10話 侵略者の侵略者
それは、
氷河が前に進むと判断をした
数秒後のことだった。
突然笛が声を上げた。
「前方から何か来る!」
「!?」
「インパクト値8t、プロテクト値6t……。
それが4、5、6体」
「インパクト値8t!?
剛海副隊長クラスが6体だと!」
「早いよ!」
「撤退だ!
退くぞっ!」
頭上に影が浮かんだ。
「!」
そいつは身体を大きく広げて、
4人を見下ろしていた。
「なんだコイツァ!」
影井は自分の影から分身体を作り出し、
攻撃態勢に入った。
——ブチッ!
「うあぁぁーっ!」
影の分身体は簡単に踏み潰され、
影井の右腕が引き千切られた。
気がつけば、
目の前にその6体が揃っている。
伊安は影井のもとに向かい、
回復の能力を発動させた。
「俺が足止めをする!
お前たちは外に出て副隊長に報告を!」
氷河は洞窟内一帯を凍結させて、
6体の足の動きを封じた。
「わたしは動けない!
影井の腕の再生と止血を優先させないと!」
「バカッ!
腕より命だ!
先にここから出るんだ!」
——バリンッ!
凍結したはずの地面と足の氷は簡単に
崩され、2体が氷河に飛びかかった。
——ズドンッ! ズドンッ!
2体が氷河を殴り付けた。
「あっ……あぁ」
氷河は呻きのような声を出したあと、
笛たちの方を向いて手を伸ばした。
——ドゴッ!
顔を殴られた氷河は、
壁に打ち付けられた後、
力無く地に伏せた。
「氷河っ!」
6体の目が笛と伊安に向いた。
伊安は全身を恐怖で震わせている。
それでも影井の回復を続けていた。
「笛……」
「!?」
「逃げて……」
伊安からの
無理だとわかっている上での
お願いだった。
6体が近づいてくる。
伊安が目を閉じた。
笛は対侵略者用小型拳銃を構えた。
その時——
『何もするな……
下手に動けば全滅だ』
「!」
ブラッドが笛の
体内から話しかけてきた。
『おそらくゲートはここの連中に封鎖された。
もう自由に出ることはできない』
「どうしてわかるの?」
『笑止。
俺は侵略者だぞ。
異星人など見つけては捉えて
研究するのが当然だ』
「わたしたちを解剖でもするってこと?」
『そうかもしれないし、
食おうとしているだけかもしれない。
しかしコーアン星人の連中なら
研究をするだろうな』
「コーアン星人?」
『なんだ。
地球人はコーアン星人を
知らないのか?
侵略した星を奴隷として置くか
他所の星に売る連中だ』
「……そんな宇宙人がいるの」
『当たり前だ。
地球のように侵略も考えずに
守る一辺倒の星の方が珍しい。
だからこそ常にターゲットになるのだ』
「……」
氷河と影井がコーアン星人に担がれた。
コーアン星人は黙って、
ダンジョンの奥へと戻っていく。
笛と伊安の後ろにも
コーアン星人が付いている。
ふたりは何も抵抗ができないまま、
侵略者に促されるように
ダンジョンの奥深くへと
進んで行くのだった。
——————
第6支部司令室——
剛海副隊長は時計を眺めていた。
「氷河小隊がダンジョンへ侵入して
どれくらい経つ?」
「到着後、侵入してから18分ほどです」
「15分毎の定期連絡は無しかい?」
「はい……
何かあったのでしょうか?」
「わからない。
とりあえず救援隊の出動準備に入る。
12分後の定期連絡がなければすぐに出動する」
支部では、
剛海が不安を募らせており、
彼女の小隊が出動準備を始め出した。
——————
ダンジョンの奥深くには
大きな闘技場が作られていた。
この地下ダンジョンには似つかわしくない、
しっかりと整備された闘技場だ。
コーアン星人が造った建物のように見える。
闘技場の観覧席では、
何百体ものコーアン星人が見守り、
中央の高台に見える特別感のある席には
彼らの王が鎮座していた。
「地球人か……。
奴隷としても役にたたぬ弱き生物。
侵略後は他星にでも売るのが正解だろうな」
その王が、
冷たい視線で笛たちを見下ろした。
分析能力のない伊安でも、
あのコーアン星人の王から放たれる
異質な圧力を感じ取り、
見上げることを諦めるほどだった。
闘技場の足元には、
無数のミルチャ星人の死骸が転がっている。
コーアン星人に闘技場に上げられ、
なぶり殺しにあったのだろう。
『地球侵略に向かう予定だった
ミルチャ星人をコーアン星人が侵略した。
そこに偶然、地球人がノコノコと入っていった
という流れか』
「そんな奇跡みたいな偶然ある?」
『宇宙人をコーヒーにして飲む
地球人もいるのだ。
どのようなことがあっても珍しくはない』
「……」
コーアン星人の王が口を開いた。
「氷使いと影使いは不要だ。
そこの回復使いは残せ、使い道はある。
あとはその青い髪の地球人だが……」
「?」
「能力はなんだ?
それ次第で始末する」
その場にいる、
すべての目が笛に向けられた。
伊安は絶望の眼差しで
笛を見つめている。
笛は分析の目で、
氷河と影井を見た。
意識を失っており、
治療は必要だが
——状態・生存。
彼らは生きている。
「ねぇ……。
さっきの話なんだけど」
「なに?
さっきの話って……」
「みんなを絶対に助けたいの……
だから……」
「笛……。
それはわたしもよ。
でも……
もうどうしようも——」
——ズンッ!
次の瞬間、
笛が伊安の腹部に拳を当てた。
「笛……!?
どうして……こんな……?」
「加羅。
ごめんね……。
こうするしかなかったの」
闘技場では
氷河、影井は力なく地に伏しており、
意識を失った伊安を笛が抱きしめた。
そんな4人を、
闘技場にいるすべてのコーアン星人が
高笑いを見せながら眺めている。
笛はゆっくりと伊安を闘技場に寝かせると
立ち上がった。
そして、
コーアン星人の王を見上げて呟いた。
「みんなを絶対に助けたい……。
だから……
あなたの力を貸して——ブラッド」
ご挨拶が遅れました。
鬼喜怪快でございます。
第10話までお読みいただき、誠にありがとうございます!
笛とブラッドの物語は、ここからさらに面白くなっていきます。
引き続きお楽しみいただけましたら幸いです。
少しでも面白いと思っていただけましたら、
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今後ともよろしくお願いいたします!




