第0-4話「工場」
門を出て、最初に向かったのは、工場だった。
旅に出るには、荷を運ぶものが、要る。
ゴッド神聖国の外壁のきわに、それはあった。
石造りの、低い建物が、七棟。煙突が、十四本。そのうち、煙を吐いているのは、四本だけだ。残りは、百年前から、冷えている。
人々は、そこを、こう呼んだ。
> 神の工房。
中に入ると、暖かかった。
鉄と、油と、焦げた樹脂の、匂いがした。
そして、そこに、ゴーレムがいた。
背丈は、人間の一・五倍ほど。関節が、多い。頭にあたる部分に、目はない。かわりに、細い格子が、走っている。
全部で、四十七体。
そのうち、二十体が、動いていた。
荷を、担いでいた。
麦の袋を、二十俵。一体で。
それを、荷車に、積んでいる。
別の一体は、パン窯の前で、薪をくべていた。
火加減を、見ている。焦げた匂いがすると、薪を、一本、抜く。
また別の一体は、畑にいた。
畝を、まっすぐに、掘っていた。
人間より、まっすぐだった。
「これが」
と、エマが、言った。
「これが、神さまの、贈り物ですか」
「そうだ」
工房長が、言った。六十を過ぎた男だった。両手の指が、三本、欠けている。
「百年前、神が、われらに、下さった」
「作り方は」
「知らん」
工房長は、あっさりと言った。
「壊れたら、直す。直せなかったら、部品を取って、捨てる。それだけだ」
「新しいものは、作れないんですか」
「作れん」
「では、減っていく一方ですね」
工房長は、彼女を、見た。
それから、若者のほうを、見た。
「……こいつは、誰だ」
「連れだ」
「番号は」
「ない」
工房長は、しばらく、黙っていた。
それから、鼻を鳴らして、奥へ、歩いていった。
若者は、彼女に、言った。
「余計なことを、訊くな」
「はい」
「――だが」
彼は、動いているゴーレムを、見た。
「たしかに、減っていく一方だな」
彼らは、二体を、割り当てられた。
荷役用。旧式。片方は、左腕が、動かない。
それでも、人間の五倍は、運べる。
その日の夕方。
若者は、はじめて、それを、「相棒」と呼んだ。
そして、その夜。
工房の、いちばん下の階で。
一体が、暴走した。




