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語り継がれる第五の創世記  作者: たろう
【第三部】第0章:地下六層 ―― 同じ設計図から、出てきたもの

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第0-8話「番号」

「お前たちは」


 若者は、剣から、手を離さなかった。


「――何だ」


 男は、笑ったように、見えた。


 口の端が、動いた。


「われわれは」


「――免除された」


「免除?」


「そうだ」


「百年前」


「この国は、飢えた」


「そして、選ばれた者は、免除された」


「何から」


「――苦しみから、だ」


 男は、天井を、見上げた。


「週に、三名」


「くじで、選ばれた」


「選ばれた者は、この扉を、くぐった」


「――そして、二度と、上がらなかった」


 若者は、動かなかった。


「上の人間は」


 男は、続けた。


「上の人間は、われわれが、天へ、召されたと、思っている」


「神が、迎えに、来たのだと」


「――百年、そう、信じている」


「違うのか」


「違う」


 男は、自分の、金属の腕を、上げた。


「われわれは」


「――部品に、された」


 若者は、しばらく、何も言わなかった。


「――再資源化」


 男が、うなずいた。


「そう、呼ばれていた」


「使える部分は、機械に。使えない部分は、肥料に」


「だが」


 男は、四つの目で、若者を、見た。


「――途中で、止まったやつが、いた」


「機械にも、なりきれず」


「肥料にも、なりきれず」


「――生きてしまった」


 沈黙があった。


「われわれは」


「――失敗作だ」


「そして、失敗作は、捨てられない」


「なぜなら」


「――帳簿に、載っていないからだ」


「捨てるには、まず、数えなければならない」


「数えれば、記録が、残る」


「――だから、放っておかれた」


「百年、放っておかれた」


 若者は、剣の柄から、手を、離した。


「お前」


「番号は」


 男は、金属の腕の、内側を、見せた。


 そこに、古い刻印が、あった。


「――US-SV-2244」


 若者の、脳内チップが、応答した。


> 【照会】

 個体 US-SV-2244。

 旧世紀2041年、廃棄プロトコルにより、処理済み。


 ――当該個体は、存在しない。


「……それは」


「百年前の、番号だ」


「そうだ」


「お前は、死んでいるはずだ」


「そうだ」


 男は、笑った。


「――だから、生きていられる」


「数えられていないものは」


「――殺しようが、ないだろう」


 若者は、その場に、立ち尽くしていた。


 彼の視界には、何も、表示されていなかった。


 目の前に、五十人の人間が、いる。


 ――そして、神の目には、一人も、映っていない。


 彼は、この日、二度目の空白を、見た。


 一度目は、回廊で、すれ違った娘だった。


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