第6-9話「共闘」
その夜。
――来た。
四十六体。
過去、百年で、最大だった。
ゲンが、鐘を、叩いた。
工場の、人間が、全員、出てきた。
三百人。
鎧が、十二。
鉄の棒が、二百。
――そして、八千枚の、札。
若者は、剣を、抜いた。
――魔法は、使えない。
彼は、この百年で、初めて、「ただの人間」として、戦うことになった。
――そして、勝った。
どうやって、勝ったのかを、書く。
《鉄探しの札》が、地中の金属を、探した。
《穴掘りの札》が、掘る場所を、間違えた。
――人間が、それを、直した。
直したのは、技師では、なかった。
――口の、上手い男だった。
彼は、五人と、大声で、口喧嘩をしながら、その場で、戦術を、決めた。
――穴を、掘る。
――そこに、廃品の高圧線を、沈める。
――水を、引く。
――そして、魔獣を、そこへ、誘い込む。
誘い込むのは、鎧だった。
鎧が、囮に、なった。
――逃げるふりを、して。
若者は、それを、見ていた。
――そんな戦術は、どのデータにも、存在しない。
――記録に、残っていない。
――訓練データに、含まれていない。
――予測、不能。
そして、彼は。
――剣を、捨てた。
彼は、鉄の棒を、拾った。
そして、走った。
詠唱を、しなかった。
思考も、しなかった。
――ただ、殴った。
四十六体のうち、三十一体が、沈黙した。
人間の、死者は、十九名。
――勝った。
夜が、明けた。
若者は、泥の中に、座っていた。
鉄の棒が、曲がっていた。
ゲンが、隣に、座った。
そして、酒を、渡した。
若者は、それを、飲んだ。
まずかった。
彼は、こう、言った。
「――百十七年前も、こうだったのか」
ゲンは、笑った。
「――知らん」
「――だが、たぶん、そうだ」
「――俺たちは、それしか、できん」




