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完全模倣VTuberは自分が分からない  作者: 妃羅


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22/26

【皇 レン】③

【皇 レン】たっての希望で『私』は思う存分に【真似】し続ける。


「うっわ……お前コレも【真似】出来んのかよ……!」


《王の十八番コンボが呼吸するかのように……》


《忘れちゃいけないのがこのコンボもタイミングシビヤすぎるって事ね》


《【ジャストパリィ(ジャスパ)】やら【ジャストガード(ジャスガ)】連発してるけどありえないことだかんね?》


《初心者isどこ……》


嬉しそうにはしゃぐ【皇 レン】を横目に一試合終わらせる。

一呼吸開けて雑談でもして休憩しようかと思っていれば、後ろから手が伸びてきて次のマッチングを始めてしまう。


「もっかいな♡」


「……わかりました」


満面の笑みで言われてしまえば断る気も湧かず、そもそもまだ二試合しかしていないのに終わるのもおかしいかとモニターへ意識を戻す。

今回の対戦相手は超巨大な身体を持つパワー系キャラ。


「おっ!こいつあたしのキャラと相性悪いんだよなぁ〜」


いつの間にかゲーミングチェアに戻っていた【皇 レン】はそれはそれは楽しそうに言う。

今回の【皇 レン】が言う相性が悪いというのは()()()()()()()()()()()()()()

ジャストガードを貫通してくる上にジャストパリィのタイミングも全キャラ中一番シビアだ。





『————関係ないけどな』


ここはせっかくなら声ごと【皇 レン】の真似をしてみようではないか。


《王っ?!》


《今のは本物なの?!どっちなの?!》


《あぁっ……!声も気になるけど画面はもっと気になる……!》


《相性不利仕事しろ……っ!!》


《これは毎回見る光景……》


《明らかに勝ちパターンへの入り方がレン様なのよ……》


————ガードがダメならパリィすればいい。

それは配信中に【皇 レン】が言い放った言葉。

難しいことを更に難しいことで上書きするんじゃないというコメントが思い出される。


「良いね良いねぇ……!

盛り上がってくんじゃんか……!」


『私』が今やろうとしているのは【皇 レン】考案の成功者が【皇 レン】しか確認されていないコンボだ。


《ちょっと待て……!》


《この流れってまさか……?!》


《大会どころか配信でも滅多に見ないやつだぞ!?》


《誰もコンボ三割すら進めないからやらないやつ……!?》


《レン様だから成立してるだけの魅せコンじゃなかったの!?》


《配信で成功してるのレン様しか見たことねぇ……》


《それをやるっての!?》


コメント欄の流れとは裏腹に『私』は画面への集中力を高める。

————タイミングだけではない。

少しのズレも許されない距離感と対戦相手の動きを読みながら。

【皇 レン】の配信で一度見た動きを【真似】する。




「————ここですね」


早ければ失敗。

遅れても失敗。

成功猶予はほんの1フレーム。

それでも指は迷わない。


《入ったぁぁぁぁ!!!》


《嘘だろ!?》


《また成功した!!》


《入っただけでもすごいけど完走できんの!?》


《普通ならまぐれ扱いするけどミラちゃんなら……!?》


《成功者二人目なのか?!?!》


そこから続くコンボの入力猶予は全てが1フレーム。

ボタン、レバー入力は全てが攻撃のためではなく間に位置調整の入力も存在する。

『私』はそれを危なげなくこなしていき————











————『PERFECT』


最後の入力を終えた『私』の前に三度目の同じ文字が浮かび上がる。


《マジでやりやがったーーーーっ!!!》


《史上二人目まじ!?!?》


《とんでもない映像なのでは!?》


「…………」


コメント欄が熱狂する一方で、【皇 レン】だけが不気味なほど静かだった。


「……は」


小さな漏れ出す声。


「ははっ……」


声に形が帯び始め。


「……っ、あはははははっ!!」


ついには腹を抱えて笑い始める。


「お前っ……!」


笑いながら立ち上がり、机を軽く叩く。


「そこまでやれんのかよ……!」


その頬は紅潮し瞳はご馳走を前にした猛獣のように輝いていた。


《レン様テンション壊れたwww》


《こんな笑ってるの初めて見た》


《王様ご機嫌すぎるw》


《配下置いてけぼりw》


《でも気持ちは分かりすぎる……!》


「——参加型」


不意に【皇 レン】が呟く。

コメント欄がざわつく。


《お、参加型!》


《待ってました!》


《でもこの流れでやれるのか?!》


《間違いない》


【皇 レン】はコメント欄を一瞥すると小さく笑った。


「————悪い、あれ無し」


《は????》


《え???》


《無し!?》


《王!?》


「今日は予定変更」


その目は真っ直ぐ『私』だけを見ていた。


「————お前とやる」


「……参加型は」


「後だ」


思考した時間なんてない。

ただ反射的に出たであろう即答だった。


「今はお前の方が面白い。

てか、お預けされるのなんてマジで無理」


先程まで肉食獣のような様相をしていた【皇 レン】が————


「来いよミラ。

今度はあたしと遊ぶ番だ……!」


————幼い少女(外見相応)に笑っていた。











◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇











————気付けば時計は配信開始から二時間近くを指していた。

コメント欄は最初から最後まで流れ続け勢いが落ちることはない。


《いやマジで神回だった》


《最後まで見入ってた》


《参加型消えたの笑う》


《レン様があそこまで楽しそうなの初めて見た》


《二人とも強すぎる》


《結局引き分けかよ!!》


《最後の最終ラウンド鳥肌だった》


《またコラボしてくれぇぇぇ!!》


【皇 レン】は大きく椅子へ身体を預ける。


「……はぁ〜〜〜……」


長く息を吐いた。

その表情には疲労が滲んでいる。

————けれど。

口元だけは最後まで笑っていた。


「いやぁ……最高だったぁ……」


『私』も自然と頷く。


「楽しかったですね」


「……お前が楽しそうに言うと何か腹立つな」


「そうですか?」


「そこは否定しろよ」


【皇 レン】が『私』の反応にジト目を向けてくる。


《草》


《最後までこの二人w》


《空気好き》


《また頼む》


【皇 レン】はコメント欄を眺める。

そして少しだけ申し訳なさそうに笑った。


「————悪いな。

今日は参加型無しだ」


《許す》


《むしろ見れて良かった》


《次回よろしく!》


《神回ありがとう!》


「埋め合わせはちゃんとやるからよ」


そう言って視線を『私』へ向ける。


「だから今日は————こいつ貸してくれ」


《wwwww》


《勝手に借りるなww》


《ミラちゃん所有物じゃないw》


『私』は首を傾げる。


「貸す……?」


「この後も遊ぶってことだよ」


『私』は【皇 レン】の言葉に頷き同意を示す。


「分かりました。

よろしくお願いします」


【皇 レン】は満足そうに笑う。


「お?言ったな?約束だからな?」


「はい」


【皇 レン】は改めてゲーミングチェアに座り直すと思い出したかのように言う。




「そういや神代が何か宿題出してたよな?」


「……そうでした」


危なく配信を閉めるところだったため『私』は改めて神代さんからの宿題を口にする。


「皇さんは————どうして『私』に興味を持ったんですか?」


「マジでそのまんま聞くのかよ……」


苦笑いを浮かべながら《皇 レン》は背伸びをしながら答えた。


「何となく興味持っただけ、以上」


「何となく……?」


「そうだぞ?

目新しい面白そうなものには興味を抱く。

そんなもん当たり前のことだろ?」


「そうなんですか……?」


「そうなんですぅ〜。

てかもう質問答えたしそろそ閉めるぞ」


【皇 レン】はそう言って準備を進める。

『私』の宿題の質問なんてノルマでとりあえず聞いたと言わんばかりの反応にむしろ笑いが漏れる。


《相も変わらずの王ですわ》


《ミラちゃんもこのノリに適応するのが早いw》


《埋め合わせ配信待ってます!》


コメント欄の流れを見ながら【皇 レン】はいつも通りの言葉を口にする。


「————次もあたしの勝ちな?」


『私』もそれに準じて口を開いた。


「皆さん————また空を見上げた時にお会いしましょう」




配信ソフトを終了すると画面は暗転し、部屋は静かになった。


「…………」


「…………」


しばしの沈黙。

————そして。


「いやぁ……」


【皇 レン】は笑う。


「マジで楽しかった……」


【皇 レン】の王たる笑みや猛獣を思わせるものではない。

幼い少女の色が出た気の抜けるような笑顔だった。


「ミラ」


「はい」


名前を呼ばれて振り返ればそれを狙ったかのようにまた新たなコントローラーが飛んでくる。


「ほら配信の後も遊ぶって言っただろ?

また別のゲームでしょうぜ」


「時間が結構遅くなってしまうのでは……?」


「あん?あたしの家にそのまんま泊まっとけば良いだろ?」


「……なるほど?」


「絶対に今日はあたしが満足いくまで付き合ってもらうからな♡」


「……今日は長くなりそうですね」


『私』は両親へ短く連絡を送る。

返信はすぐ返ってきた。


『楽しんできなさい』


その一文だけ。

画面を閉じればもう既に【皇 レン】は別のゲームを起動して待っていた。


「ミラ早く来いよ」


「すぐ行きます」


どうやら今日の夜は、まだまだ終わりそうになかった。




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