表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生造船技師は最強艦隊を作る  作者: 竹本田重郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/20

第19話 警戒突破船の到着

「日独同盟は結ばれてしまったが使いようによっては化ける」




 神戸港に次々と貨客船が到着した。ドイツから出航した高速客船のシャルンホルスト、グナイゼナウ、ポツダムは邦人の退避による。日本とドイツは防共協定を結んで友好関係を強化してきた。それは持たざる国の接近である。強烈なファシストと手を結ぶことは猛反発を受けたが流れには逆らえなかった。牧野も反対派の人物に該当するが使いようによっては化けると先端技術の奪取に期待する。




 現にシャルンホルスト級客船の姉妹は邦人やドイツ人を避難と称して送り届ける偽装の下にレーダーや船舶用ディーゼルエンジン、航空機用液冷エンジンといった日本の苦手な分野を積んだ。書類上は避難者の荷物とするが木箱は丁寧に回収されている。ドイツの暴走が究極に達するまでに運べるだけ運んでおいた。あとはリバースエンジニアリングの実施である。まだ数年の猶予があるため今のうちにコツコツと進めていった。




「レーダーを搭載できるスペースを全ての艦艇に与えている。うちのアンテナは特許を奪取したがブレイクスルーに期待せざるを得なかった。船舶用のディーゼルエンジンは大型艦じゃなく小型艦に有用である。PTボートよりもSボートが強力だ。太平洋は広いからな」




 日独友好を前面に押し出した内容の新聞を眺めながら日課の独り言である。客船による輸送は一度に大量に運搬でき、大型の物品も幾つかは運び込めるため、造船業界から希望をぶつけた。航空業界や陸軍からも希望は飛び交う故にドイツの客船だけでは足りない。何よりも不平等と見受けられた。牧野印の民間客船が最初にして最後の客船としての航海に出かける。




「浅間丸の一件があるからアメリカもイギリスもフランスも手を出せまい。イギリスがやらかしおった。私の金華丸と金龍丸、新田丸と八幡丸、春日丸は警戒線を突破する。最速30ノットを出せるんだ」




 日本郵船が運行する太平洋航路向けの高速客船である新田丸級が日独連絡に充当された。一応は太平洋航路も維持されているが日米関係の悪化から便数は減少する。将来的な空母改造を織り込んだ設計も一旦は日独連絡に適正を見出した。表向きは最速20ノットと言われている。艦長が緊急時と判断すれば出力を上げて30ノットを叩き出した。乗客の乗り心地と貨物の安定から滅多に出さない。昨今の国際情勢は混迷を極めた。




 先日も客船がイギリス海軍の臨検を受けてドイツ人が逮捕される事件が起こる。国際法上は正しい行いも強硬姿勢はいただけなかった。ロンドン宣言を根拠に猛烈な抗議を行う。イギリス政府は行き過ぎた対応を謝罪した。日本の正当性が認められた格好であるが国内世論は過熱の様相を呈している。この件は外務省の仕事で自分がとやかく言うことでなかった。しかし、中立国の客船を軍艦が半ば強引に臨検する事件が起こった以上は「自衛」ではなく「逃亡」の必要性に迫られる。




「失礼します。お客人がお見えになりましたが…」




「おっと! 応接室で待たせているか。すぐに行く」




「よろしくお願いいたします。あいにく、ドイツ語はさっぱりでして…」




「英語だけじゃ戦えんぞ。フランス語とドイツ語、イギリス語もだ」




「それは英語では…」




 神戸港に到着した客船から次々と避難者とその家族が降りていった。ドイツに仕事で派遣されていた日本人の民間人が中心である。現地で家族を設けた場合は希望に則り避難が認められた。イギリスとフランスは中立国の民間人を逮捕するほどの野蛮性は持ち合わせていない。その中に変装の上で軍事技術に関わる化学者が紛れていても気づけなかった。




 神戸港から軍人列車に乗って呉までやって来る。手荷物は書類でパンパンに詰まっていた。念の為の身体検査を行った際は検査官が辟易した程に書類に塗れる。ドイツから持ち込む現物は特別に手配した軍用トラックが丁寧に慎重に運んだ。警察が出動して交通誘導を行う厳重さは機密保持よりも安全の確保らしい。なぜなら、劇物を大量に運んでいた。その開発者が牧野茂のもとを訪れる。応接室の重厚な扉を開けた先で待ってくれていた。




「ヴァルター博士! お待たせして申し訳ございません。こちらからお呼びしたのに…」




「いえいえ、ミスター牧野に待たせるほうがいけない。私に活躍の場を提供してくれた」




「博士のヴァルター機関はロケットだけでなく潜水艦に活用できます。高温と低温の中間たる機関もできれば」




「そう言ってくれるとありがたい。まずはミスターから希望のあった射出機であるがもう少し時間が欲しい。ロケットブースターは今すぐにでも製造できるはずだ。液体だから調節が利く」




「ありがとうございます」




 ドイツから先端技術を技術者ごと招聘している。格安の助っ人外国人がヘルムート・ヴァルター博士だ。ヴァルター機関という自らの名を冠した機関は画期的である。低温式から高温式まで幅の広さが特徴的だ。薬品を用いるため扱いづらい致命的な弱点を抱えるが、潜水艦の一時的な緊急出力に使用したり、ロケットブースターと使用したり、工夫次第で使い道は無限に広がっていく。すでに潜水艦用の補助動力と使い捨てロケットブースターは完成を見た。




 牧野氏はカタパルトに使えないかと考えている。蒸気式でも油圧式でも火薬式でもない第三のヴァルター式を逆に提案した。潜水艦や水上艦の水上機用は火薬式と空気式で足りる。空母から大重量の艦載機を連続して発艦させると話は変わってきた。蒸気式が無難であるが母艦の出力を食ってしまい機動力が低下する。油圧式はそもそも低出力であり連続するとパワー不足を指摘できた。火薬式は機体と搭乗員にかかる負担が強く故障のリスクを抱える。各国海軍が懸命に研究している中で日本海軍が遅れるわけにいかなかった。




「私は潜水艦の時代を作りたいんだが…」




「大いに結構です。高速潜水艦による海中艦隊の構想が存在しました。Uボートでの採用は進まなかったのですか」




「あなたは痛い所を衝いてくる。ミスターもご存知の通りだ。ドイツ海軍は冷遇されがち。唯一の誇りであるUボートに変な物を与えるわけにいかない。少ない予算ですから猶更のこと」




「日本海軍は違います。確かにUボートを倣った通商破壊作戦も行いますが、伝統的な海軍国家の誉と艦隊襲撃型の整備を進め、高速潜水艦が水上艦を食い荒らす。そんな光景を見たくありませんか」




「あいにく直接は見れないが活字だけでも見たくあった。具体的には、いかほどを」




「海中40ノット」




「やりましょう」




 ドイツから遥々と来日したのは己の誇りに依る。彼自身は潜水艦の活用を希望していた。本国海軍は唯一といっていい主力のUボートに変な機関は与えられない。敵艦を嘲笑うような高速を以て振り切ることが最大の武器であると何度もプレゼンした。じっと息を潜めているだけはサブマリナーの士気に関わる。もちろん、一切悟られずにクールに去ることがスマートだった。潜水艦を探し出す対潜の技術は確実に向上している。一度でも見つかれば1日中も爆雷攻撃を受けた。仮に駆逐艦ですら追いつけない40ノットを発揮できればである。潜水艦の戦い方は新時代を迎えた。それもヘルムート・ヴァルターの大発明が切り開く。牧野が招聘を希望したのは彼の野心を焚き付けて悲運の発明を世に送り出し、日本海軍は航空機や戦艦、駆逐艦ばかりでないことを知らしめ、潜水艦の見えない恐怖をあおって心理戦を有利に進めるためを多分に含んでいた。




「それでは今日は歓迎の会といきましょう。同胞が多く暮らすところで」




続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ