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語り継がれる第五の創世記  作者: たろう
【第三部】第5章:東の帝国 ―― 塞げば、溢れる

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第5-5話「塞げば、溢れる」


 この国の、治水は、他と、違っていた。


 堤を、高くしない。


 ――流す。


 脇に、河床を、掘る。


 水を、逃がす。


 溢れる前に、抜く。


「――塞げば、溢れます」


 と、水官の道士は、言った。


「百年前、この国は、それを、学びました」


「――高い堤は、いつか、切れます」


「切れたときに、死ぬ人数は、堤の高さに、比例します」


 若者は、川を、見た。


 河床が、幾筋も、掘られている。


 人が、その脇で、暮らしている。


「――人も、同じでございます」


 道士は、そう、言った。


「人も?」


「はい」


「溜めれば、溢れます」


「――だから、流します」


「どこへ」


 道士は、答えなかった。


 若者は、その顔を、見た。


 道士は、目を、そらした。


 ――そして、こう、言った。


「――試験に、落ちた者は」


「山を、降ります」


「どこへ」


「――外へ」


 若者は、また、あの村を、思い出した。


 柵。焼けた畑。痩せた子ども。


 ――帳簿に、載っている。


 ――守られていない。


 三つの国で、同じ景色を、見た。


 そして、いま、四つ目である。



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