表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生造船技師は最強艦隊を作る  作者: 竹本田重郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/10

第6話 和製ポケット戦艦

「下田と男鹿は和製ポケット戦艦のようなものです。太平洋からインド洋にかけて通商破壊作戦に従事します。戦艦としては小柄であり、巡洋艦としては少し大きく、その不格好さが強みになりました。至近距離ならともかく遠方から双眼鏡で除く程度では軍艦とわかりません」




 牧野発案の奇天烈な軍艦が登場した。その名も下田型装甲艦であるが便宜的な名称にすぎない。なぜなら、戦艦でありながら戦艦でなかった。いったい、どういうことか。その答えは和製ポケット戦艦という思想に基づいた。ドイツ海軍のドイッチュラント級装甲艦はポケット戦艦という小型で重武装の新時代の戦艦を思わせる。宣伝戦略が成功し過ぎてダンケルク級戦艦といった対抗馬を強くし過ぎたことは皮肉なことだ。




 それはさておき、日本海軍でもドイッチュラント級装甲艦の研究は行われる。ドイツの置かれた状況が生み出した。苦肉の策のため真似ることはあるまいと見送られる。これをロンドン海軍軍縮条約の抜け穴とすることが提案された。巡洋艦以上の火力に戦艦以上の走力は魅力的である。枠を埋める策ということもできたが抜け穴のため、高速敷設艦や水上機母艦、給油艦と誤魔化した。どうせ他国も同じことをする。とっくに破棄する方向で進んでいる故に今更の話だった。




「船体はいつでも航空母艦へ改造できるように組んでいますが、そのまま仮装巡洋艦と活動でき、重巡洋艦の補完や潜水艦隊の司令塔、艦隊給油艦など、ありとあらゆることに対応しました。したがって、武装はドイッチュラント級装甲艦を追い過ぎず、重巡洋艦よりも劣るかもしれませんが、副砲を事実上の主砲に据えています」




 就役を目前にして用兵側との擦り合わせおいて奇天烈なアイディアは何かとイチャモンを付けられる。この場でも四方八方から飛んできたが冷静に対処していった。内心では旧時代の老人たちがと嘲笑するが黄金の仮面を被って機微すら見せない。和製ポケット戦艦の思想は万能艦であると幾度説明した。艦隊決戦や水雷決戦に拘る者が後を絶たない。余りの頑迷さに辟易した。




「その主砲で撃ち勝てるのかね」




「敵艦が巡洋艦か駆逐艦であれば余裕です。戦艦と戦うことを考えているかもしれません。そのような状況を作る又は作られた時点でお終いです。それは使い方が悪いだけであって造船屋にケチをつけられても困ります。どんな兵器も使い方ですから」




「随分と生意気じゃないか」




「台風直撃が警告されていたにもかかわらず、真正面から突っ込んで事故を起こす。まったく、やるせない」




「まぁまぁ、いつの時代も作る方と使う方は反りが合わん。二人とも収めてくれ」




 ドイッチュラント級装甲艦を参考にした故か主砲は三連装を採用する。多連装砲の利点は同じ砲門数でも場所を取らずに重量も軽減できた。ただし、被弾時に砲撃能力を一気に削がれてしまう欠点が指摘される。全体の砲火力を底上げしつつ、対空火力も併せ持ち、主砲を補うための副砲の群れだ。そもそもの運用が近距離を想定しているため副砲の出番が多いと想定している。主砲は逃亡時の脅かしに使ったり、一撃離脱の艦砲射撃をしたり、「主砲が副砲に副砲が主砲に」と逆転した。とはいえ、腐っても鯛と相応の大口径砲を採用する。




「それでは続けます。主砲は新造の50口径30cm三連装砲を前部に集中配置しました。副砲は127mm連装高角砲を8基と88mm単装高角砲4基の計12基として近距離における砲火力と対空火力を確保しています。仮装巡洋艦と行動する際は主砲よりも副砲が頼りになりました。高角機銃は25mmですがあとで換装ないし増設できる余力を残します」




「確かに副砲の数が尋常じゃない。よく1万トンに収めたな」




「いえ、1万5000トンはあります。チョロチョロッといじくりました」




「やりおる」




「下田は高速敷設艦、男鹿は高速給油艦。ふん33ノットで走る敷設艦と給油艦があってたまるか」




「外向けには22ノットと誤魔化しています。バレたところでの話です。欧米諸国と真っ向からやり合おうとしている。その気概を見せていただけなければ」




 主砲は新造の30cm三連装砲だった。敵巡洋艦の多くが8インチ以下の主砲を積んでいることを鑑みる。局所的に圧倒できる火力を目指した。14インチには負けるが長砲身から撃ち出される高初速の砲弾の威力は侮れない。30cmという口径が可能な速射も期待された。ただし、先述の通りで積極的に使うことは無い。敵戦艦が出現した場合は全速力で退避しながら牽制の砲撃を加えた。




 主砲の代替が副砲の群れであるが対空を重んじる。最新型の127mm連装高角砲を多く積んだ。さらに、穴埋めに新造の88mm単装高角砲を置いていく。従来の平射砲ではなく両用砲の性質を帯びた。対空戦闘では高威力の対空砲弾を数多も撃ち出す。対艦戦闘でも駆逐艦の主砲弾を浴びせられた。どちらを選んでも卒がない。88mm高角砲は既存の76.2mm高角砲では威力不足だった。10cm高角砲は大型で重量も嵩む。ちょうどいいところの88mmを採った。その口径からわかる通りでドイツ製をライセンス生産している。これら副砲は通商破壊作戦において軽装又は非武装の商船を効率的に沈められた。商船を護衛する駆逐艦は砲門数で圧倒する。




「艦後部は水上機の運用に特化させています。これにより広範囲をくまなく索敵でき、敵商船の通信手段を奪ってよし、艦隊の目となってよし、夜間奇襲の爆撃をしてもよし、何でもできましょう」




「最上型の例があり、利根型の建造もあり、異論は出まい」




「まぁ、無いがな。水上機はいくらあっても困らない」




「話は逸れるが高速水上機母艦を量産して水上機の航空艦隊を作るとか」




「あいにく、今は下田型であるから後でな。たっぷりと話してもらおう」




「はい。まだ時間はありますので…」




 艦後部は平坦で水上機の格納庫と射出機が備えられた。最上型を踏襲したデザインのため異論は出ないようである。台風が直撃しても無傷の最上型という実績が良くも悪くも独り歩きした。実際は水上機の区画は破損していたが誇張が覆い尽くす。水上機は敵商船の通信機を破壊でき、艦隊の目と索敵を行い、直掩機と防空の傘を為し、いくらあっても足りなかった。それ故に艦隊型の高速水上機母艦を量産して水上機の航空艦隊という計画が存在する。




 それはさておいた。最後にオッと驚かせるのは主機関である。ドイッチュラント級装甲艦を参考にした最大の証拠が艦本式ディーゼルの採用だった。彼自身があれだけ否定していたが新型戦艦に向けたテストヘッドと認める。海軍自体も艦本式ディーゼルに期待していた故にバックアップを得られた。何かと手間はかかるが主機関の軽量化と省スペース化、長大な航続距離と利点は多い。単独の行動が多くなる都合で航続距離の確保は必須に挙げられた。艦本式ディーゼルを開発するに在フランス時のコネクションを活かしてドイツからMAN社から支援を受けている。




「このように下田型装甲艦は通商破壊作戦を中心にしています。ただ商船を襲うだけではありません。敵地の奥深くまで切り込んで鎌鼬が如くと切りかかる。下手に動けない時も敵軍の通信を傍受して情報を収集し、民間船舶や友軍艦を装ってハワイやミッドウェーを偵察し、潜水艦に対して補給を行うなど、あなた方の知恵により活用法は無限大でした」




「焚きつけてくれるじゃないか」




「はい。よ~く焚きつけませんと燃えませんから」




「あい。わかった。これで大戦果を挙げて見せる」




 最後はがっちりと握手だった。




続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ