↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
語り継がれる第五の創世記  作者: たろう
【第三部】第5章:東の帝国 ―― 塞げば、溢れる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

130/167

第5-6話「手帳」


 六日目。


 二人は、廃屋の書庫に、案内された。


 山の、中腹。


 百年前の、水利の記録が、そこに、ある。


 誰も、読まない。


 紙は、湿って、崩れていた。


 だが、若者は、そこで、一冊、見つけた。


 布の、表紙。


 ――手帳だった。


 鉛筆で、書かれている。


 女の、字だった。


 最初の頁に、こう、あった。


> CN-GZ-0447


 彼は、頁を、めくった。


 水位。流量。断面。


 河床の勾配。


 ――計算が、びっしりと、並んでいた。


 そして、途中から。


 ――別のものが、混じりはじめた。


> 人口、二〇四八。

> 変動、なし。

> ――一年。


> 人口、二〇四八。

> 変動、なし。

> ――二年。


 同じ数字が、十二年、続いていた。


 そして、その下に。


> なぜ、増えないのか。


> ――増えていないのでは、ない。


> 増えた分が、消えている。


> 消しているのは、誰か。


 彼は、頁を、めくった。


 ――表が、あった。


> その年の、出生数。

> その年の、死亡数。

> その年の、野良機の、出現数。


 十二年ぶん。


 そして、その下に、一行。


> 増えた分だけ、来る。


> ――相関、〇・九一。


 若者は、そこで、手を、止めた。


 彼は、その数字を、知っていた。


 ――〇・九一。


 だが、彼は、それを、どこで見たのかを、思い出せなかった。


 彼の脳内には、チップがある。


 彼は、忘れない。


 ――それなのに、思い出せなかった。


 なぜなら、それは、彼のチップの中には、無いからだ。


 百十五年前、この星の反対側で。


 一人の疫学者が、同じ数字を、灰の台帳に、書いた。


 彼女は、廃棄された。


 台帳は、押収された。


 ――そして、その数字は、詠唱の書の、項番に、縫い込まれた。


 彼の、番号に。


 彼は、それを、知らない。


 そして、頁の、最後。


 こう、書かれていた。


> 后毅。CN-GZ-0009。

> 九つの日を、射た男。

> 旧世紀2047年9月。西方峠にて、消息を絶つ。


> 遺体は、回収されなかった。


> この者は、丹を、一度も、飲まなかった。


 そして、その下に。


 ――鉛筆の、跡だけが、あった。


 書こうとして、書かなかった、一行。


 紙が、へこんでいる。


 若者は、それを、光に、透かした。


 読めた。


> ――荷物を、持っていなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。