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第5-1話「龍」
山が、深くなった。
東の帝国には、名がない。
いや、あるのだが、人々は、それを、口にしない。
ただ、こう、呼ぶ。
――山の、国。
二人が、峠に、さしかかったとき。
道が、揺れた。
地響き。
若者は、剣に、手をかけた。
――来た。
山肌の、向こうから。
それは、姿を、現した。
長さ、二十二メートル。
多関節。
節が、十四。
地面を、這っていた。
鱗のような、装甲板。
――苔が、生えている。
背に、荷を、負っていた。
若者は、剣を、抜いた。
だが。
それは、二人を、無視して、通り過ぎた。
ゆっくりと。
――道を、譲るように。
彼は、それを、見送った。
村人が、道端に、跪いていた。
拝んでいた。
「――なんだ、あれは」
村人が、答えた。
「龍でございます」
「神の、乗り物か」
村人は、首を、振った。
「いいえ」
「――人が、作りました」
「人?」
「百年前に」
「――禹の、技師が」




