表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生造船技師は最強艦隊を作る  作者: 竹本田重郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/10

第7話 これは民間船です

茨城県に新しく建設される三菱の造船所を視察に訪れた。




「牧野印の三菱工場です」




「これで使用料を貰えないもんかね」




「ダメです。公務員ですよ」




 超大企業の三菱が民間船向けの小規模な造船所を建てる。国策の一環であるがあくまでも民間船を基本にした。三菱だけでなく民間企業の造船所は軍艦の建造と改造、修理など忙しい。どれだけ世界が緊張しても平時のため民間航路は活発だった。日米関係が冷え込んでも太平洋航路は保たれている。国内と国外を問わず貨客船がひっきりなしに動いた。航空機の発展は目覚ましいが安価で大量に輸送できる。船舶は未だ主力を為していた。したがって、民間貨客船の需要に対応した造船所が建設されている。




 それも牧野印が与えられた。優秀船舶の助成と称して民間船の徴用を始める。軍艦を一から作るよりも民間から徴用する方が手っ取り早かった。民間船は軍用と求められる性能が大きく異なるため最前線での活動に適さない。後方の輸送に従事する程度であるが、緊急時は徴用して直ぐ軍艦に手直しできる船舶を欲し、優秀船舶の助成制度を開始した。現に豪華客船と称した貨客船が軍艦への改造を想定を入れ込んでいる。牧野は優秀船舶の中に自らの設計を入れた。あの牧野だからすごい設計と思われたがあっけない程に低性能である。




「三菱が考案したという標準型設計の排水量9,000トンの貨物船です。いざという時はあっという間に航空母艦に変貌した。魔術ですよ。牧野さんの魔術です」




「おだてるな。こんな貨物船はアメリカもやってくる。むしろ、向こうの本領と言っていい。我々が先行して有利を得たいが、あっという間に埋められる。空母に変えなくても貨物船は欲しい。本土へ物資を絶え間なく供給するために母数から大きくせねば…」




「牧野さんは考えることが多くて大変です」




「そりゃそうだ。俺は一人で海軍を改革する。どこぞの逆賊たちと違って真っ当にやる」




「2月26日は酷かったですね。良かったですよ。牧野さんが広島に出ていて」




「まったくだ。おかげさまで帰るのが遅くなってしまったが」




 三菱設計というが牧野茂大佐の発案だった。あくまでも民間向けの低性能な標準型のため天才の発案と言えない。三菱が独自に考えたことにして擦り付けた。確かに、最速15ノットの三連レシプロ機関を筆頭に船員区画は大部屋、船体を構成する資材も商船の粗悪な鉄鋼である。何と言っても香箱と呼ばれる簡略化を極めた形状が良くも悪くも画期的だった。




 現在建造されている物はW型という鉄道車両の運搬に用いられる。青函連絡船が代表的だった。北海道と本州は結ばれておらず、専ら貨客船がピストン輸送しており、鉄道も鉄道連絡船により運ばれる。ちょうど北海道から産出される炭鉱を運ぶ貨物列車を本州と往復するための連絡船の需要が高まっていた。これに対応するために鉄道省から要請も出ている。内部の構造はかなり簡略化されているが鉄道連絡の設備は確保された。現時点では真っ当に鉄道連絡船と使われるらしい。




 しかし、真に秘める能力はありとあらゆる特設艦艇に変わる母体だった。全てに共通する母体を用意しておく。将来的に換装ないし改造できる余裕から何者にもなれた。さすがにレシプロ機関からタービン機関への換装は困難であるが、特設水上機母艦や特設監視艇、特設仮装巡洋艦など幅広い分野に対応する。これを可能にしたのが電気溶接とブロック工法、徹底的な簡略化だった。




「学生でも組み上げられる。溶接は職人の手によるが未熟者でも簡単に繋げられた。鋼材は粗悪品ばかりで安価ですぐに手に入る。廃船から持ってきても良いぐらいだ。そんなボロ船が特設航空母艦に変わる。宝石はゴミのような岩石から磨かれて輝きを得られた」




「良いことを言っている風ですがボロ船というのはやめてくださいね」




「ダメか。飾ってみたつもりなんだがなぁ」




「ダメなものはダメです。ご自身の立場を考えてください。狙われたんですよ。あの時に」




「そうらしい。私のところまで降りてこなかったのは怒り心頭だった」




 船体は流線型を排除して平面を多用している。抵抗が大きくなるため高速性は得られない代わりに工作難易度は劇的に低下した。曲線と直線の違いはシンプルである。しかし、工作となると難易度は天と地ほどかけ離れた。熟練の職人でなければ歪な格好になる。直線であれば未熟な学生も簡単に作業できた。これと電気溶接と組み合わせることで短い期間で一気に組み上げられる。ブロック工法もあれば尚も加速した。




 W型の共通設計を素体に航空母艦への改造を予定している。簡単な格納庫を設けてエレベーターを1基か2基を置いた。最後に平坦な飛行甲板をポンと載せて改造は完了する。約半年での改造を想定した。鉄道車両を収める区画は艦載機の格納庫に転用できる。主力空母がやらない仕事を担当するため、船団護衛を兼ねた航空機運搬や上陸作戦支援など、理想を追い求めずに現実を直視し続けた。したがって、レシプロ機関による低速は気にならない以前に気にしてはいけない。




「ようは護衛空母なんだな」




「護衛空母?」




「あぁ、書類上の名前だ。名前を分けないと面倒だろう?」




「特に管理が面倒でした。誰かのせいです」




「私だな。うん」




 腹心たる後輩を連れて構内を歩き回った。フリーパスのため咎められることはない。それよりも機密という機密が存在しなかった。関係者以外に見られて困る物は何一つもないのである。船舶需要に則した標準設計は一見して急造品だった。それは日本の造船技術が正しく向上していることの証拠に等しい。若者が老体の世迷言に惑わされることなく地道な努力を重ねてきた。表に出ないところに核心は隠れている。




 そんな時に正面から走ってくる人影を認めた。邪魔になるといけないと思って進路を譲るがピッタリと追従する。どうやら自分たちに用事があるようだ。こちらも駆け寄って時間短縮を図る。時は金なりだ。1秒の遅延が1隻の喪失を招致する。平時から時間の使い方に気をつけた。その人影は三菱の造船担当者である。見よう見まねの敬礼は民間人らしいが敬礼を以て返した。日本海軍の男児は常にスマートでいるべし。ただの軍人ではなくインテリジェンスなエリート軍人なのだ。




「牧野大佐殿!」




「杉浦さん。ご無沙汰しております。この度はご協力ありがとうございました」




「とんでもない。さすが新時代の造船技術なだけはあって目から鱗が落ちます」




「恐れ入ります」




 まずは世辞から始まる。天下の三菱の人間なだけはあった。しかし、ここはお互いにプロらしく一瞬にしてモードを切り替える。立ち話も何なのでと近くの休憩所に入った。作業員が利用する場のためタバコの匂いが充填されている。この時代では当たり前のことだ。なんなら自分も士官用の煙草を愛用している。




「この前ですね。お話いただいた計画です」




「どうですか。やれますか」




「やはり船渠では不可能と言いますか現実的ではありません。しかし、洋上ならば工作艦の力を借りることを条件に可能と見積もりました。例の合体航空母艦ですよね」




「合体航空母艦!?」




「声が大きいわ。静かにせい。杉浦さんは私と長い付き合いだから秘密のお願いをしている。ちゃんと上の許可も得ているが表には出ないように慎重なんだ」




「失礼いたしました」




 メモ書きのような紙を広げた。




「W型を改造した空母2隻を双胴ないし空母3隻を三胴に繋げた合体空母です。これならば搭載機数の少なさを補うことができました。片方は着艦を片方は発艦をと多段式航空母艦を平面にした感じですね」




「さすが杉浦さん。仕事がはやい」




「これって…」




「俺の発案だ」




続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ