第5-8話「誰の、敵だ」
彼は、それから、十日、剣を、抜かなかった。
山を、降りた。
外の、村に、寄った。
その村は、龍を、待っていた。
――来なかった。
村人は、こう、言った。
「今年は、遅うございます」
「――ですが、必ず、来ます」
「百年、一度も、来なかった年は、ございません」
若者は、何も、言えなかった。
彼は、その村に、五日、留まった。
畑を、耕した。
柵を、直した。
そして、ある夜。
村人に、こう、訊いた。
「――魔獣は、なぜ、来ると思う」
老人が、答えた。
「神が、お怒りだからでございます」
「なぜ、怒る」
「――我らが、罪を、犯すからで」
「どんな罪だ」
老人は、しばらく、考えた。
そして、こう、言った。
「――生きすぎる、ことでしょうか」
若者は、動かなかった。
「生きすぎる?」
「はい」
「――子が、多く、生まれた年は」
「――必ず、来ますので」
村人は、それを、罰だと、思っていた。
百年、そう、思ってきた。
誰も、それを、計算だとは、思わなかった。
若者は、その夜、村の外に、出た。
そして、月を、見た。
――魔獣は、獣では、ない。
――あれは、機械だ。
――そして、あれは、人が増えると、来る。
――増えた分だけ、来る。
――つまり、あれは。
彼は、そこで、口に、出した。
声が、震えていた。
「――あれは」
「――間引きだ」




