9話 Cランクダンジョン
9話 Cランクダンジョン
あるダンジョンの奥深く——
「笛……
どうして、こんな……」
「加羅。
ごめんね……。
こうするしかなかったの」
闘技場のような場所で、
氷河、影井は力なく地に伏しており、
倒れる伊安を抱きしめる笛がいた。
そんな笛たち4人を、
6体の侵略者が見下ろすように
立っている。
そして——
闘技場の観覧席では、
何百体もの侵略者がこちらを見守り、
中央の高台に見える特別感のある席には
この侵略者たちの王が鎮座していた。
「地球人か……。
奴隷としても役にたたぬ弱き生物。
侵略後は他星にでも売るのが正解だろうな」
王は冷たい視線で笛たちを見下ろした。
——————
時は少し前に遡る。
ダンジョンゲートが発生したと
第6支部に緊急連絡が入った。
ゲートサイズは2.2m。
3m未満であれば、
民間ブレイカーでも対応可能とされている。
3m以上になると、
防星省が危険度を考慮した上で、
民間ブレイカーへ依頼するかどうかを判断する。
今回は民間ブレイカーでも
問題なく対応できるサイズだったが、
依頼先が決まらなかったのか、
話が第6支部にまで回って来た。
「2.2mだ。
氷河小隊にお願いしたい。
侵入後、1時間経っても連絡がない場合は
わたしの部隊が救援に向かう」
剛海副隊長の指示のもと、
氷河小隊がダンジョン攻略に
向かうことになった。
メンバーは、
氷河、伊安、影井、笛の4名。
よくある出動風景だった。
ゲートサイズで侵略者の危険度がわかる。
2.2mサイズだからといって
気を抜くわけでもない。
ダンジョンにもイレギュラーがあるため、
緊急時に備えてバックアップ体制を
取れるところが防星省管轄の強みだった。
「剛海副隊長、
俺らだけで十分ですよ」
「だといいんだけどね。
油断だけは禁物だよ。
氷河」
「かしこまりました」
4人は第6支部の移動車に乗って、
ダンジョンゲート発生場所へと
向かった。
——————
「前衛は俺と影井、
中衛に虎落、後衛は伊安の陣形だ」
「了解」
「虎落はいつも通り
常に状況確認しつつ、
敵出現時には分析と
周囲の警戒を頼む!」
「うん」
「伊安は回復時以外は、全体のサポートだ」
「了解」
氷河は戦闘時における
各自の役割を明確に指示した。
そして——
「ゲートサイズ2.2m。
過去のゲートと照らし合わせると、
侵略者はミルチャ星人」
「ミルチャ星人か。
Cの下レベルの難易度だな」
「だね。
ミルチャ星人の平均インパクト値とプロテクト値
は1t未満。
能力持ちなら十分に対応できるレベルだよ」
「ようし!
それじゃいっちょかましに行くぜ!」
解体予定の廃墟ビルに、
突如現れた2.2mのダンジョンゲートへ
氷河小隊は侵入していった。
——————
ダンジョンランクは
S・A・B・C・D・Eで分けられる。
今回のダンジョン内は
もっともスタンダードな洞窟内部だった。
ダンジョンランクは間違いなくCランク。
Bランク以上になると、
ゲートの向こうは異星人の城や町といった
洞窟ではないダンジョンが多い。
いつものようにダンジョンに入り、
いつものように笛の分析能力で
ダンジョン内の状態を調べた。
「……」
「虎落。
敵の位置、数、正体……
わかる範囲でいいから情報をくれ」
「……」
「虎落?」
笛は青ざめていた。
確かに2.2mのゲートサイズは
Cランクのダンジョンだ。
侵略者はミルチャ星人。
ボスだってミルチャ星人のはずだ。
しかし——
「ミルチャ星人の反応がない。
わたしは彼らを何度も見たことがあるから、
分析精度は高いはずなのに……」
「ミルチャ星人の
ダンジョンじゃなかったのか?」
「いいえ。
間違いなく過去のデータと照らし合わせても
ダンジョンゲートのサイズ、形状、光色は
ミルチャ星人のものだった」
「……お前がそう言うなら間違いないわけだ」
伊安が氷河の前に立った。
「どうする?
引き返す?
これってイレギュラーなんじゃない?」
「……当初の予定とは違う侵略者の巣。
まぁ、イレギュラーだな」
「わたしは撤退を提案するわ」
「……」
笛は分析の能力で一帯を隈なく眺めている。
「このダンジョンが発生してから
1時間は過ぎていたよな?」
「うん」
「最短なら50分ほどで
侵略者が地球に来る可能性がある。
救援部隊に最低限の情報を伝えるためにも
正体の識別が必要だ」
「危険じゃない?」
「虎落には常に監視してもらう。
分析、感知、予測……
危険だとわかったらすぐ報告してくれ」
笛は小さく頷いた。
4人は少しの不安を抱きながら、
職責を重んじ、
引き返さずに
自ら地獄への道を進んでいった。




