第1-4話「獣では、ない」
それは、その夜に、来た。
鐘は、なかった。
誰かが、鍋を、叩いた。
――三体。
背丈は、人間の二倍。
関節が、多い。
腕が、四本。
片方が、鎌のように、削り出されている。
若者は、それを、知っていた。
――地下五層で、見た。
村人は、逃げなかった。
逃げる場所が、ない。
彼らは、家の中に入り、戸を、閉めた。
――それだけだった。
若者は、道の真ん中に、立った。
剣を、抜いた。
そして、思った。
――一体目。
空気が、鳴った。
最初の一体の、膝が、砕けた。
――二体目。
二体目の腕が、落ちた。
――三体目。
三体目が、鎌を、振り下ろした。
若者は、それを、剣で、受けなかった。
半歩、退いた。
鎌が、地面を、抉った。
――その一瞬に、彼は、胸に、剣を、突き入れた。
三体とも、止まった。
二十二秒。
詠唱は、一度も、していない。
村人が、戸を、開けた。
誰も、声を、上げなかった。
ただ、遠くから、見ていた。
若者は、倒れたものの、腹を、剣で、割いた。
――中を、見た。
そこに、あったのは、内臓では、なかった。
板が、あった。
黒い。
細い線が、走っている。
彼は、それを、引き抜いた。
――そして、気づいた。
彼は、それを、見たことが、ある。
神殿の、工房で。
荷を運び、畑を耕し、パン窯を焚いていた、あのゴーレムの、胸の中に。
――同じ、板が、入っていた。
「……同じだ」
「え?」
エマが、近づいてきた。
若者は、その板を、彼女に、見せた。
「同じ顔を、してる」
「――工房の、あいつらと」
彼は、荷を担いだ、自分のゴーレムを、見た。
二体は、道の脇に、立って、待っていた。
左腕の動かないほうが、荷が、傾かないように、体を、傾けていた。
若者は、長いこと、それを、見ていた。
村人の一人が、そばに、来た。
少年だった。十歳ほど。
トビ、といった。
> ---「勇者さま」
「なんだ」
「それ、なんですか」
若者は、答えなかった。
答えを、持っていなかった。




