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【連作短編040】 レジンの海 全6話 ―持ち帰れた海と、持ち帰れなかった海―  作者: マチャオ (Machao)


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第六話 いえ:固まらないまま、ずっとそこにある海が。

最終話です。

冬の浜辺で、凪は新しい石を拾います。固められた海と、固められない海。最後までお付き合いいただければ嬉しいです。

あのジンベエザメは今、どこにいるだろう。


凪はときどき、そんなことを考えた。


リゾートワンピースの女性は、東京か大阪か、どこかの部屋に住んでいる。棚の上か、窓際か、テレビの横か。ジンベエザメはそこで、毎日同じ場所にいる。


固められた海が、内陸で光を受けている。


それでいい、と凪は思った。


それは、ここにしかない。


---


十一月になった。


観光客は来なくなった。海沿いの集落は静かで、工房の前を通る人もほとんどいなかった。


凪は毎朝、浜に出た。


冬の海は、夏とちがった。光の角度が低くて、色が濃かった。青というより、緑に近い日もあった。観光地のポスターには使われない色だった。


それでも、凪は見ていた。


冷たい風が、首筋に当たった。夏とはちがう風だった。水分が少なくて、乾いていた。でも、海のにおいは同じだった。


浜辺に、小さな石が落ちていた。


灰色で、平たくて、波に磨かれた石だった。


凪はしゃがんだ。濡れた砂が、ブーツの先に触れた。


手を伸ばして、石を拾った。


ひんやりして、重さがあった。砂がついていた。


光の中で見ると、かすかに輝いていた。


持ち帰れば、また色が変わる。それはわかっていた。


でも、拾った。


砂をはらって、ポケットに入れた。


波が打ち寄せて、引いた。


---


工房に戻ると、作業台の上に新しい型があった。


次は何を作るか、まだ決めていなかった。


深い青は、棚の一番奥に置いてあった。売れないままだった。でも、そこにあった。


灰色の石の横に、新しい石を並べた。


二つになった。


どちらも、輝かなかった。


でも、凪はそれを、しばらく見ていた。


窓の外では、冬の海が光を受けていた。


固まらないまま、ずっとそこにある海が。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

沖縄旅行で買ったレジンアートから始まった物語が、ここで終わりました。固められるものと、固められないもの——凪が七年かけて受け取ったものを、言葉にしないまま書き切れたなら嬉しいです。

またどこかでお会いできれば。

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