第2-3話「二人、いる」
翌日。
二人は、北の砦へ、案内された。
国境である。
外は、氷原だった。
野良個体が、氷の向こうから、来る。
昼も、夜も。
砦の兵は、五十人。
――そのうち、生きているのは、十二人だった。
残りは、召喚された、死者である。
彼らは、戦った。
疲れなかった。
傷を、負っても、平気だった。
――消えて、また、出てくるだけだからだ。
若者は、それを、見ていた。
そして、気づいた。
――ヨルンが、いる。
昨日、闘技場で見た、あの巨躯。
右手に、大剣。
彼は、砦の壁の上で、戦っていた。
若者は、脳内の記録を、照合した。
――同一個体。
そのとき。
伝令が、走ってきた。
「南門が、破られました!」
「英霊を!」
「――ヨルン殿を、南へ!」
選定官が、詠唱を、始めた。
若者は、壁の上を、見た。
――ヨルンは、そこに、いた。
まだ、戦っていた。
そして、南門のほうを、見た。
――そこにも、ヨルンが、いた。
二人。
同時に。
同じ顔。
同じ甲冑。
同じ剣。
――二か所で、同時に、戦っている。
若者は、動けなかった。
彼の視界に、情報が、重なる。
> 【照会】
> 召喚個体:EU-IS-0311。
> 現在の展開数:七。
> ――七。
同じ男が、七人、この国のあちこちで、戦っている。
「――どういうことだ」
選定官が、事もなげに、答えた。
「必要な数だけ、呼びます」
「同じ人間を?」
「はい」
「――それは、同じ人間なのか」
選定官は、少し、考えた。
そして、こう、答えた。
「同じ、記録です」
若者は、南門へ、走った。
そして、そこで、七人目のヨルンが、消えるのを、見た。
消える前に、その男は、こう、言った。
「――また、か」
昨日と、同じ、声で。
同じ、言葉で。




