第2-1話「氷の国」
北へ行くほど、木が、低くなった。
やがて、木が、なくなった。
デストルディア粛清国。
地の底から、湯気が、上がっている。
白い蒸気が、灰色の空に、まっすぐ、立っていた。
その柱が、地平線まで、何十本も、並んでいた。
人々は、それを「神の柱」と呼ぶ。
旧世紀の人間なら、地熱井、と呼んだだろう。
城門で、二人は、止められた。
騎士が、四人。
黒い甲冑。胸に、一本の縦線の紋。
彼らは、若者の紋章を、確かめた。
そして、跪いた。
それから、エマを、見た。
> ---「番号を」
「――ない」
若者が、答えた。
騎士の一人が、剣に、手をかけた。
「連れだ」
「勇者様」
騎士長が、言った。
低い声だった。
「当国では、番号なき者は、入城できません」
「なぜだ」
「――律法に、そう、書いてあります」
「変えろ」
「変えられません」
「なぜだ」
騎士長は、まっすぐに、答えた。
「我らの神は、約束を、破らないからです」
若者は、しばらく、黙っていた。
そして、言った。
「――なら、俺も、入らん」
彼は、背を、向けた。
騎士たちが、動揺した。
三十分後。
王の使者が、馬で、駆けてきた。
そして、こう、告げた。
「――例外を、認める」
「ただし、一度だけである」
「その者が、二度目に、当国の土を踏んだとき」
「――我らは、それを、焼く」
若者は、うなずいた。
エマは、何も、言わなかった。
彼女は、その言葉を、憶えた。
――百年後に、それが、正確に、実行されることを、
> このときは、まだ、誰も、知らない。




