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完全模倣VTuberは自分が分からない  作者: 妃羅


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15/17

【発見】

「————み、ミラちゃんなん……??」


戸惑ったような声とは裏腹に【神楽 琴音】が『私』へ向ける視線に疑いの色はなかった。

言うなれば予想を超えた出来事を前に思考だけが追いついていない、そんな表情だった。


「ふふっ、【空音 ミラ】ですよ?」


『私』が微笑みながらそう答えると【神楽 琴音】は何度か瞬きを繰り返した後、恐る恐る一歩近付いてくる。


「……ホンマに?」


「はい」


「いや、でも……」


【神楽 琴音】は『私』の周りをぐるりと興味津々といった様子で歩き、顔を覗き込んだ。


「近くで見てもミラちゃんやし……」


一歩下がって目を細めながら。


「離れて見てもミラちゃんやね……」


一歩近付いて凝視しながら。


「…………」


【神楽 琴音】にじっと見つめられる。


「……?」


せっかくならばと『私』も【神楽 琴音】の瞳を見つめ返す。

そして【神楽 琴音】がふぅ、と一つ息を吐く。




「————うわぁぁぁっ!! ホンマにミラちゃんやん?!」


身体を仰け反らせて大袈裟なまでの反応を見せる【神楽 琴音】。


「……はい?」


「いやいやいや! 画面からそのまま出てきたみたいやん!」


「そんなことないと思いますよ??」


『私』はにこりと微笑みを浮かべて言う。

オーバーリアクションにも見えるがそれでも不思議と押しつけがましさは感じない。

配信で見た【神楽琴音】もそういう人だった。


「見た目もミラちゃんらしくてかわえぇなぁ〜!」


「……そんなことないと思いますよ??」


「またまた〜謙遜が上手やなぁ〜」


ケラケラと笑いながらそんなことを言う【神楽 琴音】に疑問が浮かぶ。

————『ミラちゃんらしくて可愛い』とはどういうことだろうか。

『俺』のどこに『ミラちゃんらしさ』というものがあったというのか。


【空音 ミラ】その存在の【真似】をしてはいる。

だがそれに対しての『らしさ』というものを『俺』に感じるとは思わなかった。


————いや。()()()()()()()()()


【空音 ミラ】という存在は『私』が【真似】しているものだけ。

ならば【空音ミラらしい】と感じるのは当然なのかもしれない。

『私』を通してのみ————【空音ミラ】を見ることができるのだから。






「————とりあえずは挨拶からやな!」


『私』が考え込んでいると、【神楽 琴音】は手をぱんっと叩いて満面の笑みを浮かべる。

そして勢いよく右手を差し出した。


「改めまして【神楽 琴音】や!

今日はよろしゅうな!」


『私』もその手を握り返す。


「カレイド・スフィア四期生の【空音 ミラ】です。

今日はよろしくお願いしますね」


握手を交わした瞬間、【神楽 琴音】はピタリと動きを止めて交わされた手を見つめる。


「……おぉ〜!」


そして何故か感嘆の声を漏らすと『私』の手を何度も握り直す。

それは何かを確認しているようだった。


「……?」


「ちゃんとミラちゃんや」


「はい?」


「いやな?さっきから喋ってはおってんけど触ったら消えたりするんちゃうかなって思ってな?」


「そんな幽霊かなにかじゃないんですから……」


「でもミラちゃんドッペルゲンガーみたいなもんやん!!!」


目を見開いて強調する【神楽 琴音】。

『私』のイメージはドッペルゲンガーで固定されているようだ。


「よしっ!冗談はこの辺りで終いにして……。

————約束通り遊びに行こか!」


「お茶でしたか?」


「せやせや!

時間も勿体ないしはよ行こや!」


そう言うや否や、【神楽 琴音】は自然と交わされた手を離すことなくそのまま引いて歩き出す。

引っ張られるという訳ではなく『私』の動きに合わせるように隣を陣取って。

————配信で見た通り人との距離が近い。

だが、その近さは決して馴れ馴れしさではなかった。

相手が自然と笑顔になれる距離、それを彼女は意識的か無意識的か感じ取っている。

これが【神楽 琴音】という人なのだろう。


「そういえばミラちゃん!」


「はい?」


「さっきウチのこと、一発で分かったやん?」


【神楽 琴音】が不思議そうに首を傾げる。


「ウチ、写真とか送ってへんよな?」


「はい。送られてないですよ?」


「じゃあ何で分かったん?

……あ!マネージャーさんからもろたとか?」


『私』は【神楽 琴音】の言葉を首を振って否定し口を開く。


「————【神楽】さんなら、きっとそう行動すると思ったからです」


「……へ……?」


「【神楽】さんなら、この時間に来ると思っていました」


「ほうほう……」


「そして到着したらまず周囲を見回して人を探す」


「ほう……」


「その通りに行動されていたので、【神楽】さんだと分かりました」


「……そ、そうなんや……??」


引かれていく手を握る力が若干強くなる。

それでも【神楽 琴音】は何も言わなかったが数歩歩いたところでぽつりと呟く。


「……怖っ」


「怖いですか?」


「そりゃ怖いやろ?!

いやぁ……ミラちゃんは敵に回したないわぁ……」


何を当たり前のことを言うんだと言葉にするまでもなく伝わる表情で【神楽 琴音】は言う。


「あ、でも怖い言うても嫌な意味ちゃうで!?

何て言うんやろ……観察力が化け物やん!」


「そうですか?」


「そうやって!

普通はそこまで分からへんねん!」


【神楽 琴音】は心底驚いたように笑う。

確かに彼女の言う怖いという言葉にマイナスなイメージは無いようだ。


「ウチやったら絶対分からへんもん!」


「そうですかね?」


「そうなんですぅ!

せやから皆ミラちゃんのこと気になるんやろ!」


「……?皆さん、ですか?」


「ん?そりゃそうやろ?

まぁせっかく遊ぶんやしそういう話は配信でしよや!」


そう言って握ったままの手を再び軽く引く。


「ほら行こ!」


「はい」


【神楽 琴音】は満面の笑みを浮かべ既に楽しそうな様子で、なるほど彼女は配信中とそれ以外も()()()()()()()()()


配信中も、配信の外でも。

少なくとも『俺』には、その違いはほとんど見えなかった。


————実際に会うからこそ分かることもある。

そう思いながら、『私』は彼女の隣を歩いた。











「ミラちゃんどっか行きたいところないん?」


「特にここというのは無いですね……」


「ほな、ウチが行きたいとこでもえぇ?」


「良いですよ?」


「よっしゃ!ほな満喫すんで!!」






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