第1-7話「隣の村」
三日、村に、留まった。
柵を、直した。
畑の焼けた場所を、掘り返した。
ゴーレムが、二体、働いた。
村人が、それを見て、驚いた。
四日目。
隣の村から、人が、来た。
男が、三人。
荷車を、引いていた。
荷車には、人が、乗っていた。
――二人。
老人と、少女だった。
「なんだ、これは」
男たちは、答えなかった。
ヨナが、青い顔で、若者の袖を、引いた。
「勇者さま。見ないほうが」
「なんだ」
「――お渡し、でございます」
「渡し?」
ヨナは、地面を、見ていた。
「あちらの村は、峠の、南でして」
「毎年、二人」
「――峠に、置くのです」
「置く?」
「はい」
「そうすると」
「――一年、来ないのです」
若者は、荷車を、見た。
老人は、目を、閉じていた。
少女は、こちらを、見ていた。
――泣いてはいなかった。
「なぜ、二人なんだ」
ヨナは、答えられなかった。
男たちも、答えられなかった。
「昔から、二人でございます」
「――一人では、来ます」
「三人だと、多すぎます」
「――二人が、ちょうど、いいのです」
若者は、荷車の前に、立った。
そして、視界の、数字を、見た。
――当該集落、在籍五十二名。
――前年比、プラス二。
――プラス、二。
彼は、その数字を、見ていた。
誰も、それを、教えていない。
誰も、計算していない。
――だが、村は、正確に、二人を、選んでいる。
百年、そうしてきた。
彼は、荷車の縄を、切った。
「――帰れ」
「ですが」
「帰れ」
「――来たら、俺が、斬る」
男たちは、震えながら、荷車を、引いて、帰った。
老人と、少女は、村に、残った。
ヨナは、何も、言わなかった。
その夜、彼は、一人で、柵の外に、立っていた。
――七十三人に、なった。
誰にも、言わなかった。




