私と、あなたと……
無線が切れる。二人の話は終わったらしい。
レイさんは大急ぎで帰って行って、私も探偵さんの元へ向かう。
公園のベンチで、彼女は一人空を見ていた。何となく寂しそうに見えるのは果たして気のせいなのかどうか。
「ん? やあ」
立ちすくんでいる私に、探偵さんは片手をあげて声をかける。
「……少しその辺を歩こうと思っていたんだけど、付き合ってくれるかな」
「うん。探偵さんと一緒なら、どこにでも」
二人で並んで、蕾のつき始めたばかりの並木道を歩く。会話はないけれど、彼女が隣にいるだけで十分に思える。
ギュっと探偵さんから手を握ってくる。私も握り返す。
顔を見なくても彼女が照れているのだとわかる。それがうれしくて、愛おしい。
「時々、自分が胡蝶なんじゃないかと思う時があるんだ。今のこの時が夢なんじゃないかって」
「どうしてそう思うの?」
「幸せで、怖いからかな。いっそ花々の間を舞う胡蝶であったなら、と」
私もそう考えたことはある。この幸せが夢ならば、いつか失うかもしれないということに苦しまなくても済むのにと。
(――でも)
夢でも現実でも、私が生きているのは今なのだ。ならば私のすることは決まっている。好きな人と手をつないで歩くような幸せが、少しでも続くように。
「……桜が咲いて、春になったらさ、お花見に来ようよ。私お弁当とか作っちゃうから」
「楽しそうだな、それは」
「でしょ。夏になったら海に行って……探偵さんの水着姿とか見たいし、スイカ割りとかも面白そう」
「なかなか機会がないからな」
「秋には紅葉の下で本を読んだり、冬は……炬燵でミカンかな、寒いし」
探偵さんの手をさらに強く握り、見上げるようにして彼女の目をのぞき込む。
「それで、たまにアップルパイとか焼いたりしてさ、そうやってずっと過ごしていこう。今年も来年も、その先もずっと……」
にっこりと笑うと、彼女も笑い返してくれる。やわらかくて、花のようにきれいな笑顔だった。




