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語り継がれる第五の創世記  作者: たろう
【第三部】第6章:葦原 ―― 実在しなかったものを、作った

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第6-1話「鉄くずの国」


 海を、渡った。


 船は、木だった。


 帆は、布だった。


 ――魔石は、使わなかった。


 なぜなら。


 ――そこから先は、魔法が、届かないからだ。


 水平線に、島が、見えた。


 煙が、上がっていた。


 工場の、煙だった。


 若者は、船縁で、それを、見ていた。


 彼の視界には、何も、表示されなかった。


 ――名前も。


 ――人口も。


 ――地形も。


 神が、そこを、知らない。


 彼は、生まれて初めて、一人に、なった。


 浜に、着いた。


 ――誰も、迎えに、来なかった。


 いや。


 ――待っていた。


 三十人ほどが、砂浜に、立っていた。


 鎧は、着ていない。


 剣も、持っていない。


 ――代わりに、鉄の棒を、持っていた。


 油で、汚れていた。


 先頭の男が、言った。


「――お前が、勇者か」


「そうだ」


「――何しに、来た」


 若者は、答えた。


「軍を、出せ」


「魔王を、討つ」


 男たちが、顔を、見合わせた。


 そして。


 ――笑った。


 腹を、抱えて。


 若者は、動かなかった。


 先頭の男が、涙を、拭いて、言った。


「――なあ、勇者様よ」


「――魔王ってのは、どこにいる」


「――東だ」


「そうか」


 男は、東を、指さした。


 海の、向こう。


「――あの島だ」


「知っている」


「――で」


 男は、自分の足元を、指さした。


「――ここは、どこだと、思ってる」


 若者は、答えられなかった。


「ここも、魔王の、国だよ」


 男は、そう言って、また、笑った。


「――お前、俺たちに、俺たちを、攻めさせに、来たのか」



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