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転生造船技師は最強艦隊を作る  作者: 竹本田重郎


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第25話 整備計画

「なぜこうも規格がバラバラなんだ!」




 はっきり言って陸軍と海軍に限らず規格がバラバラすぎる。造船屋には関係ない話でもなかった。軍艦に武装を積むに際して高角機銃で揉めに揉める。艦隊防空のシステムを構築するが最後の要が高角機銃だった。いかに弾幕を形成して攻撃を妨害できるか。弾幕は濃ければ濃いほどに良いが火器と弾薬を生産する観点から規格統一が望ましかった。




 しかし、陸軍も抱き込もうとする以前に規格の違いが露呈する。もちろん、わかってはいたがゴチャゴチャして呆れの感情すらどこかへ飛んで行った。第三者的に俯瞰できる立場から痛烈に批判する。同じ口径でも規格が異なるとは無駄を極めており、今すぐにでも陸軍と海軍にて統一を進めるべきと主張し、何度目かわからない大炎上に包まれた。




「統合整備計画のようだが今からやれば間に合うはず。そうだろう!」




「はい。おっしゃる通りです。統合整備計画が何かは知りませんが何となくわかります」




「まず海軍においては高角機銃は20mmと15mm、7.7mmで統一だ。航空機の火砲も同様である。せっかく、ドイツから奪ったのだから使わねば勿体ない。歩兵の火器にまでは口出しできないが7.7mmでやれないものか…」




「歩兵銃から機関銃まで6.5mmと7.7mmが併存しています。中将閣下のおっしゃる通りでした。7.7mmに一本化することが最善と認めて新式小銃の配備に合わせて統一するべき。陸軍も分かっているようですがうまくいかないらしく」




「まぁ、急すぎることもぬぐえない。早川の方でどうにかできないか」




「そんな無理を言わないでくださいよ。確かに河川砲艦や火砲艇の製造で関わっています」




「だから正々堂々と口出しできるんだろう」




 海軍内部においての話し合いでは剛腕を振るう。艦隊防空の最終手段である以上はそれこそ妥協できなかった。理想的は長距離と中距離と短距離の三段構えである。長距離は高角砲の担当として12.7cmと10cm、8cmが控えた。短距離はエリコン20mmやMG15mmが担当を務める。7.7mmもあるが予備扱いを受けた。20mmも15mmも強力な高角機銃と試験で良好な成績を収める。国産化を進めながら小幅な改良を挟み続けた。アナログ式電算機を用いた射撃指揮装置の簡易版を与えて精度の底上げを図る。機銃本体は戦闘機から爆撃機、飛行艇に至る全てに共通と強引に推進した。




 この動きを陸軍にまで波及させる整備計画をぶち上げる。陸軍の保有する船舶は専ら小型ばかりで造船屋の出番は少なかった。そもそも海軍の技術屋がとやかく言うことでない。門前払いを食らってもおかしくなかった。本人が殴り込んでも逆効果なためパイプ役を設けている。ちょうど部下に河川砲艦や火砲艇の担当がいた。その装備でも規格違いから面倒を確認できる。陸軍に至っては歩兵銃と機関銃の弾薬ですら口径から異なった。主力歩兵銃は6.5mmだが重機関銃は7.7mmというチグハグは冗談でも済まない。




 ちょうど新式小銃が登場すると聞いた。海軍陸戦隊にも配備が予定される故に7.7mmへの大刷新が求められる。小銃から統一できねば勝てる戦にも勝てなかった。もっとも、日本特有の国力(工業力)から懐事情も理解できる。今から始めて遅くないがゆっくりと順々と確実と進めていった。ドイツから奪取した火器があるのだからデッドコピーから国産化を推し進めよう。新しく作ることは苦手だが既存を真似て改良することは得意だった。




「あんま期待せんでくださいよ。下手に嫌われて教わるなんて洒落ならんす」




「この時世だから襲撃事件は起こらないさ。粛軍は陸軍を中心にしていた。唯一恐れるならば海軍の内輪揉めじゃないか。艦隊派が第一線を退場して尚も勢力を保っていた。穏健派が占めている中でも油断はならん」




「我々も拳銃を持った方がいいですか」




「用心に持っておいて損はないな。何を持つかは自由だが実用性を一番にしなさい」




「まさに経験者は語る」




「堀さんと長谷川さんの二大巨頭がいる限りは大丈夫と信じたいです」




「うん。お二方には整備計画の根回しをしている。いずれ正式に発令されるはずだ。忙しい日々に終わりが見えん。フランスで優雅な日々を送っていた。いやぁ、懐かしい」




 今までは造船に限定して暴れ回るも広範な電子兵装から火砲規格の統一まで口も手も出す。一介の技術系中将が担うにしては「やりすぎ」が呈された。海軍内部でも賛否両論を越えて越権行為を追求する声が生じる。天皇陛下を持ち出して「牧野茂を罰すべし」と聞かれた。今の上層部は統帥権干犯問題という稀代の悪例を研究している。本人が反論する前に不可視の粛軍を敢行した。日本らしい縦割りのセクショナリズムが足を引っ張る。それを欧米諸国の柔軟性を学んだ穏健派が破壊していった。




 海軍のトップは誰かと聞かれると難しいが少数の元帥格と大将格が仕切る。牧野茂暗殺未遂から艦隊派に左遷か予備役の嵐が吹き荒れた。表舞台から一度は退場した堀悌吉や長谷川清など穏健派にして欧米諸国を知る人材を再登用する。米内海軍大臣は続投だが将来的な首相就任を見据えた。己の後任たる人材の選定に動いている。日米決戦が近づいていることを踏まえて将校の配置換えも進んだ。




「はぁ、とりあえず、飯でも食うか。久し振りに横須賀に戻ってくれた。呉だけじゃつまらん」




「今更ですが出てきちゃってよいんです?」




「向こうは西島中佐に任せている。俺は図面を引くことに終わった。横須賀に戻ってきたのは第二号艦の様子を伺うためだ。少しでも気になったことがあればズバズバと指摘してやる」




「おぉ、怖い怖い」




「そんな牧野さんの腹が減っちまった。食堂に行きましょう」




「そうだな。横須賀海軍カレーを楽しみにしていたんだ」




 横須賀を訪れた理由は一つである。仮称第二号艦の建造を俯瞰し、問題点を洗いざらい出し尽くし、一個ずつ潰していくためだ。当初は稀代の大戦艦と計画されたが時代に合わせて航空母艦への転用が決まる。艦隊派を一掃してようやく実現した。今度は規格外の大きさに加えて特異な構造が高難易度に立ち塞がる。牧野設計は革新的で圧倒的なため現場のことをを考えていないと言われた。それでは現場を見てみようと訪れたわけである。




 そんな多忙に心を潤すが飯の時間だった。飯を食っている時だけが多忙より開放される。白飯と主菜、副菜、汁物をかっ込んで仕事に戻ることは厳に慎んだ。一気に食べては腹が重たくなって動きづらい。さらに、頭も重くなって思考がろくに纏まらなかった。頭を働かせる仕事をしている者が自ら鈍らせる。なんて愚かな行いだ。そんな風に己に都合よく食事の時間を確保している。横須賀と帝都を行ったり来たりしていた頃も常に食事は抜かなかった。帝都は何でも揃うが横須賀にいる時は一つしか頼まない。




「士官用食堂だ。こういうのは使いたくないが仕方あるまい」




「我々は身辺警護でございます」




「えぇ、えぇ」




「わかったから早く拳銃を持てよ。この建物の中でもわからん」




「伝手をあたってみます。中将のように実用性に富むやつを依頼します」




「うん。それが良い。皆もカレーで良いな?」




「はい。是非とも」




 士官用の食堂にて横須賀仕込みの海軍カレーを注文した。これも艦上の過酷な勤務のために考案される。明治期から続く伝統的な味だった。まだ若手という自負から特盛を注文する。山盛りの飯にタップリのカレールーだ。これに勝るものはない。牛乳と生野菜サラダをつけることが鉄則だ。




「さぁ、食べて栄養を補給し、最強の空母を作ろう」



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