ
3章 赤い花は迷わない

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18話 楽しい迷路の裏事情


 合同オリエンテーションは、月に一度開催される。

 両校の交流を第一とし、今回は『ダンスパーティーにむけてパートナーとの仲を深める』という名目だ。なんかこんな名目が毎月あるらしい。めんどうだね。


 今月のオリエンテーションの課題は巨大迷路攻略。

 ルミエール女学園の裏手に広がる庭園の一部が高い生垣で作られている。そこが迷路のようになっているらしく、それを男女ペアでクリアするのが今回のお題だ。


 だから、私たちは広大な庭園の入り口に集合していた。

 今日のお空は曇り空。アイ君が言うには、今日は雨が降る匂いがしているらしい。でも夕方からだから、迷路をスムーズにクリアできたら濡れないだろう、だって。


『おれも協力出来たら、すぐにでもクリアさせてやるのに』


 そうションボリしていたアイ君は、正直とても可愛かった。

 だから、今もたくさん撫で繰り回した手の感触が残っているにも関わらず……その癒し効果は、あっという間にピリピリとした空気で吹き飛んでいた。


「このイベントのために、道は毎年作り替えられているんだ」

「……無駄遣いじゃないですか?」


 私の質問に、パートナーは笑顔で応える。


「仕事をつくる――これもれっきとした上に立つものの役目だよ。仕事があるということは、雇用が生まれる。雇用があれば庶民もお金が手に入り、経済が回る。また庶民で金が回らなければ税収入も生まれないから、国や貴族の運営もままならなくなる。そうすれば治安の維持や公共事業も回らなくなる。だから彼らの労働に報いるために、僕らはこのイベントを全力で楽しむべきなんじゃないかな?」


 なるほど、と感心するばかりだ。

 私はまだまだ視野が狭い。これから勉強することが山ほどありそうだ。机の上以外でも……なんて、決意を改めてさせてくれるのは嬉しいのだけど。


 こうして私の知見を広めてくれるお相手は、もちろん今日もキラキラとしていた。 


「今日もご尊顔が美しいですね……ルシアン殿下」

「今日も褒めてくれてありがとう。フェルミエ嬢は褒め上手だね」


 あぁ、周囲の視線がピリピリする。ギラギラ視点が私に突き刺さる。しかも陰口……というか、コソコソ話で「いつ行く?」「誰かに取られるくらいなら」「でもタイミングが大事ですわ」と何かを狙っている様子だ。


 あれ、今日のイベントは迷路じゃなかったっけ?

 狩りの間違いだった? 獲物は私?


 かろうじて表情で笑みを作りつつも、冷や汗で背中が寒くなり始めている。

 そんな私にルシアン殿下は今日もにこやかに訊いてきた。


「ところでフェルミエ嬢に友達はいるのかい?」

「いきなり貶してきましたね」

「違うよ。一緒に行動したい人はいるのかと聞きたかったんだ」


 たしかに周囲を見やれば、グループを作っている人たちもいる。……まぁ、大半はこちらを観察しているペアが多いんだけどね。私と目が遭うと、にこやかに手を振られる始末だ。怖いんだが!?


 だから急いで視線を逸らして、私は殿下に質問を返してみた。


「他のペアと一緒でもいいんですか?」

「望むならこの場の全員で回ってもいいんだけど……まあ、迷路の攻略時間を競う題目でもあるからね。一応、内心点に加味されるし、四人くらいが妥当だとは思うけど……」


 迷路を短時間で攻略したグループが勝ち、というルールは私も把握していた。しかも、迷路を攻略しながら『宝探し』もしなければならないのだ。一ペア一個の宝物が指定されているから……たしかにグループを組んでも二人組四人が関の山だろう。というか、なんなら二人だけのほうが効率的じゃないかな?


 なんて首をかしげていると、殿下がこっそりと耳打ちしてくる。


「先日のダンスパートナーに納得いかない場合は、ここでパートナーを交換する生徒も多いんだよ。ダブルデートとして狙いの異性のいるペアと組んで、お互いパートナーを交換したり……とかね」


 そんな裏事情に、私は乾いた笑みしかでない。


「じゃあ……今、非常に私が注目されているのは……」

「僕らとグループを組みたいんだろうね。ほら、がんばってね」


 そう合図されたときだ。ある令嬢が「ナズナさん」と発したのを皮切りに、一斉に私たちを取り囲んでくる。


 みんな、いつになくにこやかだった。


「ねぇ、ナズナさん。最近わたくしたち仲良しですよね。よければ一緒に――」

「いいえ、ナズナさんはわたしと仲がいいんですのよ。こないだランチもご一緒しましたし?」

「なんの! 私なんて先日一緒に図書室で勉強した大親友ですわ!」


 ……ごめんね、クラスが違うから見覚えはあるけど名前は知らない。

 ……うん。同じテーブルには座ったけど、私が話しかけても無視したよね?

 ……一緒に勉強したって、一言声をかけてすぐ図書室を出て行ったと思うけど?


 似たようなのがわらわらと、みんな私をダシにグループになろうと誘ってくる。


 もしかして、最近いじめが減ったいたのって、そういうこと?


 ここで私から『いっしょに迷路まわろう』と言わせて、自然とルシアン殿下のお近づきになり、あわよくばパートナーを……ってこと?


 こっわ! 女の子って、こっわ!!


 殿下のパートナーなんか喜んであげたいくらいだけど……あぁ、殿下が黒いオーラを発しながら私を見てニコニコとしている。そんなことしたらダメってことですか? そして、この状況も私にどーにかしろってことですか!?


 だったら――と、私は覚悟を決める。

 どうせグループを組むなら、私は私が仲良くなりたい相手と組みたい!


 みんながこのオリエンテーションを利用するなら、私だって利用する。

 だから、私は輪の中から無理やり抜けて、憧れのその子の背中を掴むんだ。


「アネモネちゃん、一緒にグループ組みませんか!?」

「あ、あたくしですの!?」


 赤い髪を翻しながら、アネモネちゃんが私を見下ろす。

 アネモネちゃんはひどく驚いた様子だった。


 そんな彼女に、私は大きな声で伝えるんだ。


「私ね……もう一度、アネモネちゃんと仲良くなりたいの!」


 そのときだった。私とアネモネちゃんの肩に男性の腕が載せられる。

 二人して見上げれば、そこには見覚えのある陽気な眼帯男。


「じゃあ、俺とナズナと赤いやつと殿下の四人グループな!」


 当たり前のように仕切りだしたバルクロウに、私たちは一斉に目を丸くする。


『えっ?』


 だけど、驚いた理由は彼の発言だけではない。

 彼のお腹がでっぷり太っていたからである。


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「おもしろい!」「続きが楽しみ!」「なぜ太った!?」

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