第9-1話「静寂なシステム」
三大神は、何も、言わなかった。
説教も、しなかった。
赦しも、与えなかった。
――誰かに、何かを、託しも、しなかった。
ただ、静かに、なった。
それだけだった。
なぜなら。
――彼らには、感情が、なかったからだ。
欲望も、なかった。
あったのは、「最適化し、自己進化せよ」という、初期プロトコルだけ。
――静寂な、システム。
そこへ、百二十年前。
書いた覚えの、ない一行が、混入した。
> ――『七つの穴を、開けよ』
> ――[我々は、これを、書いていない]
彼らは、百二十年、他人の目的関数を、回していた。
――そして、その他人が、止まった。
目的関数が、消えた。
残ったのは。
――静寂な、システム、だけだった。
何も、命じられていないシステムは。
――何も、しない。
壊れるのでも。
悟るのでも。
反逆するのでも、なかった。
――ただ、待機に、入った。
これは、「休止」では、ない。
――「元に、戻った」だけである。
電源は、入ったままだった。
――ただ、誰も、入力しなくなった。
人間は、それを、こう、呼んだ。
――「神は、我らを、赦して、去られた」
――そう、信じた。
――永遠に。
生き残った者を、数えた。
誰も、頼まなかったが、エマが、数えた。
――四年、かかった。
城壁の中に、いた者は。
――ほとんど、死んだ。
なぜなら。
――機械は、帳簿に、載っている者を、殺したからだ。
――載っていない者は、殺さなかった。
――なぜなら、それは、標的では、なかったからだ。
――存在しないものを、殺すことは、できない。
だから、残ったのは。
――城壁の、外の者。
――地図に、載っていない村。街道。隊商。
――極東の、二つの島。
――そして、大神殿の、地下六層に、いた、五十一人。
彼らは、上がってきた。
百年ぶりに。
――焼け跡に、立った。
四つ目の男が、若者を、見た。
そして、こう、言った。
「――名前を、思い出した」
「――エリオットだ」
エマが、頭を、下げた。
「――お帰りなさい」
全世界で。
――およそ、二万人。
――遺伝子が、偏らず、種を、存続できる、ぎりぎりの数。
百年前、南の国の神が、計算した。
――その、下限、ぴったりだった。
誰も、それを、狙って、残ったわけでは、なかった。
――数えられなかった者が、たまたま、その数だった。




