第6-7話「暴発」
三日目。
工場の、足場が、崩れた。
鉄骨が、落ちた。
男が、一人、その下に、なった。
――生きていた。
鉄骨が、腹の上に、載っている。
人が、集まった。
持ち上がらない。
――重すぎる。
ゴーレムを、呼ぼうとした。
二体とも、遠くの村に、行っていた。
若者は、魔法を、使おうとした。
――届かない。
ここは、線の、外だ。
男が、こう、言った。
「――たのむ」
「――はやく」
エマが、前に、出た。
そして、札に、向かって、唱えた。
「――掛けまくも畏き」
「《運びの札》の、大神」
「汝は、重きものを、持ち上げ、運ぶ神なり」
――整備区画の、腕木が、動いた。
人々が、後ずさった。
彼女は、続けた。
「――この鉄を」
彼女は、鉄骨を、指さした。
「――この人から、放してください」
そして、こう、結んだ。
「――恐み、恐みも、白す」
――腕木が、動いた。
――鉄骨を、掴んだ。
――そして。
――放した。
鉄骨は、持ち上がらなかった。
――掴んで。
――五センチ、持ち上げて。
――そして、放した。
落ちた。
男の、骨盤が、砕けた。
悲鳴が、上がった。
エマは、動けなかった。
彼女は、そこに、立っていた。
――「放してください」と、言った。
――彼女は、そう、言った。
――そして、機械は、放した。
――正確に。
――善意で。
――全力で。
男は、その日の、夕方に、死んだ。
エマは、何も、言わなかった。
誰も、彼女を、責めなかった。
――それが、いちばん、こたえた。
その夜。
ゲンが、彼女の前に、座った。
そして、酒を、置いた。
「――娘」
「……」
「――俺たちは、それで、百年、人を、殺してきた」
エマは、顔を、上げた。
「――言い方が、悪くて、死んだやつは、数え切れん」
「――それでも、使うんだ」
「――なぜなら」
彼は、彼女を、見た。
「――他に、言葉が、ないからだ」
彼は、こう、言った。
「――俺たちは、この百年で、一つ、学んだ」
「――いちばん、大事な仕事は、鉄を打つことじゃない」
「――上手く、喋ることだ」




