私の答え
後日、私はケイさんを呼び出して、喫茶店でお茶を飲んでいた。
「レイちゃんから、解決しましたって言われたけど、要件はそっちじゃないのよね」
「はい」
お互いにもう仮面はつけていない。
ケイさんは前回と同じ、暗い瞳をしていたが、私にはもう彼女がちっとも怖くはなかった。
「……それで、探偵ちゃんでなければならない理由は見つかったのかしら」
その言葉に、いいえと首を横に振る。
「探偵さんでなくてはならない理由は、私にはありません」
ケイさんがきょとんとした表情をする。
「たぶん、私も探偵さんも他の誰かでも大丈夫で、かわりなんて他にもいて……でも、探偵さんが寂しいときは私がそばにいたいし、私が悲しいときにそばにいるのは探偵さんであってほしいから。それが私が探偵さんを好きな理由、彼女のそばにいる理由」
目をぱちくりさせたと思うと、突然に彼女は笑いだした。仮面のないその笑い声はとても楽しそうに聞こえる。
「――いや、まさか、そんな答えを聞かせてもらえるなんてね、思いもしなかったわ。逃げ出しちゃうんじゃないかなって考えてたから」
そして一つ手を叩く。
「うん、なら次は私の番ね。私が探偵ちゃんに望むこと」
私の心に緊張が走る。
「あの子に望んでいるのはね、それは孤独からの脱却よ」
「孤独……」
「そう。この広い、二十億光年の宇宙の中で、私たちは皆孤独だと思うの。どれだけ寄り添っても、決して触れ合えないほどにね」
私が理解できているかどうかは関係ないらしく、こちらの様子を一切気にせずにケイさんはそのまま続ける。
「でも、彼女ならもしかして、なんて思うのよね。人は孤独なだけじゃないって証明してくれるかもしれないって」
「……どうして、ケイさんは探偵さんと別れてしまったの?」
「私じゃダメだったからよ。彼女と一緒に、孤独の先に行くことができなかったから」
悲しげに瞳を伏せる。
「でも、あなたは大丈夫かもしれないわね。私の行けなかった場所まで……期待、させてもらおうかしら」
顔を上げたケイさんは、またふわふわとした笑顔を浮かべていたが、それはもう貼り付けた笑顔とはまた違うもののような、そんな気がした。
「あらら、もうこんな時間」
そして、またしても紅茶を一気に飲み干す。
「これから彼女とデートなの。もう少しお話ししたい気もするけれど……ごめんなさいね」
「へ……?」
確かケイさんは探偵さんが好きで、それに本人も同意していたはずで。
嘘だったのだろうかと困惑する私に彼女は、
「愛は一つではないのよ」
いたずらっぽく笑って、私の分までお代を置いて店を出てしまう。
なんだか釈然としないものを感じながら、私は紅茶を飲んだ。




