彼女と彼女の決着
その会話を、私とレイさんは探偵さんに仕掛けられている無線機を通して、事務所で聞くことになった。
レイさんの悩みを解決するために探偵さんが出した解決策というのは、司書さんとの会話を彼女に聞かせるというものだった。
恋人をだますことと、何やら因縁のあるらしい二人を合わせることにレイさんはあまり乗り気ではないようだったが、ケイさんが紹介した人であるし、一度信じてみようと承諾してくれた。
かくして事務所の近くの公園に呼び出された司書さんは思惑道理に探偵さんと会うことになったのだ。
探偵さんの声が聞こえてきて、会話が始まった。
「どうも、お久しぶりですね、先輩」
「あなた……そっか、レイはあなたと私を合わせたかったのね。七年ぶり、だったかしら」
「八年ですよ。それと、きっかけはレイ君ですが、合わせてほしいと言ったのはあたしです」
「もう顔も見たくないんじゃないかって思ってたけど。ひどいことしちゃったからね、私」
「……気にしてませんよ、そんな昔のこと」
「相変わらず、うそをつくのが下手ね。いっそののしってくれればいいのに」
「恨んでるわけではありませんから」
「……優しすぎるのよ、あなた」
「先輩ほどでは。好きではないのに、あたしと付き合ってたんですから」
「好きではあったのよ、傷つけたくなかったのも本当」
「でも、それは後輩や友人として」
「ええ……」
「…………」
「…………」
「……ケイのやつに、いい加減過去と決着をつけろ、と言われました」
「あなたの幼馴染の……。あの子のお膳立てってわけね、この再会は」
「はい。それと、レイ君からの依頼でもあります。貴女が自分を通して他の誰かを見ているような気がすると」
「繰り返すつもりは、なかったんだけどね」
「そうでしょうね。でも、ならなぜ彼女と恋人になったんですか」
「……あなたに少しだけ似ていたから、かな。だから今度こそちゃんと好きになろうって、彼女をしっかり見ているつもりだったけど……そんな風に感じさせてたなんてね。やっぱり、変われてないのかもしれないわ」
「……今日、コーヒーを飲みました」
「……?」
「昔と同じように、砂糖を入れてみたんですが……どうにも今の私には甘すぎるみたいです」
「それで、どうかしたの?」
「変わってしまうんですよ、望もうと、望むまいと。だから……」
「きっと、私も変われてる、かしら。貴女の優しいところは変わらないみたいだけど……そうね、そうかもしれないわ」
「変わってしまうから、せめて自分の望む方に」
「あなたには教えられてばかりね、今も昔も」
「そんなことは。あたしも先輩にはいろいろと教わりましたから」
「人をあんまり信じすぎるな、とかかしら」
「まさか。好きな人を失うのは寂しいから、できるなら手を離すな、とかですよ」
「少し、意地悪になったみたいね、あなた」
「人は変わってしまうものなので」
「違いないわ。……私もそろそろ行かなくちゃ。抱きしめて、好きだと言いたい子がいるの」
「なら、こんなところにいても仕方ないですね」
「そうね。今日はありがとう、またね」
「いえ……」
「…………」
「あの、先輩!」
「どうかしたの?」
「今日まで本当に、ありがとうございました」
「…………」
「……それと、さようなら」




