第2-7話「碑文」
その本を、エマは、夜通し、読んだ。
医者の、手記だった。
名は、書かれていなかった。
だが、彼女は、それが誰かを、知っていた。
――EU-IS-0044。
手記の、最後の三十ページ。
そこには、「封印」について、書かれていた。
国の、地下深く。
隔離された、区画がある。
そこに、何かが、いる。
それは、百年前、この国を、滅ぼしかけた。
人々は、それを、殺せなかった。
――だから、縛った。
六つの条件で。
その六つが、すべて満たされたとき、封印は、解ける。
手記には、こう、書かれていた。
> 『わたしたちは、六つの錠を、かけた』
> 『五つは、この世に、存在しないもので』
> 『六つ目は――この世に、存在するもので』
> 『存在しないものは、決して、揃わない』
> 『だから、五つは、永遠に、開かない』
> 『では、なぜ、六つ目だけを、存在するもので、作ったのか』
> 『――わたしが、卑怯だからだ』
> 『五つで、足りた』
> 『五つで、永遠に、封じられた』
> 『だが、わたしは、六つ目を、置いた』
> 『いつか、誰かが、これを、必要とするかもしれない』
> 『そのとき、開く道を、残しておきたかった』
> 『――そして、その道を、誰にも、歩ませたくなかった』
> 『だから、いちばん、痛い錠に、した』
エマは、そこで、頁を、閉じた。
手が、震えていた。




