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雑草令嬢が王子らの溺愛を全力スルーした結果~王太子からの求婚はいらん、青春をくれ!~  作者: ゆいレギナ
1-2 花咲くお茶会とダンスのお相手

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11話 花のお茶会

「どういうことですの?」


 アネモネちゃんの目がより一層険しくなる。

 それに、ローズさんは一切怖気づくことなく淡々と述べた。


「ナズナくんがアネモネくんに贈り物をしたいと言っていてね」

「なっ……あなた、なぜあたくしに……?」


 話を振られ、私はモジモジとしながらも応じるしかない。


「あの……アイ君の服のお礼を……」


 すると、アネモネちゃんは深いため息を吐く。


「そんなの、気にしてるんじゃないわよバカ……」


 そんなこと言われても……嬉しかったんだもん、私。


 しかし、ここはどうやら花の御三家が集まるお茶会らしい。

 無論、私は御三家とは無縁の女である。


 私は恐る恐るアネモネちゃんに聞いてみた。


「私、帰ったほうがいいのかな?」

「当たり前ですわ」


 ですよね。

 ローズ先輩には申し訳ないけど、ここはお暇させてもらおう――そう、思ったときだった。


「まあ、いいではありませんか」


 もう一人の御三家――プラチナブロンドが美しい三年生だ。


「昔、アネモネさんと仲良くしているところを見たことがありますわ。お友達なのでしょう? アネモネさんも初参加で緊張しているでしょうし、お友達がいたほうが心強いのでは?」


 ニコニコと穏やかに話す三年生に、アネモネちゃんも「そ、そんなことは」少し否定しずらそうだ。その間に、その先輩が私のもとへやってくる。


「わたくしはリリィ・セントリオンと申しますわ。どうぞお見知りおきを」

「あ……ナズナ・フェルミエです……」

「ナズナさん……とても可愛らしいお名前ですね」


 うわ、綺麗な人……。澄んだ笑みに、まるでこちらの心も洗われるようだ。

 思わずうっとりしていると、私はいつの間にか席に案内されてしまっていた。


 ここまで来たら……座らないほうが変だよね?


 白いテーブルには、美味しそうなお菓子やケーキがたくさん並べられていた。中央の花瓶には、立派な百合の花がきれいに活けられている。


「今日は花のお茶会――花の御三家と呼ばれる私たちの定例会ですの。まあ、わたくしたちは各学年の代表ですから。建前上の情報交換会というか、学園を運営していく上の会議みたいなものかしらね?」

「なるほど……」


 花の御三家は、生徒会みたいなものだ。この一週間で把握したのは、イベントに対しては教員よりも権限が大きいとのこと。寄付金の関係もあるんだって。


 だからこそ、本当なら一般生徒に聞かせられないような話もする場所なのだろうな。本当、悪いことしちゃったのかも……。


 その間にも、私の前に紅茶が置かれる。

 私が運んでくれた従者さんにお礼をしようとしたときだった。


「ナズナさんの従者は働き始めて日が浅いのかしら?」

「えっ?」


 そのとき、カランとした男に振り返る。

 どうやらアイ君が茶葉の容器を落としてしまい、他の従者の人から叱責されているらしい。手伝おうとして、失敗してしまったのだろうか。


「す、すみません! 私も掃除を――」


 手伝うために立ち上がろうとするも、隣に座ったアネモネちゃんに「やめなさい」と冷たく止められる。


「花のお茶会は、御三家が持ち回りで主催するもの――初回の今日はリリィさんの担当なのよ。あなたも席に座るのなら、きちんと客としてのマナーを守りなさい」

「で、でも……」

「あなたがしていいことはお茶を飲むことだけ。わかった?」


 そうこうしている間に、アイ君がローズさんのムキムキ従者さんに肩を押されて、私の後ろに控えるように立つ。ムキムキ従者さんも、メガネのゼインさんも、それぞれ主の後ろに同じように立っていた。


 みんなの席に淹れたての紅茶が配られて、リリィ先輩が笑顔で音頭をとる。


「それでは、いただきましょう」


 リリィ先輩、ローズ先輩が紅茶を飲む。


 わ、私も飲むべきなんだよね……?

 ストレートの紅茶だ。だけど、果物の爽やかな香りがする。

 いつもその辺の草を干してお茶にしていた私からすれば、そんないい匂いのする紅茶なんて本当に久しぶりで。


 少しドキドキしながら口を付けると、思わず感想を漏らしてしまった。


「すごくおいしい……」


 だって、本当においしいのだ。

 お砂糖が入っていないはずなのに、甘みすら感じる。

 澄んだ味わいに、私は紅茶を淹れてくれた従者さんに声をかけていた。


「あの、すごくおいしいです!」


 それに、従者さんは「あ、ありがとうございます」とどこか困ったような反応。

 対して、ローズ先輩は口元を押さえいるし、アネモネちゃんはわざとらしく視線を逸らしていた。私……また何かおかしなことしちゃったのかな?


 その中で、リリィ先輩だけがニコニコと私を見つめていた。


「従者を褒めてくれてありがとう。彼らも他のご令嬢に褒められることに慣れていないから、きっと誉れ高いと思うわ」

「あの……お礼を言ったら、ダメだったんですか……?」

「ダメではないわ。わたくしにではなく、従者を直接褒めたお客様を、他に見たことなかっただけよ」

「あう……」


 どうやら従者さんではなく、リリィ先輩に感想を伝えるべきだったらしい。


 お茶会なんて子どものとき以来だ。

 マナーすっかり忘れちゃったなぁ、と落ち込みながら、私は紅茶をもう一口。

 おいしいお茶に癒されるなぁ。せっかくだし、お菓子も頂いていいのかな?


 そう、お皿に手を伸ばそうとしたとき、アイ君が「あるじ」と耳打ちしてくる。


「赤いやつの茶から、やっぱり変な匂いがする」

「えっ?」


 アネモネちゃんはカップを持ったまま、まだ飲んでいないようだ。


 匂い……言われて、私も気にしてみる。

 私、耳がいいだけではなく、鼻も人よりいいんだよね。


 もちろん獣人には敵わないだろうけど……アネモネちゃんのカップから、私が昔お茶を自作しようと雑草で色々試していたときの香りに酷似している。


 たしか、あれを飲んだ直後に急にお腹が痛くなって、地獄を見たんだよね。


 大変だ、アネモネちゃんにあんな苦しい思いをさせるわけにはいかない!


「アネモネちゃん飲まないならもらうね!」


 私はアネモネちゃんのカップをふんだくり、カップの中身を一気に飲み干す。



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