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地球まみれの宇宙人 ~体内ダンジョンに閉じ込められた最強侵略者が出ていってくれない~  作者: 鬼喜怪快


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12/28

12話 能力発動


 

 コーアン星人の王・ギルに

 吹き飛ばされた笛。


 その様子に、

 観衆たちの声援は最高潮に達していた。


 観覧席に叩きつけられたブラッドは、

 ゆっくりと立ち上がった。


 口元から血が流れている。


 

「ペッ!」



 口に溜まった血を

 唾と一緒に吐き捨てた。



『ちょっ……ちょっと

 やられてるじゃない!』


「ふむ。

 思ったより力の差があったか」


『ふむ。

 じゃないのよ!

 絶対に勝ってもらわないと困るのよ!』


「さて、どうしたものか……」



 その時、

 笛の周りから罵声が聞こえた。



「死ね地球人!」


「コーアン星の精鋭隊に

 勝ったからといっていい気になるな!」


「ギル様の前でひざまずけゴミが!」



 ——ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ!



 ブラッドはいとも簡単に

 周辺にいた観衆たちの首を刎ねた。



「ヒイイッ!」



 コーアン星人たちは恐れ慄き、

 ブラッドから距離をとった。


 

『ブラッド!

 彼らはただの——』


「お前たち……。

 この場にいる以上、

 俺に殺される対象に入っている

 ということを忘れるな」



 そう言うと、

 ブラッドは闘技場までひと跳躍で戻ってきた。


 その姿を見て、

 ギルはひとつの提案を口にした。



「気に入ったぞ、地球人の女。

 異種交配の器として、

 我が子をお前の体内に宿してやろう。

 どうだ、名誉なことであろう」



 ギルは醜い笑顔を見せながら、

 ブラッドを見下ろしている。


  

『……あいつ何言ってるの?』


「お前を妊娠させると言っている」


『きっ、気持ち悪い!

 絶対に嫌だからそんなの!』


「同感だ……

 それは俺も耐えられそうにない」


『なんとかできないの!?』


「ふむ。

 俺の見立てでいくと、奴との力の差は大きい。

 この差を埋めるのは難しいだろう」


『……』


「現時点では勝てる可能性が低い。

 すなわちピンチだ」


『……あなた、

 もっともらしいこと言っているようで、

 ただピンチって言ってるだけじゃない』


「直線的な戦い方では勝てない」


『……何かいい手はないの?』


「お前の分析の目を使いながら戦えば、

 勝利への確率は上がるだろう」


『……わたしの目?

 こんなの戦闘になんの役にも立たないから』


「なにを言っている。

 分析、感知、予測。

 それが一度にできる類まれな能力だ。

 お前の奪い合いになりかねん能力だ」


『えっ!?

 そうなの?

 やめてよ、急に褒められたら

 照れるじゃない……』



 ブラッドは分析能力を発動させて、

 まっすぐにギルを見た。


 未来予測——

 ギルが飛び込んでくるタイミングと

 攻撃の軌道が目に浮かぶ。



「来る!」



 目に浮かぶ通りの

 タイミングと軌道で攻撃が迫る。


 ブラッドは身体を、

 その軌道から躱すように前もって動かした。


 ギルの攻撃をすべて躱してみせた。

 面白いほど当たらない。


 そして——


 ガスッ! ガスッ!



「ぬうっ!」



 笛の目はカウンター攻撃が入る

 位置まで教えてくれる。


 ブラッドの拳がギルの腹部に決まった。


 ブラッドは一度距離を取り、

 再び分析を始める。



「ほう……。

 力勝負では分が悪いとわかり

 カウンター狙いか……

 頭はいいようだ」


「……」


「ならこれはどうかな?」



 ギルの手のひらに、

 光の球体が浮かんだ。


 

 未来予測——

 球体はブラッドの胸の位置に

 向けて放たれる。

 

 分析——

 能力・性質——闘気の形状変化。

 インパクト値31t。


「直撃は危険だ。

 躱して接近戦に持ち込む」


「くらえぃ!」



 光の球体が放たれた。

 

 それを躱してギルの懐に——



「!」

「速い!?」



 ブラッドの左腹部に直撃した。



「がはっ!」



 ブラッドの動きが一瞬止まった。

 


「ふははははっ!

 死ぬがいい!」



 ギルは光の球体を何度も両手に出し、

 笛に放ち続けた。



「ほらほらほらほらほらほら!」


「ぐあぁぁぁー!」



 すべての攻撃をくらい、

 立ち尽くすブラッド。


 そこに——

 光の球体を槍のような形に変えて、

 ギルが襲いかかってきた。


 攻撃の軌道は

 頭を狙っている——


 ——ズドッ!

 

 紙一重で回避。

 

 しかし、その体勢からギルの蹴りが

 飛んでくる。


 分析予測できても、

 脳からの指示と

 身体への伝達が間に合わない。



「ぐはっ!」



 蹴りがブラッドへ直撃し、

 闘技場の上を笛の身体が何度も跳ねた。 


 観衆の熱気は最高潮に達している。


 ギルは変なポージングを見せて

 観衆を煽り続けた。



「……思うようにはいかないものだ」



 ブラッドが身体を小刻みに震わせながら

 起き上がる。


 ダメージはかなりのものだ。



『ねぇ、ブラッド。

 大丈夫なの!?』


「ふむ。

 なんの心配をしている?」


『あなたの心配してるのよ!

 あなた大ピンチじゃない!』


「笑止」


『?』


「心配ならお前の身体を心配するんだな」


『えっ?』


「今は五感共有を切っているから

 わからんだろうが、

 身体へのダメージは相当なものだ。

 五感を共有した途端に

 一気に痛みがお前に襲うぞ」


『……いやいや!

 その前に殺されるかもしれない

 って状況でしょ!』

 

「まぁ……

 少々、コーアン星人を下に見過ぎていたようだ」


『何をこのピンチに冷静に言ってるのよ!』



 笛は立ち上がると、

 真っ直ぐにギルに向かって歩き出した。



『ちょっと!

 無策で向かっていくのはやめて!

 絶対にやられるわ!』



 ギルは腕を組みながら

 ブラッド《笛》を見ている。



「打たれ強いな地球人。

 お前……もしかしたら地球人最強の種か?」



 ブラッドは傷だらけの姿で、

 ギルの前に立ちはだかった。



『ブラッド!

 あなた開き直ってるんじゃないでしょうね!』


「お前の目の能力ほどではないが……

 俺にも能力がある」


『!?』


「俺は10秒間……

 全能力を10倍に引き上げることができる」


『全能力を……

 10倍……って?』



 ブラッドは左足を前に出し、

 右足を後ろに置いて、

 腰を少し落とすような構えをとった。


 そしてブラッドは、

 ギルを睨みつけるように言った。


 

「さぁ。

 お前は10秒後の世界で、

 生きていられるかな?」


 

 その言葉を聞き終えた後――

 

 ギルには空間が歪んで見えた。


 傷だらけの地球人を目の前に、

 ただ、恐怖が身体を貫いた。



 




 

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