第二十話
男は彼女を地面に下ろすと突然彼女を蹴り飛ばした。
そのまま彼女を蹴り続ける。
「……っち。よくもやってくれたな。誰が貴様をどん底から救ってやったのはどこの誰だと思ってやがる」
「神父様……です……ッ」
えっと……どういう状況?
「まったく! せっかく共和国とも融和出来てきたというのにまったく……。貴様の復讐のせいで台無しだ! 貴様の家族や友人がいくら死のうが神は気にしないんだよっ! それどころか今回の失態で神はお前を見捨てた!」
「そんな……」
……この法国の神父、敵では無いらしい。
恐らくこのままほっとけば彼女を殺すなり回収するなりしてくれるだろう。
私は共和国兵を殺した彼女を助ける義理は無い……
けどこんな小さな少女を蹴りまくるこの男を放っておいて良いのだろうか?
確かに彼女は今日この地で大量の共和国の民を殺した。
それを私ははいそうですかと許せるわけではもちろん無い。
それでも私は立場的に弱い彼女にやりたい放題していて、挙げ句の果てには死んだ彼女の両親を侮辱するような発言をする彼を私は個人的に許せない。
それに共和国はかつて法国の人を殺戮した。
この少女一人を救うことで私たちの罪が消えるとは思っていない。
それでも……
私は……この男に静かに銃口を向けた。
彼は彼女を蹴り飛ばし、踏みつけるので夢中で気づいていない。
私はトリガーを引いた。
「ガッッ……なんで共和国兵ごときに……」
「神に見捨てられたのは……あなたの方みたいね」
神殺し……最後の奇跡か。
割と下らないやつに使っちゃった。
でもまぁ、いっかな。
「私も……それで殺すの?」
「殺さない……というか殺せないのよ。 ハンドガンの弾意外はもう全部使っちゃったから」
私はそう言いながら彼女に投げ捨てられた共和国製のライフルを拾うとそのライフルからベルトを取り、カラドボルグに付け替える。
そして私はカラドボルグを背負うと彼女の元に戻り、彼女が先ほどまで蹴られていた部分の様子を見るために服を少しめくる。
「ちょっと……何をするんですか?」
「良いから……外傷は治るのに蹴られた時の内出血は治らないの?」
「私の奇跡は……外傷が無いと発動……しない…ッッ!」
「立てなさそうね……」
私は彼女を俗に言うお姫様抱っこをして基地に向かって歩き始める。
無線を開き、司令に報告をする。
「司令官、任務を完了しました。 これより帰投します」
「了解」
「あと、法国の少女を一人、保護しました。 ターゲットは抹殺しましたが……詳しくは帰ってから……」
「……そうか。 分かった」
間がある。 嘘だとバレてるねこれは。
後でなんとかしますか。
「どうして……私を。 私はあなたの国の人達を……それに私は神にすら見捨てられた……」
「あなたをほっておけなかったから。 あとあの男が許せなかったから。 それだけよ」
「そう……ですか」
その時、彼女は微笑んでいた。
「ってことがあったのよ……この時はまだ私のことを神って言ったりしない子だったのに」
「こんな私すら受け入れてくれるアイリス様は神に違いないとあの後気づいたのですよ」
「こうやってカルト宗教って生まれるのね……」
「ハハ……」
そんな私の呟きを聞いてエリが苦笑いをしていた。




