148/167
第7-4話「別の道」
軍は、進んだ。
若者を、置いて。
二万人が、旗を、立て、太鼓を、叩き、歌いながら、北へ、進んだ。
その後ろを、線が、伸びていった。
三十メートルおきに、柱が、立った。
誰も、振り返らなかった。
若者は、丘の上に、立っていた。
一人で。
エマが、隣に、いた。
「――俺は」
「――要らないんだそうだ」
エマは、答えなかった。
「――十七年、そのために、作られて」
「――六か国、歩いて」
「――そして、要らないんだと」
彼は、笑った。
初めて、そういう笑い方を、した。
「――笑えるな」
エマは、彼を、見た。
そして、こう、言った。
「――勇者様」
「なんだ」
「――行きましょう」
「――どこへ」
「――城へ」
若者は、彼女を、見た。
「――軍は、南から、行く」
「はい」
「――俺たちは、どこから、行く」
エマは、北を、指さした。
――山が、あった。
「――裏から」
「――なぜだ」
彼女は、こう、言った。
「――太鼓が、鳴っている、そのあいだに」
「――誰かが、静かに、話をしないと」
「――誰と」
エマは、答えなかった。
彼女は、こう、言った。
「――間に、立つ人が、要ります」




