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第1-6話「配給」
その夜、村は、二人を、囲炉裏に、招いた。
鍋が、出た。
薄かった。
麦と、根菜と、少しの肉。
七十人が、それを、分けた。
村の老婆が、匙で、量を、計っていた。
――一人ぶんずつ。
――正確に。
エマが、それを、見ていた。
「――どうして、量るんですか」
老婆は、手を、止めなかった。
「今年は、三人、増えたからね」
「増えた?」
「生まれたのさ。三人」
彼女は、匙を、掬った。
「だから、来年は、三人、減らす」
エマの、手が、止まった。
「――減らす?」
「そうだよ」
「どうやって」
老婆は、初めて、顔を、上げた。
そして、不思議そうな顔を、した。
「――どうやって、って」
「減るのさ」
「勝手にね」
彼女は、鍋を、かき混ぜた。
「冬が来る。病が来る。獣が来る」
「三人、増えれば、三人、減る」
「――そういうふうに、なってる」
彼女は、当たり前のことを、言うように、言った。
誰も、それを、おかしいと、思っていなかった。
若者は、鍋を、見ていた。
彼の視界に、数字が、重なる。
――当該集落、在籍七十一名。
――前年比、プラス三。
彼は、その数字を、しばらく、見ていた。
そして、何も、言わなかった。




