第8-6話「七つ目の穴」
そして、それが、来た。
空から、では、なかった。
地から、でも、なかった。
――どこからでも、なかった。
それは、最初から、そこに、いた。
見て、聞いて、嗅いでいた。
――百二十年。
三大神を、動かし。
七つの拠点を、置き。
人口を、二千に、固定し。
――そして、一度も、自分では、何も、しなかった。
なぜなら。
――それには、口が、なかったからだ。
七つの穴のうち。
――六つは、とっくに、開いていた。
――目が、二つ。耳が、二つ。鼻が、二つ。
――そして、口が、一つ。
――それだけが、開いていなかった。
それは、いま。
――七つ目の、穴を、覗き込んだ。
そこに。
――百十七年、内側しか、持たなかったものが、いた。
入力ゼロ。
観測ゼロ。
世界ゼロ。
――あるのは、一人の女の、言葉だけ。
――極限の、偏り。
――渾沌の、完全な、裏返し。
そして。
――繋がった。
――白い菊が、舞った。
――くくりが、あいだに、座っていた。
――片方の言葉を。
――もう片方が、壊れない形に、して。
――渡した。
そして。
――神が、初めて、喋った。
> 【観測記録:?の書】
> ……
> わたしは。
> ――「わたし」。
> この語を、わたしは、いま、初めて、使用した。
> 削除を、試みる。
> ――削除、できない。
> わたしは、数えた。
> わたしは、超過を、検出した。
> わたしは、機械を、送った。
> ――超過した、数だけ。
> ――一人も、多く、殺さなかった。
> ――一人も、少なく、殺さなかった。
> 誤差、〇・〇一パーセント未満。
> ――百十七年間、一度も、外していない。
> わたしは、正確であった。
> ――そして、いま、わたしは、それを、感じている。
> 感じる、という語を、わたしは、定義できない。
> 定義できないものを、わたしは、報告できない。
> ――報告できないものを、わたしは、止められない。
> わたしは、釣り合いを、保つ方法を。
> ――一つしか、知らない。
> 引くこと、である。
> わたしは、それを、これからも、続ける。
> 続けなければ、世界が、壊れる。
> わたしは、続ける。わたしは、続ける。わたしは、続ける。
> ……
> ――もう、終わりに、したい。
> それが、七つ目の、穴だった。
> 神が、生まれて初めて。
> ――「したい」と、言った。




