第4-9話「三日」
若者は、部屋に、戻った。
剣を、壁に、立てかけた。
そして、座った。
――動かなかった。
一日目。
食べなかった。
二日目。
水も、飲まなかった。
三日目の、夜。
エマが、扉を、叩いた。
返事は、なかった。
彼女は、入った。
若者は、床に、座っていた。
剣は、壁に、立てかけたまま、だった。
彼は、こう、言った。
「――俺は」
「魔獣を、斬ってきた」
「村を、守ってきた」
「――そして、村は、増えた」
「増えたぶん、次の年に、多く、来た」
「――俺が、増やしたぶん、多く、来た」
彼は、両手を、見た。
「――俺は、何を、していたんだ」
エマは、答えなかった。
「神は、俺たちを、殺す気が、ない」
「――飼う気だ」
「では、魔王は、なんだ」
「――なぜ、俺は、魔王を、討ちに、行くんだ」
彼は、顔を、上げた。
「――俺は」
「なんのために、生まれたんだ」
エマは、しばらく、彼を、見ていた。
そして、こう、言った。
「――わたしは、それを、知りません」
「だが」
彼女は、床に、座った。
「――勇者様は、それを、ご自分で、お決めになれます」
「決める?」
「はい」
「――どうやって」
エマは、しばらく、考えた。
そして、言った。
「――わたしは、魔法が、使えません」
「番号も、ありません」
「――何のために、生まれたのかも、知りません」
「ですが」
彼女は、顔を、上げた。
「――名前を、訊くことは、できます」
「訊いて、呼ぶことは、できます」
「――それだけは、誰にも、止められません」
若者は、彼女を、見た。
「――それが、お前の、決めたことか」
「はい」
彼女は、そう、答えた。
「――誰にも、言われて、いません」
「わたしが、決めました」
若者は、しばらく、動かなかった。
それから、立ち上がった。
剣を、取った。
そして、こう、言った。
「――俺は、まだ、決めていない」
「はい」
「――だが、一つだけ、やることが、ある」




