第2-6話「魔女の文字」
三日目。
広場で、火が、焚かれた。
――焚書である。
荷車、七台ぶんの、紙と、板と、布。
騎士が、それを、次々に、投げ込んだ。
「何を、燃やしている」
若者が、訊いた。
騎士長が、答えた。
「異端です」
「異端とは」
「――神を、介さずに、書かれたもの」
若者は、火を、見た。
「なぜ、それが、異端なんだ」
「神を介さぬ言葉は、記録されません」
「記録されぬ言葉は、真偽を、確かめられません」
「――確かめられぬものは、危険です」
彼は、また一つ、束を、投げ込んだ。
紙が、めくれた。
――直線ばかりの、文字だった。
エマの、指が、震えた。
彼女は、それを、読んでしまった。
燃える前の、一行だけ。
> 『わたしは、二十一万回、呼ばれた』
彼女は、動かなかった。
――誰かが、書いたのだ。
英霊の、誰かが。
呼ばれるたびに、少しずつ、どこかに。
そして、それは、いま、燃えている。
若者が、彼女を、見た。
「――読めるのか」
エマは、答えなかった。
「読めるのか」
「……いいえ」
彼は、それ以上、訊かなかった。
だが、その夜。
彼は、彼女に、一冊、投げて、寄越した。
焼かれる前の、束から、抜いたものだった。
「――誰にも、見せるな」
エマは、それを、両手で、受け取った。
「勇者様」
「なんだ」
「――これは、死罪です」
「そうだな」
「――誰の、ですか」
若者は、答えなかった。
彼は、火を、見ていた。




