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地球まみれの宇宙人 ~体内ダンジョンに閉じ込められた最強侵略者が出ていってくれない~  作者: 鬼喜怪快


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24話 矛と盾



「みんな今のうちに逃げて!

 絶対にみんなに近づけないから!」


「流花!」


「早くっ!」



 笛たちは動けなかった。


 仲間を1人、

 こんな場所になんて置いて行けるわけがない。


 しかし——


 

「これは——命令よ!

 緊急事態の時はわたしが隊の指令を

 任されてるの、だから……お願い!

 命令を聞いて!」



 流花の声は震えていた。


 笛も伊安も、

 流花のことをよく知っている。


 元来、

 彼女はリーダータイプの人物ではない。


 そして戦闘現場に出るようなタイプでもない。


 穏やかで優しく、

 戦いの世界とは無縁に見える女の子。


 そんな彼女は、

 誰よりも平和を求めた。

 

 侵略者からみんなを守りたい、

 それが彼女が防星官になった理由だった。


 そんな彼女が得た能力は

 偶然か必然だったのか、

 すべての攻撃から耐える力だった。



「必ず援軍を連れてくる!」



 勝来が剛海を担いで、

 ゲートの入り口に向かって

 走って行った。


 そして伊安も氷河を担いで、

 勝来の後に続いた。



「流花っ!」


「笛ちゃんも行って!」 

 

「でも!」


「わたしは最強の盾、絶対に壊れないから」



 笛は断腸の思いで踵を返した。

 


 少し向こうでは勝来と伊安は笛を待っている。



「虎落!

 急げ!

 陀折の思いを無駄にするな。

 せめて、このふたりを安全なところまで

 避難をさせてから陀折救出を考えよう!」



 笛には今にも泣き崩れそうだった。


 彼女は言った。


 

「わたしは……防星官!

 守る者は……目の前の命!」



 と——。


 それがどうだろう。

 仲間を置き去りに逃げる自分がいる。



「早くしろ虎落!」


「……」



 撤退するはずの笛の足が止まる。



「虎落っ!」


「ごめんなさい……勝来さん」


「!?」


「わたし……流花を……

 陀折を置いていけない」



 笛の声は震えていた。



「そんなことは俺もだ!

 しかし、今はこのふたりを安全なところまで

 運ぶことが先決だ!

 それくらいわかるだろ!」


「勝来さんと伊安は、

 ふたりを運んでる……。

 わたしは……何もしていない」


「お前は分析官だ!

 態勢を整えた後、

 どう立ち回るかを考えてくれればいい!」


「……」



 勝来と笛を遮るように、

 伊安が笛の前に立った。



「?」


「笛?

 あなたなら……流花を助けられるの?」


「!」



 笛はその質問に

 一瞬困惑した。


 しかし、すぐに頷いてみせた。



「何を言っている伊安!

 非戦闘員の虎落が戻ったところで犬死にだ!」



 伊安は勝来には目もくれず、

 質問を続けた。



「あの日みたく……

 わたしは英雄を信じていいのかな?」



 笛は、

 黙って深く頷いた。



「伊安! 虎落!

 お前たちは何を言っている!

 今は避難を優先し——」


「流花を助けて……」

 


 伊安は涙を流しながら笛に懇願した。



「お願いだから……。

 もし本当に可能なら……

 流花を助けてあげてよぉ」



 その言葉を聞いた笛は——


 伊安に親指を立てて微笑んだ。


 笛は再び踵を返して、

 流花のいる方へ身体を向ける。



「笛ぇ……」


「伊安……」


「?」


「もし外部と通信が繋がったらさ。

 雷鳥副隊長に伝言をお願いしたいの」


「……えっ?」


「拘置監視室にいる2体ベーダー星人に、

 ブラッドが呼んでいると伝えて欲しい」


「笛……。

 あなた何を言っているの?」


「お願いね」


「それを……。

 それを言えばどうなるの?」


「……わからない」


「!」


「でも……。

 この状況をすべてひっくり返してやるって

 言ってる」


「誰が……言ってるの?」



 笛はその質問には答えず、

 走り出した。


 しかし一瞬だけ、

 笛は伊安の方へ顔を向けて

 彼女にしか聞こえないような声で、

 囁くように言った——



「ベーダー星人の王が言っているのだ、

 地球人」


「!?」



 笛の全身から真紅のオーラが吹き出した。


 普段の笛からは想像もできない動きで

 流花のもとへと向かって行く。



「虎落っ!」



 勝来の声が虚しく響いた。


 伊安は何も言えず笛を見送った。

 

 伊安だけは、

 この絶望の中

 わずかな期待を持たずにはいられなかった。

 


 ——————

 


「この状況下で仲間を助けろとはな。

 普通ならあの要塞を吹き飛ばしてくれだろう?

 あいつも欲のない人間なのだな」


 

 笛が立ち去る瞬間、

 どうやらブラッドは一瞬早く

 身体の優先権を奪ってしまったらしい。

 


『最優先は流花の救出だから』


「ふむ。

 冷静に考えるべきだ。

 あの女がくたばるわけがあるまい……」


『何よあなた!

 流花のこと、知ったような口を

 聞かないでくれる!』


「笑止。

 奴のことはよく知っている」


「はぁ!?

 なんであなたが流花を知ってるのよ!?」



 笛は理解ができず、

 思わず質問を返した。


 しかし返ってきたブラッドの答えは、

 さらに笛が理解できないものとなった。



「なんでだと……?

 つまらん質問だ。

 先の地球人とベーダー星人の戦闘時、

 あの女はこの俺の討伐に当たっていた」


「!?」


「どれほど攻撃をしても奴は倒れなかった。

 何より奴は——」


「……何より、なんなの?」



 一拍置いて、

 ブラッドが答えた。


 

「奴は俺のテンカウントに耐え抜いて、

 初めて10秒後の世界を生きていた人間なのだ……」



 

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