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地球まみれの宇宙人 ~体内ダンジョンに閉じ込められた最強侵略者が出ていってくれない~  作者: 鬼喜怪快


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11/29

11話 互いの願い


「だから……

 あなたの力を貸して——ブラッド」


『……よもや、

 お前の方から頼んでこようとはな』


「あなたなら……

 なんとかできるんでしょう?

 インパクト値、プロテクト値が50t以上も

 あった宇宙人なんだから」


『勘違いするな地球人。

 あれは前の身体だから出せた力だ。

 このか細い身体では、

 内部から俺がどれほど補強しても

 前の5分の1程度の出力が限界だ』


「5分の1でもインパクト値が10t……。

 この6体以上の力よ……」


『あの上の奴の力はどうだ?』



 笛は分析の能力を発動させて、

 コーアン星人の王を見上げた。



「インパクト値22t、プロテクト値17t……」


『相当な強さだ。

 さすがコーアン星の王だけはある』


「感心なんかしてないで質問に答えて!

 力を貸してくれるの?」


『俺は地球人に負け、

 お前の支配下にある。

 すべての権利はお前にあるのだ』


「……そうよ。

 わたしが家主なんだから」


『そうだ。

 つまり、お前は俺に命令すればいい』


「……」


『頼むではなく、命令すればいいだけだ……』


「……わたしは。

 侵略とか、奴隷とか……

 そういうのが大嫌い」


『……頭がお花畑女子とか言われていたが、

 まさにその通りの答えが返ってきたな』


「だからお礼をする……」


『?』


「ここから無事帰れたら、

 必ずお礼をする」


『ふむ』


「できる範囲で……。

 あなたの言うことを聞くわ……」


『……言うことを聞く

 ……だと?』


「だからあなたの——」


『どのような願いも聞くのだな?』



 ブラッドは突然、

 食い気味に笛へ質問を投げた。


 

「えっ!?

 そっ、それはわたしの力で

 できる範囲のことになるけど……」


『3種のチーズまみれハンバーグセットだ……』


「?」



 次の瞬間、 

 1体のコーアン星人が飛びかかってきた。



 ——バチーンッ!



 瞬きの一瞬で、

 笛の身体の主導権がブラッドに変わった。

 

 平手だけで、

 コーアン星人の首を刎ね落としたようだ。


 首元から血を吹き出し、

 コーアン星人の身体は

 痙攣を起こしながら倒れ込んだ。


 高笑いしていたコーアン星人の観衆たちが、

 一斉に息を呑んだ。 

 

 今まで恐怖に飲み込まれたような

 目つきだった笛が、

 殺戮を興じる悪魔のような目つきに変わり、

 一帯を睨みつけている。



「ライスは……天丼に変更だ」


『ブッ、ブラッド?

 あなたは何を言っているの?』


「マルゲリーターピザと

 カルボナーラパスタには卵をトッピング」


『?』


「ドリンクバーもだ」


『……それって、

 ファミレスのメニュー!?』


「そうだ。

 あの日、禁じられて以来ファミレスとやらに

 行けていない。

 俺の唯一の楽しみだった」


『そんなので……いいの?』


「どうなんだ?

 この頼み、聞けるのか?」


『……もちろんよ。

 お安いご用よ!』


「よし。

 それでは契約成立だな」



 笛の全身を、

 真紅のオーラが覆った。


 仲間をやられた5体のコーアン星人が

 一斉に笛へ飛びかかる。



 ——ズドドドドドッ!



 大きな衝撃音とともに、

 笛の倍ほどの身長がある

 5体のコーアン星人たちの身体が

 次々に吹き飛んでいった。



「ふむ。

 筋トレの成果か?

 以前より力が出せる身体になっているぞ」


『あなたがいろいろうるさいから、

 筋トレは毎日してるのよ』


「いい判断だ。

 お前が強くなれば、

 それだけ俺も力を出せるのだからな」



 6体の兵隊が瞬殺されたことで、

 闘技場内の雰囲気が

 一気に不穏へと変わった。


 あれほど騒いでいた観衆が、

 一言も声を発しない。



 その時、

 コーアン星人の王が、

 玉座から立ち上がった。


 そして、

 そのまま階段を降りて、

 闘技場まで向かってくる。


 その王の姿を見た観衆たちは、

 先ほどまでの静けさが嘘で

 あったかのように再び歓声を上げ始めた。



「お前は自分の分析はできないのか?」


『できないわ。

 自分だけは直接みても、

 鏡を通して見ても分析ができないの』


「そうか。

 なら今の自分の強さがわからないということか」


『うん』

 

「インパクト値22t、プロテクト値17t……。

 それが奴の力だったな」


『えぇ……』



 観衆たちの声援が一層大きくなる。



「ギル様!」


「ギル王!

 バンザイッ!」



 コーアン星人の王・ギルは

 全身から異質な威圧感を放ちつつ

 観衆に向かって手を挙げた。


 余裕の仕草を見せつけている。


 近くで見るギルは、

 明らかに兵隊どもより一回り大きな

 体つきをしていた。


  

 観衆が静かになったところで、

 ギルは口を開いた。


 

「我が兵を瞬殺とは驚いたぞ地球人。

 どうだ、余に仕えてはみないか?」



 ギルが不敵な笑みを浮かべながら、

 ブラッドを見つめた。



 ブラッドは表情を1つも変えずに答えた。



「貴様などに仕える人生なら、

 自決を選ぶ方がましだ」



 それを聞いたギルは

 一瞬にして真顔へと戻り——



「そうか、

 なら死ぬがいい」



 ギルが飛び込んで来た。


 それをブラッドが迎え撃つ。



 ——ドガンッ!



 ふたりのぶつかり合った衝撃が、

 闘技場と観覧席一帯を揺るがした。

 


 ——バゴオォンッ!



 殴り合った衝撃で吹き飛ばされ、

 観客席に全身を叩きつけられる。

 

 その様子を

 闘技場から眺める——


 ギルがいた。


 そして——


 口から血を流しながら、

 ゆっくりと立ちあがろうとする

 ブラッドの姿がそこにあった。

 

 

 

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