第4-4話「七人の墓」
三日目。
ラヴィが、二人を、地下へ、案内した。
ダムの、底。
冷たかった。
息が、白かった。
そこに、部屋が、あった。
金属の、箱が、並んでいる。
――何千も。
「これは、なんだ」
「種です」
「種?」
「――麦。米。豆。それから」
ラヴィは、奥を、指さした。
「――人の、種も」
若者は、そちらを、見た。
小さな、箱。
白い霜が、ついている。
中身は、見えない。
「――百年前の、人の、種です」
「使うのか」
「時々」
「――血が、濃くなりすぎたときに」
その部屋の、奥。
墓が、あった。
七つ。
石に、名が、刻まれている。
> ヴィクラム・ラーオ
> ラティカ・ボース
> サミール・カーン
> プリヤ・メノン
> デーヴ・シン
> シャルマ
> アーシャ・ナーラーヤン
「七賢者、と、呼ばれております」
「百年前、この国を、造った人々です」
エマが、それを、見ていた。
そして、訊いた。
「――なぜ、七人なんですか」
ラヴィは、答えた。
「拠点が、七つ、あるからです」
エマは、うなずいた。
そして、少し、考えて、また、訊いた。
「――七つ、あるんですか」
ラヴィは、口を、開けた。
そして、閉じた。
「……」
「――五つしか、聞いたことが、ありません」
彼は、そう、言った。
若者が、振り返った。
――五つ。
ゴッド神聖国。粛清国。律法国。創聖国。そして、東の帝国。
――五つ。
だが、拠点は、七つ、ある。
誰も、それを、疑わない。
エマは、七つの墓の、隣を、見ていた。
――八つ目が、あった。
名が、刻まれていない。
石の前に、弓が、一張、置いてあった。
古い。
弦は、切れている。
「――これは」
ラヴィが、答えた。
「名の、ない方です」
「誰だ」
「――北から、来た、と、伝わっています」
「そして、ここで、死にました」
「名は?」
「――残っておりません」
弓が、供えられていた。
誰かが、いまも、埃を、払っている。




