21話 突入
それは音もなく、
早朝の空に浮かんでいた。
見かけた人は、最初に何を思ったのだろう?
朝靄に見える月?
朝日?
――とても大きなダンジョンゲート?
過去、
日本で確認されていたダンジョンゲートの
最大直径は約8m。
言わずもがな、
先日攻略したベーダー星人のダンジョンだ。
サイズが大きいほど
強力な侵略者が潜む——
それはひとつのバロメーターとして
考えられてはいるが、
必ずしもそうではない。
しかしながら、
今回の10m以上のゲートは、
世界でも例が少なかった。
誰もがそれをダンジョンゲートだと
認識するまで……いや、
認めるまでに大きな間ができたほどだ。
早朝散歩中の老人、
配送ドライバー、
彼らが最初の目撃者となった。
呆然とそれを見上げていた人たちは、
自分の身体が宙に浮いていることに
気がついた。
そのまま、
ダンジョンゲートの光の輪の中へ、
吸い込まれていく。
次々と——
なんの抵抗もできず——
早朝だったこともある。
それ以上に、
目撃者がダンジョンへ吸い込まれていくため、
第6支部へ一報が入ったのは、
ダンジョンゲートの発生から
40分も経ってのことだった。
――――――
第6支部・剛海副隊長率いる
当直メンバー8名が到着したのは
緊急連絡が入ってから20分後のことだった。
彼らが到着するまでに、
民間のブレイカーたちが自主的に
出動したようだが、
吸い込まれたきり音沙汰は無かった。
1週間以内と発表した翌日の出来事――
防星官の隊員たちに緊張が走る。
情報官が、
休暇中の第6支部の全員に緊急招集をかけた。
過去にも稀に見ないダンジョンゲート。
情報官は念のため
第5支部・第7支部にも緊急要請を送った。
現場に到着しながらも、
吸い込まれていく仲間を目の当たりにし、
動けなかったブレイカーたちも
防星官たちと合流した。
「あのゲートに近づくのは危険だ。
見てただけでも民間人20名、
ブレイカー4名が吸い込まれていった!」
「あんなゲート聞いたことないよ!
近づくものを掃除機のように
飲み込んでいくんだ!
あんなのどう処理するんだよ!」
ブレイカーたちの話ぶりから
いつものダンジョンゲートでは
ないことがわかる。
第6支部の司令室に
通信が入る――
「わたしだ! 聞こえるか?」
「剛海副隊長!
情報通信部の相真です!」
「相真か!
防星省・全支部に緊急事態だと伝えろ!
ゲートが発生してから約1時間。
通常なら、早ければあと1時間ほどで
ゲートから侵略者たちが姿を見せる!」
「かしこまりました!」
「敵の正体がわからない上、
ゲートサイズならベーダー星人より上だ。
ベーダー星人より危険かは別として、
危険度S級と見ていいだろう」
第6支部の救援メンバーが集まるには、
早くとも、今から30分はかかる。
他支部の当直メンバーが駆けつけるにも、
どんなに早くても1時間は必要だった。
「飛田!
伏地!
ふたりはここで待機だ!
残りの5名はわたしとともにダンジョンに入る!
絶対に単独行動は取るな!」
剛海の指示が、
現場の隊員へ伝えられた。
「攻略が目的ではない!
吸い込まれた民間人と
ブレイカーの救助を最優先とする!
戦闘になれば3人1組の体制を絶対としろ!」
「はっ!」
笛と他の隊員たちが返事をする。
そこにブラッドが口を開いた。
『これほど巨大なゲートだ。
伊達や酔狂で作ったわけではなさそうだ』
「……あなたなら敵が何か
わかってるんじゃないの?」
『宇宙に何万種類の生物がいると思っているのだ。
ゲートを見たくらいで誰だかわかれば苦労はない』
「何よ……役に立たないわね」
『ふん。
お前の目で見ればいいだろう』
「わたしの目だって過去データにないものを
見てもわからないわよ」
『ふむ。
その目も万能では無かったと言うわけか』
「すみませんね。万能じゃなくて!」
『侵略者の存在はわからないが、
これだけは言える。
このまま突入すれば死体が増えるだけだ』
ブラッドのその言葉に、
笛の緊張がさらに増した。
――そして
「……ゲートを突破されてはいけない!
とにかく30分踏ん張れ!
6支部のメンバーが来てくれる!
それまで死ぬことは、わたしが許さない!
以上だ!」
武装した隊員たちが動き出した。
――――――
緊急連絡が入った副隊長・雷鳥は、
すでに戦闘用プロテクターを纏い、
専用武器である槍を携えて
現場へと向かっていた。
「俺の専用ボディスーツと武器……
ひと月に2回も纏うことになるとは
思わなかった」
高速移動する雷鳥に、
一抹の不安が襲う。
「情けないことを言うが、
ゲートサイズの割に大したことのない
侵略者であって欲しいよ……」
ぽつりと呟くと、
雷鳥は全身に雷を迸らせ、
さらに加速させた。
——————
剛海は隊員2名を
通信と緊急時に備えて待機させた。
「わたしに何かあった場合は氷河小隊長に
全権を委ねる。
氷河小隊長に何かあった場合は……
陀折っ!」
「——ハイッ!」
「君に残りのメンバーの命、
すべて託すつもりだ」
「ふっ副隊長……
縁起でもないこと言わないでください。
わたしなんて……全然……」
「君は我々の最強の盾だ。
君がいれば全滅はあり得ない」
剛海率いる6名が
未知のダンジョンへと向かう——
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