表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生造船技師は最強艦隊を作る  作者: 竹本田重郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/17

第11話 鷹野型対潜輸送艦

「散布界は広く当たるとは思えんが潜望鏡深度の潜水艦をビビらせるには十分すぎる。何よりも安くて簡単で素人でも扱える。戦闘輸送艦とは考えたな。さすが牧野印の設計であるよ」




 海軍の偉い人たちは一様に感嘆の声を漏らした。民間の造船所から発進した艦艇は鷹野型対潜輸送艦又は鷹野型戦闘輸送艦と呼ばれる。一応は軍に所属する輸送艦だが建造方法から造船所まで民間を多分に含んだ。輸送艦のため性能よりも安価で大量に作れることを重視している。しかし、敵の潜水艦や爆撃機・攻撃機に捕捉されて容易く沈められてしまった。輸送の母数を増やして強行できるが出航のたびに損害を出してはキリがない。日本の限られた資源と人員を無駄に消費した。




 最も手っ取り早い方法は護衛艦と護衛機を与える。それができれば苦労しなかった。二等駆逐艦と海防艦の建造を急いでいるがおんぶにだっこはいただけない。多少は自衛の火器を積みたいが旧式化した火器をポンと載せるだけが多かった。簡易的にも至らない改造より敵機や敵潜に対抗しろとは言えない。したがって、海軍の標準設計に基づいた新型の輸送艦が登場した。




「おおもとの設計はW型やT型のため粗悪な鉄鋼をブロック工法により組み上げる。しかし、機関は本格的な艦本式タービンを採用して最速20ノットと比較的に高速に該当しました。輸送船団の一角と物資を運びながら非常時は自慢の火砲と爆雷、迫撃砲より航空機と潜水艦を寄せ付けない。主に南方との輸送に用いるべきと認めました」




「航空機は?」




「最大12機ですが輸送用に過ぎず、本格的な運用は不可能です」




「これから爆撃機や攻撃機を飛ばせらたら良いが…」




「簡易的な飛行甲板を与える設計はありますが、再収容ができないため、片道切符を持たせることは見送りました。着艦に要する距離が短い機体であれば…」




「川西か愛知の試製飛行艇はどうだろうか。あれなら着水もよし、着艦もよし、そのためのデリックだろう?」




「本来は補給用ですが不可能とは言いません」




 造船屋と航空屋の担当者同士で勝手に話がとんとん拍子に進んでいる。良い傾向だった。畑が違うからと見向きもせずに罵り合う。それは文化的と建設的でなかった。造船屋と航空屋に加えて大砲屋が融合すれば最強の艦艇が誕生する。ただ火砲が強い、ただ最高速が早い、ただ装甲が厚いだけ、そんなもので決まらなかった。証明は鷹野型輸送艦が務めてくれる。




 船体はW型やT型といった標準設計の商船を基本にした。商船方式に標準設計が加わり粗悪な鉄鋼をブロック工法と電気溶接が組み上げる。物資をせっせこと運ぶことが仕事のため良質な鉄鋼は要らなかった。しかし、主機関は艦本式タービンの中級を採用して最速20ノットの健脚を得る。高速輸送艦の最速35ノットには遠く及ばないが船団の足並みを揃える観点から速すぎることも考え物だ。そもそも高速輸送艦は勢力圏から外れて輸送を強行する。鷹野型輸送艦は勢力圏の内側でピストン輸送に従事した。明確に航路が分かれたことに留意が求められる。




「艦載型の飛行艇ですか。良いですね。夢が広がっていく」




「いいや、夢じゃないさ。俺たちで実現する。そういう仕事だ」




「大砲屋は苦虫を食い潰したようですがね」




「いや、なぁ。補給艦に高角砲と高角機銃を積んでる。粗末な迫撃砲も積んでる。なんだか、不思議なんだよ。牧野さんに半ば強引に巻き込まれたから」




「あの人は台風だよ。爆弾並の台風さ」




「ちげぇねぇ」




「ただの造船屋じゃない。あの人は本気で日本を勝たせようとしている」




「そのせいで二・二六の大事件で狙われてしまった。生きていてよかった」




 お偉いさんの輪から逃れてきた若手同士で煙草を吹かした。ヘコヘコしてこびへつらう時間は人生において最も無駄な時間と考えている。出世は度外視と専門分野の熟成に精を出した。牧野茂少将に引き抜かれてようやく本領発揮である。プレハブみたいに狭い部屋からコンクリートの大部屋に移ると激務の始まりだった。規格外の超大型戦艦に量産が前提の大型空母と中型空母、合体する小型空母、航空巡洋艦、高速潜水艦と終わりが見えない。それでも遥かに充実していた。今が最も輝いているかもしれない。




 彼らが生み出した傑作の一種が鷹野型だ。補給艦としては大柄な1万5,000トンの船体には燃料から弾薬、食料と何でも積み込める。給油艦の機能を併せ持つため艦隊型給油艦と活動できた。本艦の真なる強みは戦闘と対潜が示している。補給艦でありながら海防艦並の火力を秘めていた。柔軟な取り外しを前提に組まれた都合より、小口径の60口径8cm連装高角砲を前後部に1基ずつと20mm高角機銃を9門を備え、必要最低限の防空の火力を有する。そもそも艦対空が最終手段のため、ここを豪勢にしても意味は薄く、どちらかというと対潜を重視した。こちらを舐めて浮上してくる敵潜水艦を滅多打ちにする。




「あの対潜迫撃砲ってやつ。いいねぇ。どうも点で撃とうとするけど面の方が結果的に安上がりだ」




「あぁ、良くも悪くも職人過ぎる。東郷元帥の大勝利が劇薬だった」




「牧野さんは内科医かよ」




「あながち間違ってない」




「今度誉を貰ってくるか。士官用は滅多に手に入らない。民生じゃ怒られる」




「俺に任せろ。分捕ってくる」




 対潜に関しては艦隊型駆逐艦よりも充実した。爆雷投射機と投下軌条は一般的な物であるが爆雷本体は新型を採用する。従来のドラム缶から涙滴状に変更された。炸薬量は微減だが沈降速度が大幅に向上している。これも若手の提案から生まれた。対潜の爆雷は炸薬量よりも沈降速度を重視すべき。どれだけ大威力でも届かなければ打撃を与えられなかった。




 また正面や側面の潜水艦に対してはスピガット式対潜迫撃砲の出番である。地上の迫撃砲はストークス式のため、陸軍から融通してもらったわけではなく、海軍工廠が完全に新規の開発を行った。集合体恐怖症の兵士は耐えられない多連装が基本である。砲弾自体は15cmの小ぶりで威力は爆雷の十分の一に届くかどうかだ。しかし、多連装のため一面の制圧力は圧倒的である。発射機と砲弾を合わせてもコンパクトなため艦の前方から後方まで満遍なく設置できた。二等駆逐艦や量産型海防艦が対潜火力を底上げするに丁度良い。敵潜水艦を撃沈できるか否かではなく魚雷を撃たせないことの防御を確立した。これが集団で投射した際は雷撃するどころでない。それにもかかわらず、極めて安価であることを歓迎した。




 潜水艦を建造することは相応の難易度を誇る。そして、サブマリナーを育成することも高コストだった。こちらは安価な兵器で仕留められる。あいては高価な潜水艦と高価な兵士を一気に失った。超大国らしく数を揃えることは容易い。サブマリナーの育成は一筋縄ではいかなかった。究極的な環境に長期間も置かれる故に精神が蝕まれる。いわば練習生の段階で精神が壊れてしまい脱落する者は少なくなかった。安価な兵器が高価な兵器を包み込む。その意味を理解できる者はあまりにも少なかった。




「牧野台風がアメリカ本土に着弾するかもな。このまま行ったらヨーロッパまで届くぜ」




「そんな爆弾台風じゃあるまいし」




「俺たちが勢力を維持するんじゃなくて強めるんだろうが。ボケ」




「おう、何だとコラ」




「はい。やめやめ。牧野さんの顔に泥を塗っちゃいけん」




 対潜迫撃砲のデモンストレーションは続いている。勝利をつかむために必要なのは華やかな軍艦と大砲ではなかった。海軍を土台から支える小さな迫撃砲である。小さな工夫の数々が大勝利を呼ぶのだ。




続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ